環境健康NGOs 2006年3月14日 プレスリリース
欧州議会:EUの水銀戦略はなんと力強く見えることか!

情報源:The European Parliament: what a strong EU mercury strategy should look like!
Press Release: Environmental and health NGOs[1], Brussels, 14 March 2006
http://www.noharm.org/details.cfm?ID=1259&type=document

抄訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年3月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_03/EU_Mercury_060314.html


[2006年3月14日ブリュッセル] 環境団体[1]は、本日の欧州議会での水銀についてのEU戦略に関する力強い決議に拍手喝さいする。

 ”欧州議会はヨーロッパと世界に対し、水銀使用を削減するために必要な今後の措置について明確なメッセージを送った。欧州議会は、EUは提案より1年早く2010年までに水銀の輸出を禁止し、戦略の主要な行動を改善するよう求めて、欧州委員会をはっきりと督促している”−と欧州環境事務局(EEB)のゼロ水銀キャンペーン・プロジェクトのコーディネータであるエレナ・リンベリディは述べた。”我々はまた、欧州議会が水銀化合物も輸出禁止に含まれるべきであると明確にしたことを喜んでいる。”

 議会はまた、塩素・カセイソーダ産業にはっきりと水銀法プロセス(訳注1)を、可能な限り早く、遅くとも2010年までに、廃止する必要があると述べた。”我々は議会の力強いメッセージを賞賛する。今は、既になされた合意と指令が厳格に守られるべき時である[2]!”−とEEBのエレーナ・リンベリディセッチモは指摘した。

訳注1(日本の場合):苛性ソーダや塩素を製造するプロセスとして水銀法、隔膜法及びイオン交換膜法があるが、日本では1973年熊本水俣病判決を契機に社会的関心が高まるなかで、政府は水銀法を当初は78年3月末までに、後に変更して84年末までに、イオン交換膜法へ転換を完了すべきことを決定した。しかし業界では資金難や雇用問題などを理由に転換延期を求める声が強く、1983年の水銀等汚染対策推進会議で84年末までに製法転換工事に着工すべきとの最終決定が下された。現在ではイオン交換膜法が採用されている。
(出典:環境情報論6


 同 NGOs はまた、歯科用アマルガム中、及び消費者及び専門家に用いられている医療装置を含む全ての測定器具・装置中の水銀を制限する要求を歓迎する。この要求は、欧州委員会の最近の提案の先を行くものである。”医療用器具については多くのよい代替品が存在する。医療分野から環境を汚染することになる水銀を削減することは易しいことである”−とヘルスケア・ウイズアウト・ハームの有毒物質政策アドバイザー、リゼッタ・ファン・ブリエ は述べた。

 ”我々は、現在及び将来の人々、特に低レベル曝露であっても最も脆弱な人々の健康を守るために、水銀を排除することがいかに緊急を要するかを議会が認めたことを喜んでいる”−と欧州公衆健康連合環境ネットワークの代表ジェノン・ジェンセンは述べた。”この問題はヨーロッパ全体の公衆健康の心配事であり、議会は人々の実際の曝露に関する情報を求め、脆弱なグループを支援するためのリスクコミュニケーションにおける最良の実施のためにもっと多くの資金を出すことを勧告することによってこの問題に対し真剣に対処した。”

 議会はこの水銀輸出禁止に調和して国際的な鼓動を支援し推進するEUの役割を繰り返した。水銀に関する世界的な法的措置に関する合意に達することを視野に全世界の水銀生産国と協調することの重要性を確認した。”我々は現在、欧州委員会とEU加盟国政府に対し議会勧告に基づいて行動を起こすよう要求する”−と水銀禁止ワーギング・グループのミカエル・ベンダーは述べた。”2007年2月に開催される国連環境計画(UNEP)での協議において、法的規制措置の可能性とその他の水銀世界戦略が議論されるので、この主要な要求を推進することは時宜を得たことである。”

 今後の措置として環境健康NGOsは、欧州委員会が”水銀のEU戦略に関する欧州議会の意見(European Parliament's opinion on the EU Strategy Concerning Mercury)”に従うよう要求する。我々はまた、議会は関連する法案が提出された場合に、彼らの意見を堅持することを要請する。

さらなる情報:

コンタクト先:
Elena Lymberidi, European Environmental Bureau (EEB), http://www.eeb.org, elena.lymberidi@eeb.org
Genon K. Jensen, EPHA Environment Network (EEN), http://www.env-health.org, genon@env-health.org
Lisette van Vliet, Health Care Without Harm Europe, http://www.noharm.org, lisette@env-health.org
Michael Bender, Ban Mercury Working Group, htpp://www.ban.org/Ban-Hg-Wg/, mercurypolicy@aol.com


[1] 環境健康 NGOS は下記団体からなる:

 欧州環境事務局(European Environmental Bureau (EEB), http://www.eeb.org)は、欧州加盟国、加盟予定国、及び周辺諸国を拠点とする145の環境市民団体の連合である。その組織は地方や国レベルのものからヨーロッパ及び国際的なものまでの範囲に存在する。EEB の目指すところはヨーロッパ人の環境を保護し改善し、ヨーロッパ市民がこの目標を達成するためにその役割を果たせるようにすることである。

 水銀禁止ワーギング・グループ(Ban Mercury Working Group, http://www.ban.org/Ban-Hg-Wg/)は、アメリカに拠点を置くNGOであるバーゼル・アクション・ネットワーク (Basel Action Network, http://www.ban.org)と有毒金属水銀による汚染をとめるために活動している水銀政策プロジェクト( Mercury Policy Project, http://www.Mercurypolicy.org)によって2002年に結成された世界中の28の公益非政府組織の国際的な連合である。

 欧州公衆健康連合環境ネットワーク(European Public Health Alliance Environment Network (EEN), http://www.env-health.org/ )は、健康と福祉を改善するための手段として環境保護を主張する国際的な非政府組織である。主要な団体と組織は、健康、環境、女性、健康専門家、その他を代表している。このグループは、非政府組織、医師団体、看護師及びその他の医療関係者、大学・研究機関、及びその他の非営利組織を含む、41の多様な会員団体(6国際組織、11欧州ネットワーク、及び24国/地方組織)を擁する。

 ヘルスケア・ウイズアウト・ハーム・ヨーロッパ(Health Care Without Harm Europe (HCWH), http://www.noharm.org)は、病院とヘルスケア機関、医療及び看護専門家、地域団体、健康被害者、労働組合、環境及び宗教組織の国際的な連合である。HCWH は、環境的に持続可能であり、最早、公衆の健康と環境に対する危害の源とならないようにするために、患者の安全と介護に関し妥協することなく世界中で医療産業を変革することにささげている。

さらに、アメリカ(NRDC)、インド(Toxics Link)、中国(Global Village of Beijing)、ブラジル(Association for Combats against the POPS)、及び南アフリカ(groundWork)の NGOs から支援をうけている。

[2] PARCOM 決議 90/3(PARCOM Decision 90/3)は、2010年までに水銀法プロセスの廃止を要求している。IPPC指令BREF

参照:
環境健康NGOs 2006年2月21日 プレスリリース
装置測定用水銀:不必要な水銀リスク/欧州州委員会の消費者用と医師用の体温計の水銀廃止提案だけでは不十分
 (当研究会訳)


化学物質問題市民研究会
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