Nanowerk 2009年11月4日
洗濯中のナノ技術応用ソックスに
何が起きているのか?


情報源:Nanowerk News, November 4, 2009
What happens to those nanotechnology socks during washing?
By Michael Berger
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=13362.php

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年11月5日


 【Nanowerk Spotlight】ナノテクノロジーは新たな仕上げ処理の分野−ナノ仕上げを織物産業にもたらしている。ナノ粒子による織物及び衣類の表面コーティングは、紫外線ブロック、抗菌性、難燃性、防水性、あるいは自己洗浄性などを持たせるための高い表面活性を作り出すための一般的なアプローチとなっている。抗菌特性はナノ銀によってもたらされるが、紫外線ブロック、自己洗浄性、難燃性は酸化亜鉛又は二酸化チタンのナノ粒子を含むコーティングによって与えられる。

 数世紀にわたり、銀は様々な病気の防止と治療のために用いられてきた。銀は、最も古い抗菌剤のひとつとして知られており、様々なバクテリア、菌、ウイルスに対して効果的に用いられてきた。銀の抗菌効果は、呼吸酵素経路のブロックと微生物のDNAと細胞壁の変更によるものである。

 抗菌表面コーティングの潜在的な用途は、医療機器感染が医療コストに大きく関係する医学の分野から、建設産業や食品容器包装産業にまで広がる。銀を含む薄いフィルムは将来性あるコーティングの候補としてみなされている。現在では、銀ナノ粒子で処理した抗臭・抗菌ソックスすらある。(右の広告は韓国の製造者のもので、人気のある広告のひとつである)。

 スイスの研究者らは、洗濯中にこれらの銀ナノ粒子処理の布製品に何が起きているのかを検証している。研究者らは、商業的に入手可能な異なるブランドの抗菌ソックスを含む9種類の布製品について洗濯水中のナノ粒子の放出を調べた。このような研究は、ナノ仕上げ布製品から環境中へのナノ粒子の放出はどうなっているのかという疑問への対応に役に立つ。

 ”我々は、放出される総量は、布中のナノ銀の総量の1%以下から45%まで非常に大きく変動すること、そして、そのほとんどは最初の洗濯で放出されることを発見した”とスイス連邦材料検査研究所(Empa)の環境リスク評価管理グループの長、バーンド・ノワックは Nanowerk に述べた。”これらの結果は、ナノ銀布製品のリスク評価にとって、またナノ銀の環境中運命の研究にとって重要な意味合いを持っている。それは、洗濯に関連するある条件の下では、粗い銀含有粒子は最初に放出されてしまうことが示されたからである”。

 2009年9月24日のESTオンライン版でThe Behavior of Silver Nanotextiles during Washingとして彼らの発見を報告したが、ノワックと彼のチームは、洗濯水へ、したがって排水中に放出される多くの銀の粒子は450nm以上の大きな銀粒子であることを示している。”我々の研究の重要な結果は、ナノ銀布製品を洗濯中に放出される銀をわずかな量にするよう設計することが可能であることを示しているということである”とノワックは述べている。”製造者も消費者も、魚や他の野生生物を潜在的に損なうこれらの粒子の環境中への放出を最小にすることができる方法がある”。

 この研究は、ナノ粒子の放出は銀を繊維に組み込む方法に依存していることを示している。彼のチームの結果は銀ナノ粒子の溶解は洗濯に関連する適切な条件(pH 10)の下ではほとんど起きないこと(pH 7の場合よりも10倍低い濃度)を示しているとノワックは説明する。しかし、過酸化水素や過酢酸のような漂白剤は銀の溶解を著しく促進することができる。しかし、イオン及び粒子として布地から放出される銀の量と形状は、どのように銀粒子が布地に組み込まれたかに大きく依存する。

 銀がほとんど放出しないようにする方法があるとノワックは指摘する。”製造者のコツは、抗菌効果のために溶解銀がある程度放出するよう、しかしナノ粒子を効果的に固定して洗濯中に放出しないよう、銀を繊維に結びつけるナノ仕上げプロセスを使用することである”。

 このことは、布地会社は銀ナノ粒子の使用と放出を最小化する選択肢を持つこと、すなわち、ナノ粒子をわずかしか放出しないナノ銀処理布地とすることが可能であることを意味する。

 ”会社は、彼らの布地の洗濯後の抗菌効果を見るだけでなく、放出されるノノ銀の量にも目を向けるべきである”とノワックは述べている。

 マイケル・バーガー


関連情報:


化学物質問題市民研究会
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