核兵器のない世界実現へ 命の限り訴えつづける
日本被団協第57回定期総会が6月5日と6日、東京のホテルジュラクで開かれ、役員をはじめ、全国理事、オブザーバー、傍聴者など約110人が出席、被爆の実相普及、原爆被害への国の償い実現、核兵器廃絶、原発ゼロをめざし国民の命をまもる-などを柱にした2012年度運動方針を決定し、新年度役員(2面)を選出、総会決議(要旨2面)を採択しました。
基調報告につづき、2011年度の活動、決算、監査報告、2012年度の運動方針、予算が提案され、活発に議論し、いずれも確認、決定しました。停止中の原発を再稼働させる政府の動きが強まるなか「原発再稼働に反対する特別決議」(要旨別項)が大きな拍手で採択されました。
今回の総会では、被爆2世の出席と発言(一部を2面に紹介)が目立ちました。運動の継承とともに、被爆2世が直面する課題や2世の会結成の取り組みが報告され、これから始めようとしている各会を励ます内容となりました。
核兵器廃絶では、5月にウィーンで開かれた2015年NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議第1回準備委員会の、NGOから意見を聴く会で発言した岩佐幹三代表委員が、被爆の実相を世界に語り広げる重要さを報告しました。
現行法改正と密接にかかわる原爆症認定制度検討会について、検討会委員の1人の田中熙巳事務局長が報告しました。原爆症認定にあたって、行政と司法判断の乖離がなぜ生まれるのか、何度指摘しても厚労省側は明らかにせず、現行制度に固執している姿勢を批判。被爆の実態に即した施策となるよう世論に訴え、議員、政党に働きかけ、現行制度を正すため力をつくそうと訴えました。
新パネル「ヒロシマ・ナガサキ 原爆と人間」と現行法改正運動の2つのパンフレットが完成、総会で紹介されました。被爆の実相普及、現行法改正運動の推進に活用しようと早速各県から注文が寄せられました。
雨の中、第12回検討会を前に厚労省前に集まって声を上げる被爆者(6月12日)
第13回原爆症認定制度の在り方に関する検討会が6月28日、東京・虎ノ門ヒルズ会議室で開かれ、厚労省と神野直彦座長がまとめた「中間とりまとめ」案を議論し、修正のうえ出席者で確認しました。(全文は8月号)
「中間とりまとめ」について、神野座長は、「登山に例えるとベースキャンプにあたり、秋以降の議論で合意をひろげ、一歩一歩頂上をめざしたい」としました。
会議に出された案は、6月12日の第12回検討会に提案され議論をふまえ修正したものです。
焦点の1つは、現行法の性格を司法判断の「国家補償的配慮のある」制度と位置付けるかどうか。田中熙巳委員(日本被団協事務局長)は「基本的な制度の在り方」の議論の冒頭、重ねて強調しましたが、反対意見もあり合意事項にはなりませんでした。ただ「本検討会は…より良い制度を目指していくという方向は一致している」とし、「被爆者援護法第10条・第11条に基づく原爆症認定の制度は破綻しているという意見があることも留意する」と田中委員の主張が盛り込まれました。「被爆者に対する援護には行うだけの理由が必要」との表現は、「誤解を招く」と指摘があり、削除、「一般の福祉施策とは異なる理由があることに留意すべきである」と修正しました。
ほかの「原爆症認定制度の認定基準」と「手当て」も若干の修正で確認しました。「認定基準」「手当」は「現段階では、様々な意見が出されている事項がある」として合意していない意見が列挙されました。
田中委員の話 「現行法には国家補償的配慮があるという合意はできなかったが、よりよい制度にすることを確認し、認定制度の法的根拠である10条11条に基づく制度の破綻に言及しており、今後の議論で司法判断と行政の認定との乖離を解消する制度にするよう努力したい」
第57回定期総会で相次いだ被爆2世に関する発言の中から、6人の発言の一部を紹介します。
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南嘉久(福岡・2世・文書発言)
被爆者中央相談所の第35回定期総会が、6月7日東京のホテルジュラクで開かれました。
被爆者手帳の所持者が減少し相談事業を長年背負ってきた役員が少なくなる中、医療や福祉・介護制度が高齢者に厳しいものになっている現実を踏まえて、改善された原爆症認定制度の活用をはかること、現行法の活用をはかること、相談事業の充実をはかることなどを確認し、今年度の事業計画を決定しました。
新法人法に基づく法人に移行するかどうかは、移行期間と定められた来年11月までに検討していくことにしました。
衆議院 | ||||
重野 安正 | 社民党 | 大 分 | 2区 | |
川口 博 | 民主党 | 秋 田 | 2区 | |
京野 公子 | 民主党 | 秋 田 | 3区 | |
小林 正枝 | 民主党 | 東 海 | 比例 | |
参議院 | ||||
