これはシンハラ料理?
それとも、
タミル料理?
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No.1 サンバルとゆず胡椒
2005-11-24


 料理は開放する。すべてを開放する。
 民族は民族に特有の料理を食べる、とは言える。だが、この民族はこの料理しか食べない、とは言えない。

 ヒトはパンダではない。生来の肉食獣でもないし、純粋ベジでもない。
 ヒトは偏食しない。偏食の遺伝子なんて持っていない。食欲はユニではない。グローバルだ。食える物はなんでも食っている。
 
 これはシンハラ料理? それとも、タミル料理?---の答え。タミル料理です。でも、シンハラ人が食べます、と付け加えておこう。

 この食事はコロンボ近郊の閑静な住宅街でご馳走になった。住宅街とは言っても椰子の林に囲まれたところ。大正時代の武蔵野、かな。この頃土地の値上がりが激しくなった、と主人は言う。
シンハ ラの家庭でもタミル料理は食べる。この家では週に2回はタミル料理を作る。
 えっ、シンハラ人がタミル料理を食べるの? というリアクションはいただけない。汝、日本 人を見よ! 御フランス料理もペルー料理も、プルコギもトンポーローも、てんぷら蕎麦も冷麺も吉野 家の牛丼も。ナンだって食べるじゃないか。

 スリランカ人は食道楽国民だ。
 シンハラ人は旨いもんに目がない。
 この家のサンバルは特に旨い。

 ―サンバルは南インドに限ると思っていたけど、スリランカのも好いねェ。日本でインド料理店のサンバルを食ったことがあるけど、なんだい、あれ。ピュアーじゃないね。すっきりとしないしね。

 家の主人が言う。
―昼飯を外でとる時は、まず、トーセーだね。トーセーにもいろいろあってね、店を選ばないとと旨いのに当たらないよ。

 コロンボ なら旨い店がある。
 ここでサンバルをご馳走になってからどこでサンバルを食べても満足できなくなった。
 なんでだろう? と思った。思い出せないけど、この薄緑のタミルのサンバルはどこかで食べた懐かしい味。味の記憶を舌が辿ると、 --- そうか。ゆず胡椒だ! あの味、あの香り。あの辛味。
 ガンミリス(胡椒)とデヒ(ゆず)はタミルのサンバルの基本だ。まったく、それはゆず胡椒なのだ。

 家の主人は怪訝そうに、
―そうかね、これが日本で作られる香辛料と同じだって? なんて名前だ? ゆず胡椒? デヒ ・ガンミリスかい。そいつは、まんまだね。

コロンボから東へ20キロキリバトジョレ郊外のシンハラの家で。


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