パデュー大学 ニュース・サービス 2010年3月1日
よく使われる銀ナノ粒子は 魚に有毒であると研究が示す 情報源:Purdue University News Service March 1, 2010 Popular nanoparticle causes toxicity in fish, study shows http://www.purdue.edu/newsroom/research/2010/100301SepulvedaNanosilver.html オリジナル研究 銀ナノ粒子の試験魚ファットヘッドミノーの胚子への影響(アブストラクト) The Effects of Silver Nanoparticles on Fathead Minnow (Pimephales Promelas) Embryos http://www.springerlink.com/content/n64u7507871r1822/ Geoff Laban, Loring F. Niles, Ronald F. Turco, John W. Bickham and Maria S. Sepulveda 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2010年3月5日 【ウェストラファイエット、インディアナ州】パデュー大学の研究によれば、抗菌剤としてよく使われるようになったナノ粒子は魚に有毒である。 水生生物への毒性影響をテストするためにしばしば使用される小魚ファットヘッドミノー(fathead minnows)のテストで、溶液中に浮遊するナノ銀は有毒であり、ファットヘッドミノーを死に至らしめることもある。ナノ銀が沈むと溶液は数倍毒性が弱まるが、それでもファットヘッドミノーに奇形を引き起こす。 ”硝酸銀はナノ銀よりもっと有毒であるが、ナノ銀が超音波で分解される叉は水中に漂うと、その毒性は10倍高くなる”と、その研究成果がジャーナル『Ecotoxicology』に発表された森林天然資源学助教授マリア・セプルベダは述べた。”懸念すべき理由がある”。 セプルベダと博士課程のジェフ・ラバンは、ファットヘッドミノーが胚子の時から、餌を求めて棲みかの底から初めて泳ぎ出るまでのをいくつかの発達段階にナノ銀に暴露させた。超音波分解がなくてもナノ銀は脳の出血や水腫を含む奇形を引き起こし、最終的には死に至らしめた。 電子顕微鏡を用いて、セプルベダはファットヘッドミノーの胚子の内部に30nm叉はそれ以下のナノ銀粒子を検出することができた。30nmというサイズはヒトの髪の毛の径より3,000倍細いサイズである。 ”これらのナノ銀粒子はそのように小さいので、卵の細胞膜を通過し、1日以下で魚の胚子の中に入ることが出来る”とセプルベダは述べた。”胚子には高用量の銀が存在した”。 ナノ銀は多くの製品中の成分として人気が高まっている。脱臭衣料品、調理台、まな板、洗剤などの製品中に殺菌剤として用いられている。現在、製品中のナノ銀に適用するのための規制はほとんどないが、作物栽培学教授で、この論文の共著者でもあるロン・ターコは、環境保護庁がこの状況をレビューしていると述べた。 ターコはまた、環境中に放出されているナノ銀の現状のレベルを見積もる研究はないと指摘した。 ”銀は昔から抗菌剤として使用されてきた。それが微生物に有毒であることは知られている”と彼は述べた。”EPAはナノ銀を環境暴露の様子が農薬のようであるとみなしている”。 ターコは、どのくらいのナノ銀暴露ならヒト健康に影響を及ぼすのか明らかではないと述べた。しかし、銀溶解液は、ある人々にはプロバイオテックであるとみなされており、低用量のものが腸内健康のために時には使用されていると彼は述べた。 ”ナノ銀は適切に使用されるなら多くの衛生上の利点をもたらすであろう”とターコは述べた。”しかし、抗菌剤として見境なく製品中にナノ銀を含めることは警戒すべき問題を引き起こしている。 セプルベダは、異なるナノ粒子が魚と他の生物に及ぼす影響を理解するためのテストを開発することを計画していると述べた。彼女はまた、ナノ銀の環境中での濃度を決定するテスト方法を開発することを望んでいる。 ”もしこれらの粒子の濃度を知らなければ、どのようにしてリスクを知ることができるであろうか?”とセプルベダは述べた。 パデュー大学ヂスカバリー・パークがこの研究に資金提供をした。 Writer: Brian Wallheimer, 765-496-2050, bwallhei@purdue.edu Sources: Maria Sepulveda, 765-496-3428, mssepulv@purdue.edu Ron Turco, 765-494-8077, rturco@pudue.edu
アブストラクト
銀ナノ粒子の試験魚ファットヘッドミノーの胚子への影響 The Effects of Silver Nanoparticles on Fathead Minnow (Pimephales Promelas) Embryos http://www.springerlink.com/content/n64u7507871r1822/ Geoff Laban, Loring F. Niles, Ronald F. Turco, John W. Bickham and Maria S. Sepulveda ナノ粒子は多くの商業用途で使用されている。我々は二つの商業用銀(Ag)ナノ粒子(NP)製品である NanoAmor と Sigma の試験魚ファットヘッドミノーの胚子への毒性について述べる。 胚子は96時間、様々な濃度の超音波処理叉は攪拌されたナノ粒子溶液に暴露された。NanoAmor と Sigma 銀ナノ粒子のLC50(訳注:半数致死濃度)はそれぞれ、攪拌ナノ粒子溶液で 9.4 及び 10.6 mg/L、 超音波処理ナノ粒子溶液で1.25 及び 1.36 mg/L であった。 銀ナノ粒子の胚子への取り込みは、透過型電子顕微鏡を用いて24時間後に観察され、銀ナノ粒子は幼魚異常、そのほとんどは水腫、の濃度依存の増加を引き起こした。 銀ナノ粒子から放出される溶解銀は誘導結合質量分析を使用して測定されたが、その毒性影響は硝酸銀(AgNO3)と比べて、3倍、毒性が低かった。 放出された溶解銀のパーセンテージは銀ナノ粒子の濃度(最低値0.625 mg/L、最高値20 mg/L)に反比例し、それぞれ溶解銀の3.7% 及び 0.45%の放出であり、パーセント放出は濃度が攪拌叉は超音波処理かによらず同様であった。 したがって超音波処理後の毒性の増加は溶解銀だけでは説明することが出来ない。 我々は溶解銀及び粒子形状銀の両方が魚の胚子への毒性を引き出したと結論付けた。 |