EHN 2008年11月21日 論文解説
銀ナノ粒子
サイズが小さいほど毒性は大きい

オリジナル論文:
銀ナノ粒子のユニークな作用:サイズに依存する活性酸素の生成
米空軍研究所 2008年10月3日

情報源:Environmental Health News, November 21, 2008
Smaller sized nanonmaterials inflict a bigger bite
Synopsis by Stacey L. Harper
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
damaging-effects-of-commercially-available-nanomaterials


Original: Carlson, C, SM Hussain, AM Schrand, LK Bradydich-Stolle, KL Hess, RL Jones and JJ Schlager. 2008. Unique cellular interaction of silver nanoparticles: size-dependent generation of reactive oxygen species.
Journal of Physical Chemistry B DOI: 10.1021/jp712087m

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年11月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_081121_silver_nanoparticles.html



 ラットの肺の細胞を用いた研究によれば、銀ナノ粒子はサイズが小さければ小さいほど、より大きなダメージをもたらす。銀ナノ粒子のリスク研究は始まったばかりであるにもかかわらず、消費者製品中での銀ナノ粒子の使用は急速に増大している。

 一連の実験で、銀ナノ粒子は、酸化ストレスとして知られる細胞内の異なるタイプの酸素(訳注1:活性酸素)のバランスを崩すことによりダメージを引き起こした。実験で使用された細胞は肺胞マクロファージと呼ばれる特殊なタイプの肺細胞であった。ナノ粒子に暴露すると酸化ストレスを受け、またサイズも変化した。一般に、径が55ナノメートル(nm)の粒子は、小さな径15nmのものより毒性が低かった。しかし細胞のサイズの変化の方向はナノ粒子のサイズに依存した。15nm径の粒子に暴露(25及び75μg/ml投与)した時には、それらは縮小した。しかし30nm径の粒子に暴露(同一投与量)するとそれらは大きくなった。

 ナノ粒子の毒性についての情報は欠如しているにもかかわらず、新興ナノテクノロジー・プロジェクト(PEN)の消費者製品目録によれば、銀ナノ粒子を含む消費者製品235がすでに市場に出ている。これらの製品には、傷口包帯(絆創膏)、ナノ粒子を吸入可能な粒子に噴霧する空気洗浄器、人の肌に直接接触することを意図した身体手入れ用品などがある。この研究では銀ナノ粒子は細胞の酸化バランスを変化させることにより細胞に有毒であることを示した。

 ナノテクノロジーは10年以内に数兆ドル(数百兆円)産業に成長すると見積もられているので、環境と人の暴露の可能性はまずます増大する。


訳注1
訳注2:ナノ銀関連情報
訳注3:その他の関連情報


化学物質問題市民研究会
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