聴いた、観た、買った ---淡々と音喰らう日々。

2000.10.01-31

>2000.11
<09.01-30
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★は借りた新着、☆は新規購入。

今回集中的に論評したディスクなど:
楽器上達に王道なし
どこでも採譜
DJ Krush: Milight
Bud Powell: Jazz Giant


今頃アップしてどうなる、ってのもあるんですが、空白の1ヶ月があるのもおさまりが悪いので、敢えて。遅れた最大の原因は、仕事上めちゃくちゃ忙しい月だったということに尽きます。「じゃ、ひょみ宜しく」じゃねえっつうの>当時の上司!


10/1 日曜。とにかく朝から昼過ぎまでは「バークリースクエアのナイチンゲール A Nightingale Sang In Berkeley Square」の採譜を中間部の前まで進め、それ以降はCDで'Waltz For Ruth'をオートリピートして、やっかいなベースソロを耳に叩き込む。そして午後3時よりセッション。Mさんはとりあえず完奏できるレベル迄練習を積んで来ているというのに、ほぼぶっつけ本番で当方申し訳ない限り。2サイクルあるベースソロを弾き終わる頃には汗だく。

しかし、曲をコピーするなんて、ピアノ1台に大雑把に翻案するとかはあったけど、一つのパートをここまで忠実になぞるってのは10数年振りだろうか。だがやって良かったと本当に思うのは、つくづく「楽器を弾けるようになる」ということは物真似、いや完コピ以外に方法はないのだなあ、というのを改めて思い知らされたことだ。いみじくもこの方(rioさん)がコラムに書いているとおり。

夜はウチに来て頂いて酒盛り、子供らが一通り腹一杯になって勝手に遊び始める頃を見計らい、'Nightingale'を採譜できた分だけ試してみる。...凄い。とりあえずちゃんと楽譜になっていた、というのも理由の一つではあろうが、4人がお互いの音と呼吸を聴きながら歌えばこんなにも歌が息づくものなんだ。これはやめられない、というか、難曲だからどうかと思ってたけど絶対に通しでマスターしようという決意を新たにする。

10/2 Pat Metheny Group: "We Live Here" (Geffen, 1995)
忙しいゆえ「座標の中点」としてのこの盤と、以降数日間はこれプラスPat Metheny Group (ECM, 1978)、Pat Metheny Group: "Imaginary Day" (Warner, 1997)、Ivan Lins: "20 Anos" (Som Livre, 1990)、Boca Livre: "Dancando Pelas Sombras" (MP, B, 1992/Xenophile, 1995) といった具合に。

10/9 晴れの特異日からずれてしまったことで今年の体育の日は見事雨模様となったが(この日を「ハッピーマンデー法」の対象にするなんて思慮なさすぎでしょう?)、今日は部屋の片づけを集中的にする日なので、むしろ出かけたい衝動にかられなくて丁度いいかも。

ハイポジ『かなしいことなんかじゃない』(お子様向け抜粋)
は、もちろん息子サービス(で家事の邪魔しないようにな、と)。

Ivan Lins: "20 Anos"
Los Del Rio: "Fiesta Macarena" (BMG/Ariola, 1996)
この辺は家事BGMの定番となってきた感じ。

10/11 Pat Metheny Group: "We Live Here" (Geffen, 1995)

出張に向かう新幹線の中で「ナイチンゲール」の採譜の続きを進める。が、ご存知のとおり新幹線の騒音は低音部のうなりが凄くて、どうも音の定位がぼやけてしまい、4つの声部が綺麗に分離されて聞こえてこない。

10/12 朝、下りの私鉄に乗ってトコトコと日帰り出張へ。今日は暑くなるらしいが、それにしても良い天気。勤め人や学生が降りると、入れ替わるようにハイキング客や遠足の一行がドヤドヤと乗り込んでくる。そんな横で「ナイチンゲール」の採譜をしている私。遠足の小学生たちがはしゃぐと先生が「邪魔しちゃいけません」と注意している。いやーゴメン、これ仕事じゃなくて趣味なんだよねー、はしゃいでなよ遠足なんだし電車すいてるし。とは思うが口に出したらヘンな人なので、恐縮しつつ黙々と続ける。

10/14 保育園の運動会。今年の父母綱引きは、クラス対抗でなく紅白戦にしたせいではあるが、勝てて嬉しい。勝てると足腰も痛めずに済むというのも発見。それはそうだ、負ける方は間違いなく100%以上の力を絞り出しているが、勝ち組はそうとは限らないもんなあ。

10/21 土曜。スタジオでセッション。平日忙しすぎてまた練習しないで臨む。恐縮なことこの上なし。今日はMさん宅に呼ばれてアカペラコーラス。

10/25 Marcus Miller: "Tales" (PRA, 1995)
ちょっと雰囲気を変えて、硬めの音がほしかったのでこんなのをプレイ。んーだがもっと硬めのがほしい。というわけで、

10/26 DJ Krush "Milight" (Sony, 1997)☆
CDは店に行ってもオンラインでも、買うときはまとめ買いなので、常に何枚か未聴の買い置きが手元にあることになる。そこから引っ張り出した1枚。
この、芯が図太く肉付けの薄い音は、ダブと通底するものがある(実際の影響関係のほどは知らないが)。Krushのトラック作りは他の盤同様、"abstract"という呼び方が(一部には余りウケの良くない表現だが)似合う。その「抽象性」とは、言い換えるなら、装飾を削ぎ落として芯=構造だけで見せるような指向性、既存の音組織に依存しない発想で作られた様々なコンポーネント、たとえ具体音を使っても具体性を意図せずむしろ何かを曖昧に指し示そうとする(どこか象徴主義と相通じる)構成手法、ということになろうか。
などとこちらが理屈をこねている間にその骨太のバックグラウンドを背に、自らの言葉を選び出し紡ぎ出す様々なラップ。飛び抜けてメッセージ性の強い盤なのに、それが押しつけがましさや息苦しさを感じさせないのは、それぞれのラッパーが言葉を自分自身に向けて書いているためでもあるのだろう。所々青いなあと思える部分も含めて、確かに日本のヒップホップのある部分はこんなに強靱になっていたのか、という深い感慨。そして繰り返し、繰り返し聴く。

10/27 Bud Powell: "Jazz Giant" (Verve, 1981)★
1949-50録音セッション。Budを聴こうと思った直接のきっかけは、Chick Corea with Gary Burtonによる"Bud Powell"の優しい響きだったが、それ以前にもジャズをやってる従弟が好きなピアニストとして挙げていたとか、色々あった。で振り返ると自分はBudのプレイを多分アルバム1枚しか聴いたことがない。それはClifford Brownの"Study in Brown"だったろうか(...パーソネルを記憶違いしてるかも)。
この盤で思うのは、とても抑え目な表出をするインプロビゼーションだなということ。優しい、というより慎ましい。

10/28 事務所レイアウト変更の立ち会いで休日出勤。只でさえ経理システムの切り替えで9月10月は忙しいってのに、関係のない偉い人が勝手に組織変更を決めるもんだから迷惑この上ない。私自身がオーバーフロー気味だったこともあり、同じ課の同僚(彼女も子育て中)に随分迷惑をかけてしまった。あああ。考えてみると「ナイチンゲール」の採譜にのめり込んだのも、一時的にそういう多忙さからの逃げ込み場所にしてたってことかも知れない。
DJ Krush: "Kakusei" (Sony, 1998) を入れていったが、途中で電池が切れてしまった。



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