地球の友(FoE) 2011年9月14日 プレスリリース
新たな”超耐性菌”の脅威:ナノ銀

情報源:Friends of the Earth International
Press Release September14, 2011
New 'super bug' threat: Nano-silver
http://foe.org:80/new-super-bug-threat-nano-silver

掲載日:2011年9月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE/FoE_110914_Nano-silver.html


新たな’超耐性菌’の脅威:専門家は消費者製品中のナノ銀は耐性菌をもたらすかもしれない

【ワシントンDC】 本日、 FoE(地球の友)インターナショナルにより発表された報告書によれば、公衆健康と環境の専門家らは、消費者製品中での抗菌剤としてのナノ銀の使用が耐性をもた微生物の拡大を助長しているかもしれないと警告している。

 その報告書、”ナノ銀:無策が公衆の健康をリスクにさらす”は、下記URLで読むことができる。
  紹介:http://www.foe.org/nano-silver-and-bacterial-resistance
  報告書:http://www.foe.org/sites/default/files/NanoSilverUS.pdf

 ”ナノ銀は、強力な抗菌剤であり、会社がそれを、衣類、練り歯磨き、おもちゃのような消費者製品入れることが増えている。残念ながら、そのような使用の増大は耐性バクテリアの拡大をもたらし、そのことが公衆の健康を脅かしている”と、この報告書の著者の一人であり、地球の友USAの健康・環境キャンペイナーであるイアン・イルミナトは述べた。”もし消費者製品に抗菌剤を入れたくないなら、我々は、それらに抗菌ナノ銀を入れるのを我慢すべきである”。

 インタビューを受けた専門家は報告書の中で、そのように多くの消費者製品中でナノ銀を使用するとバクテリ耐性が増大し、超耐性菌(super bugs)の増殖を早めて、抗菌ナノ銀を最も必要とする病院での使用の妨げとなると述べている。バクテリア耐性はすでに世界中の病院で脅威となっている。毎年10万人近くのアメリカ人が治療できない感染症のために死んでおり、これは年間の交通事故死者数の2倍以上である。

 銀は、その抗菌特性のために昔から使用されてきたが、近年、ナノスケール(極めて小さい)銀粒子は特に強力な抗菌剤であることを研究が示している。インタビューを受けた専門家らは、ナノ銀の使用は、病院で使用される医療手当のようにある状況下では価値があるかもしれないが、消費者製品中での広範な使用は、耐性バクテリアの拡散をもたらして、価値よりも大きな害を引き起こすと述べている。

 ナノ銀の商業的利用は比較的新しい事象であるが、すでに300以上のナノ銀を含む製品が入手可能であり、それらには、水浄化装置、ペットシャンプー、バスタオル、靴、ソックス、化粧品、食品容器などがある。これらナノ銀を含む製品は、そのことについての表示がない。

 報告書は、バクテリアのナノ銀耐性についての初期の証拠がすでに出現していること、また耐性だけが脅威なのではなく、ナノ銀がそれ自身の毒性による健康リスクを及ぼすかもしれないことに言及している。

 この報告書の作成に当り、地球の友USAのイアン・イルミナトと地球の友オーストラリアのグレゴリー・クロセッチ博士は、公衆健康専門家及び7つの大学と会見した。


訳注:ナノ銀の有害性を報告する研究
  • 銀ナノ粒子は精子幹細胞の成長を止める(2010年9月)
    EHN 2010年9月1日 論文解説によれば、マウスの精子幹細胞の株を用いて、異なるサイズ、異なる濃度、及び異なる銀ナノ粒子コーティングが細胞成長に及ぼす影響を調べた結果、サイズがより小さい粒子への曝露は幹細胞により多い細胞死をもたらした。糖でコーティングしたより小さい銀ナノ粒子は、誘導細胞死の信号のひとつである活性酸素(ROS)の生成を増大させた。成長因子であるグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)が銀ナノ粒子に曝露すると細胞に送られる信号が損傷を受け、精子幹細胞成長を止める。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_100901_silver_nano_sperm_stem_cell.html

  • 銀ナノ粒子は魚に対して細胞毒性と遺伝毒性がある(2010年4月)
    Meridian 2010年4月16日の記事によれば、米日両国の共同研究チームは銀ナノ粒子が魚に対して細胞毒性と遺伝毒性を持つことを発見した。メダカの細胞株を30ナノメートル径の銀ナノ粒子に暴露させた結果、細胞死、染色体異常、腫瘍細胞は用量に依存し、用量 0.05, 0.3, 0.5, 3, 5 μg/cm2 で、それぞれ 80, 45.7, 24.3, 1, 0.1% の生存率であったことを「Aquatic Toxicology 2010年4月1日」に発表した。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/journal/2010_Apri_Silver_nanospheres.html

