ES&T 2008年4月9日
銀ナノ処理のソックスは問題がありそう

情報源:ES&T Science News, April 9, 2008
Silver socks have cloudy lining
A first assessment of socks containing silver nanoparticles, meant to cut down on foot odors, shows that the fabrics release most of the tiny particles in the wash?and possibly into the environment via solid waste from water treatment plants.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2008/apr/science/nl_nanosocks.html
(リンク切れ)
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es7032718

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年4月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/est/080409_est_silver_socks.html

 足の臭いを消すための銀ナノ粒子を含むソックスが初めて評価され、洗濯中にナノ粒子のほとんどが洗濯水中に出てしてしまい、恐らく排水処理設備からの固体廃棄物を通じて環境中に放出されることが示された。

 ソックスの抗菌剤として使用される銀ナノ粒子は長い期間は有効ではないかもしれない。新たな研究は、ナノ物質は処理された布地から洗い流されて排水路に流れ込んだ後、排水処理プロセスで生成されるバイオ固形物(訳注:主に肥料として使われる)にたまるかも知れないことを示している。アリゾナ州立大学の研究者らは処理されたソックスからのナノ銀の運命について ES&T (DOI: 10.1021/es7032718)で報告している。

 この研究は家庭用洗濯機の中の布地から排出する銀に関して”初めてきちんとしたデータを提供した”とスイス連邦物質試験研究所(Empa)の研究者であるベルンド・ノワックは述べている。ノワックは、ナノ銀、カーボン・ナノチューブ、及び二酸化チタンなどのナノ粒子の環境中への排出をモデル化する時にデータが不足していることがわかったとしている。(ES&T, DOI: 10.1021/es7029637 に発表予定)。

 大学院生トロイ・ベンと彼の学位論文指導者ポール・ウェスターホッフは市場にあるナノ銀処理ソックスの6銘柄をテストした。研究者らは酸中に浸漬して残留銀を検査したり、ソックスの銀濃度を走査型原子間力顕微鏡で直接測定するなど様々な方法でソックス中のナノ銀濃度を測定した。

 布地のナノ含有量を測定した後、研究者らはソックスを洗濯した。ソックスはテスト中の外乱を減らすために洗剤を使わずに蒸留水で1〜24時間、洗濯にかけられた。最も現実的なものとするために1回の洗濯はアリゾナ州テンピの水道水で行われた。

 ナノ銀粒子は布地と共に洗濯水中にも凝集したが、それは驚くべきことではなかったとウェスターホッフは述べている。ソックスのあるものには小さなコルク栓抜き状のナノ銀粒子が単純なナノ銀よりももっと密接に付着していた。それにもかかわらず、ソックスのあるものは2〜4回の洗濯後、ナノ銀の多くが無くなっていることに研究チームは気が付いた。この新たな研究は”非常に単純であるが、それはやらなくてはならない研究である”とノワックは述べている。”これらの商品に何が入っているのかを正確に知ることは難しい”。

 研究者らはまた、地域の排水処理施設からの活性汚泥(訳注1)をテストし、ソックスから洗い出された銀を含んでいることを見つけた。排水出口がナノ銀の重要な環境的放出口かも知れないが、バイオ固形物(訳注:肥料として使用される)はそれらの粒子の大部分を捕捉するとウェスターホッフは述べている。”それはまさにナノ物質の環境中へ経路の変更である。そのような銀はどの位多く、大地に施されるのであろうか?”と彼は付け加えた。

 ベンとウェスターホッフは正確な量を特定することはできないが、彼らはナノ粒子の半分以上が銀イオンに分解すると推定している。ウェスターホッフは、銀イオンは硫黄と反応して最終的には環境中で硫化銀になると付け加えた。過去の研究は銀ナノ粒子による魚への微小のダメージを示しているが、他の生物への影響は未知である。硫化銀は銀単体よりは毒性は低いが、銀よリ残留性があり、生物学的に利用できるかもしれない。

 現実の排水処理施設では、銀ナノ粒子は恐らく溶解し、硫黄又は硫化物と結合するであろうとスイス連邦技術研究所(ETH-Zurich)のマーチン・シェリンガーは述べている。銀沈殿物のあるものはバイオ固形物に付着することなく処理施設から流出し、淡水系に流入するかもしれない。シェリンガーと同僚らによる最近のモデリングは、ナノ処理された商品は全ての銀の約15%をEUの河川に排出するであろうという結果を得た( Sci. Total Environ. 2008, 390, 396?409)。

ナオミ・ルービック(NAOMI LUBICK


訳注:関連記事 New Scientist 07 April 2008, Smelly sock treatment leaks silver nanoparticles 訳注1:活性汚泥(activated sludge)
長時間空気を吹き込み(曝気)十分な酸素を供給し、好気微生物群を人為的に加え、排水中に存在する有機物を酸化分解・凝集・吸着・沈殿分離する最も代表的な排水・下水処理法を活性汚泥法という。この好気微生物群を汚泥あるいは活性汚泥と総称する。(EICネット解説より)
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=434

訳注2:銀ナノ関連情報


化学物質問題市民研究会
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