赤米、魚のカレー、マッルン。
南の味が帰ってきた。
スリランカ料理・道案内 第4回 スリランカ料理・道案内 
No.4 南の食事 2005-12-23



 ●100メーター規制というものがある。海岸から100メーター以内には建物を建ててはいけないという。あのツナミの惨事を繰り返さないために、スリランカ政府は100メーター規制という法律を作って、100メーター以内に家を再建する場合、住宅補助は支給しないとした。
 国民を災害から守るためにいい法律を作ってくれたものだ。そう思う人がいる。一方で、そんなことをされたら暮らしが成り立たなくなると憤る人々がいる。舟を海原に繰り出して生計を立てる猟師には手ひどい仕打ちだ。ホテル経営者にも暗雲がかげる。もとより、開眼から100メーター以内にある村は跡形なくなくなる。それは人々の生活が長年掛かって築いたコミュニティーがなくなるということでもある。

 政府も寺院も、海岸から100メーター離れたところに仮の住宅を作った。本式の住宅も着工されている。

 
 世界銀行のウェブサイトに、そうしたツナミ復興の話が今月中旬に掲載された。
 スリランカ南部テルワッタのありふれた食堂の話だ。ただ、ありふれた食堂をありふれた場所に再建できない。100メーター規制のためだ。
 テルワッタのありふれた食堂経営者はは、もとの場所にありふれたまま、再建しようとした。
 政府との交渉で、食堂経営より他に生きるすべがないということを強調した。これで営業権は獲得できた。だが、ツナミにさらわれた店の設備はどう調達する?

 ●店の女性経営者は言う。世銀からの資金で調理用の壷や、食堂のテーブルと椅子が調達できた、と。
 世銀はスリランカ政府を介在させて4回にわたって5千ルピーをツナミ被害世帯に給付した。この食堂経営者はその資金を使って店の資材を調達した。


 昔馴染みと店の常連が食材や水の手配もしてくれたという。世銀の配った現金が食堂を再建し、食のコミュニティーも復興させた。

 赤米のご飯。赤米は生米(カクル)を使う。これが南部の郷土色だ。赤米は日本の米文化のルーツだ。バック・トゥー・オリジン。最近ではコロンボ近郊でもカクル米を食べるようになった。しかし、カクル米は南部に限る。マッルン、アンブルティヤル、パパダム。料理屋がメニューにするのは南式のスリランカ郷土料理の典型だ。食の文化の復興は何よりうれしい。


マータラの食堂で。テーブルは店の奥に二つだけ。赤米のご飯はカクル※を炊いたもの。写真は本文の内容とは別。

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