  • ナノ銀は魚の胚子を殺し、又は奇形を引き起こす(2010年1月)
     パデュー大学の研究者らは、溶液中に浮遊するナノ銀は有毒であり、試験魚ファットヘッドミノーの胚子を死に至らしめることがあり、ナノ銀が沈むと溶液は数倍毒性が弱まるが、それでもこの試験魚に奇形を引き起こすことを Ecotoxicologyに発表した。 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/100301_nanosilver_toxicity_in_fish.html

  • ナノ銀はヒト胎児の組織の実験で、細胞複写を抑制し細胞死を増大させ、神経回路形成を損ない、脳の神経伝達物質の表現型への発達を抑制し、脳の神経毒性として作用する可能性がある(2010年1月)
    デューク大学の研究者らは神経細胞様PC12細胞を使用して、銀イオンは細胞複写を抑制し細胞死を増大させ、神経回路形成を損ない、脳の重要な神経伝達物質であるアセチルコリンの表現型への発達を抑制することEnviron Health Perspect 118:73-79. doi:10.1289/ehp.0901149 に発表した。この影響はヒト胎児の組織で報告されている濃度より一桁低い濃度で観察されており、銀ナノ粒子が生体で神経毒性として作用する可能性を示唆するものであると結論つけた。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_100121_nanosilver_nerve_cell_toxicant.html

  • 洗濯中のナノ技術応用ソックスに何が起きているのか?(2009年9月)
     スイスの研究者らが、ナノ銀による抗菌処理をした布地を洗濯すると、そのほとんどは最初の洗濯で放出され洗濯水を経て排水中に放出される多くの銀の粒子は450nm以上の大きな銀粒子であることをEnvironmental Science & Technology(DOI: 10.1021/es9018332)に発表した。これは洗濯中に放出される銀の量を少なくする設計が可能であることを示す。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/091104_nanotechnology_socks.html

  • ゼブラフィッシュ胎仔における複数サイズの金と銀のナノ粒子の毒性評価(2009年8月)
     アメリカの研究者らは、ナノ銀がゼブラフィッシュの目、浮き袋、尾を奇形にし、充血性心臓疾患を引き起こす心臓周囲の液体を生じさせることを Small. 2009 Aug 17;5(16):1897-910.に発表した。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_091117_nanosilver.html

  • 食品保存材料中で使用されるナノ銀はDNA転写を阻害する (2009年2月)
     銀ナノ粒子はDNA転写の忠実性の損傷を誘因することを示す銀−ゲノム相互作用に関する新たなデータをNanotechnology [doi: 10.1088/0957-4484/20/8/085102]に中国の研究者らが発表した。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/090219_nanosilver_DNA_replication.html

  • 銀ナノ粒子はラットの肺細胞に酸化ストレスを起こし、サイズが小さいほど毒性は大きい (2008年10月)
     銀ナノ粒子はラットの肺の細胞内の活性酸素のバランスを崩すこと(酸化ストレス)により粒子サイズが小さいほど大きなダメージをもたらすことを米空軍の研究者らがJournal ofhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_081121_silver_nanoparticles.html

  • ナノ銀は藻類に対し銀イオン単独よりも毒性が強い((2008年10月)
     銀ナノ粒子と銀イオン単独を個別に藻類であるコナミドリムシに暴露させる実験で、銀ナノ粒子はイオン単独よりも毒性が強いことを示した。銀ナノ粒子はイオン影響を促進してイオンとナノ粒子の両方がナノ銀の毒性源であることを示す研究をES&T Science News, October 1, 2008 Nanosilver toxicity: ions, nanoparticles - or both? が紹介した。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/est/081001_est_nanosilver.html

  • ナノ銀処理されたソックスは洗濯中にナノ銀のほとんどが洗濯水中に出て環境中に放出される(2008年4月)
     ナノ銀は処理された布地から洗い流されて排水路に流れ込んだ後、排水処理プロセスで生成されるバイオ固形物にたまるかも知れないことをアリゾナ州立大学の研究者がES&T (DOI: 10.1021/es7032718)に発表した。
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/est/080409_est_silver_socks.html



化学物質問題市民研究会
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