ES&T 2006年9月13日
水銀ランプに光を当てる
 もっと厳しい廃棄処分の基準が必要と米地質調査所報告書


情報源:Environmental Science & Technology: Science News, September 13, 2006
Shedding some light on mercury lamps
Tighter disposal standards for mercury-containing lightbulbs are needed, a new USGS report says.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/sep/science/kc_lamps.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月15日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_09/060913_est_mercury_lamps.html


 多くの消費者が省エネのために白熱ランプを水銀を含有する小型蛍光灯に取り替えているので、環境への水銀放出の機会が増大している。アメリカでは2001年にはランプに使用されている水銀11.6トンのうちわずか20%しかリサイクルされていないことを米地質調査所(USGS)の新たな報告書が示している。残りの多くは埋め立て又は自治体で焼却(47%)され、又はランプの輸送中又は取り扱い中に破損して大気に放出(25%)されている。蛍光灯1本当たりの平均水銀含有量は6mgで、1980年代の40mgから減少しているが、水銀含有ランプの使用は増大している。(訳注1:日本の場合

 ”水銀含有ランプは水銀の環境への最大排出源ではないが、とにかく大きい”−と8月に開催された第8回国際地球汚染物質水銀会議で調査結果を発表した USGS の鉱物材料専門家トーマス・グーナンは述べている。”水銀ランプは広く使用されているがほとんど管理されていないという事実が問題である。”

 2000年にはアメリカ産業は全体で201トンの水銀を消費したとグーナンは報告している。そのうち、90トンは塩素・苛性ソーダ製造プラントで使用される。水銀使用の第2位は試験所で10〜15トン。ランプ用水銀は第3位で、自動車用スイッチ、測定制御用装置、配線などに使用される水銀量とほぼ同じくらいである。アメリカの石炭火力発電所からの水銀排出は年間70トンくらいであるとグーナンは述べた。

 残念ながら小型蛍光ランプは、実現可能な水銀の代替が存在しないいくつかの水銀用途のひとつであると環境団体である水銀政策プロジェクトの代表ミカエル・ベンダーは述べた。米電気機器製造協会(NEMA)によれば、水銀含有ランプは白熱ランプに比べてルーメン(光束のSI単位)当たりエネルギー消費が3〜4倍少ない。”この調査から、我々は水銀含有ランプのリサイクル率をもっと上げるよう努力しなくてはならないことは明らかである”−とベンダーは述べている。

 使用されるランプの3分の2を占める商業及び産業用水銀含有ランプのユーザーは、廃ランプを有害廃棄物埋め立て場に廃棄する場合でもリサイクル施設に送る場合でも、EPAの一般廃棄物規則(Universal Waste Rule)に従うことを求められる。それにもかかわらず、これらのユーザーの水銀リサイクル率はわずか28%であるとグーナンは見積もっている。残りの3分の1の住宅ユーザーのリサイクル率はは2%強である。家庭用ランプの廃棄には規制がない。

 水銀ランプのリサイクルのためには現状の規制や自主的取組では十分ではないとベンダーは述べている。彼は、商業ユーザー及び家庭用ユーザーにリサイクルの動機付けをするために、ガラス瓶やアルミ缶と同様なデポジット方式の実施を勧告している。

 照明水銀リサイクル協会の代表ポール・アバナシーもまたもっと規制を強化してEPA規則の適用除外をなくすことを主張している。例えば、ホテルや集合住宅は家庭用と同様に適用除外を受けている。

 ”我々は全ての照明ランプの3分の1はこのような適用除外を受けており、他の3分の1は人々がそのような規則の存在を知らないためにリサイクルされていない”−とアバナシーは述べている。

 EPAはビルの管理者に蛍光灯をリサイクルをさせることを目指したいくつかの廃棄削減パイロット計画を持っているとEPAの固体廃棄物局ディレクター、マット・ヘイルは述べている。しかし、規制適用除外をなくすためには議会での決定と法改正が必要であり、それは我々が力を注いでいる領域ではないとヘイルは述べている。

クリス・クリステン(KRIS CHRISTEN


訳注1:日本の場合
訳注2:水銀関連記事


化学物質問題市民研究会
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