西田 実仁 | 公明党 | 埼 玉 | 22 | |
松浦 大悟 | 民主党 | 秋 田 | 19 | |
谷岡 郁子 | 民主党 | 愛 知 | 19 | |
徳永 えり | 民主党 | 北海道 | 22 | |
(数字は選出年度=平成) |
現行法改正を求める地方議会の意見書採択が始まりました。6月26日までの報告分です。北海道=札幌市 千葉=旭市 勝浦市 東京=三鷹市 [飾区 愛知=一宮市
中部電力
北陸電力
日本被団協東海北陸ブロックの代表が6月13日中部電力本店、15日北陸電力本店を訪問し、原発の再稼働をやめ廃炉にと要請しました。中部電力には大和忠雄代表理事ほか愛知、静岡、三重、岐阜、長野の11人が、北陸電力には大和代表理事ほか富山、石川、岐阜の7人が参加、対応した担当課長らに「核」被害者を増やすなと訴えました。
定期総会で選出、確認された日本被団協2012年度役員です。
〈代表委員〉 | 坪井直 谷口稜曄 岩佐幹三 |
〈事務局長〉 | 田中熙巳 |
〈事務局次長〉 | 山本英典 木戸季市 児玉三智子 中村雄子 藤森俊希(新) |
〈代表理事〉 | 越智晴子(新) 山田舜 市原憲二郎 大和忠雄 鹿島孝治 石川行弘(新) 松浦秀人 奥城和海 箕牧智之(新) 山田拓民 大岩孝平 武久熈 |
〈顧 問〉 | 山口仙二 肥田舜太郎 |
被爆者、支援者で満席となったシンポジウム
10年にわたってたたかわれた「原爆症認定集団訴訟」の終結集会が6月23日、東京神田の日本教育会館で開かれました。
集会の第1部はシンポジウム「原爆症認定集団訴訟からフクシマへ手渡せるもの」。集団訴訟全国弁護団事務局長の宮原哲朗弁護士をコーディネイターに、パネリストは、法律家から秋元理匡・日弁連原発事故対策本部原子力PT事務局長、物理学者から安齋育郎・立命大名誉教授、医師から斎藤紀・元福島生協病院長、運動面から田中熙巳・日本被団協事務局長の4人。放射線被害の実態を直視すること、運動の観点を貫くこと、原爆と原発についての国の政策の誤りをみること、健康調査の記録を蓄積していくことの大事さなどが論じられ、「核と人類は共存できない」などと語られました。
参加者からの発言もあり、集団訴訟の成果を原発事故対策に生かして行くことの大事さが強調されました。参加者は250人でした。
第2部は「原爆症認定集団訴訟終結・たたかいの記録出版記念」パーティー。トランペット演奏のあと全国原告団の山本英典団長の開会あいさつで始まり、歌、各政党代表の挨拶、メッセージ紹介、各地訴訟団・県被団協、医師団、専門家、支援団体紹介などがあり、佐々木猛也・広島弁護団長の「誇りある仕事ができてうれしい」という言葉で閉会しました。
長崎被災協が昨年実施した2世アンケートをきっかけに、今年2〜3月に諫早と長崎でつどいを開き、2世として声を上げよう、できることをしようと話しあいました。
5月20日諫早市で7人の2世と諫早被災協会長他6人が参加し、「長崎被災協・二世の会・諫早」を結成。会長森多久男氏、事務局長高屋忠義氏を選出しました。
5月27日被災協会議室で9人の2世と被災協理事他6人が参加し、会長佐藤直子氏、事務局長柿田富美枝を選出して「長崎被災協・二世の会・長崎」を結成しました。
どちらの会も「2世健診の内容の充実」「被爆者の健康管理手当に該当する疾病のある2世に2世手帳、医療費の無料化」「被爆体験継承、核兵器廃絶」などを求める活動を方針としています。
新聞、テレビでの報道をみて、電話の問い合わせが25件。「こんな会を探していた」「被爆体験の継承をしなければと思っていた」などの声に、2世の会が待たれていたと実感しました。
伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働に反対する愛媛県庁包囲行動とデモが、6月10日松山市で行なわれました。伊方原発をとめる会が主催。
四国を中心に中国、近畿、関東など全国から、主催者がたてた目標を上まわる約1300人が参加。城山公園でのスタート集会(写真)のあと、旗やのぼり、手作りのプラカードなどを手にデモを行ないました。
松本市中央公民館で6月15日〜18日、「ヒロシマ・ナガサキ 原爆と人間」展が開かれ、120人余が参加しました。同市の市民団体「平和の種をまく会」と長野県原爆被害者の会の共催。パネルの文章をたんねんに読む人が多く、感想文ノートには中学生の記述もありました。主催者は、松本市では初めての企画で市民によびかけてよかったと話しています。
6月9日、松山市内の原爆死没者慰霊碑前で出発集会のあと、市役所前まで約80人が平和行進に参加。愛媛県原爆被害者の会の松浦秀人事務局長が先頭を歩きました。
日本被団協が2種類のパンフレットを発行しました。「ヒロシマ・ナガサキ原爆と人間」はモノクロ印刷ですが、新パネル30枚の内容を掲載しています。「ふたたび被爆者をつくらない決意を世界に!」は、現行法改正要求全文を紹介し、疑問に答えるかたちで「なぜ被爆者は現行法の改正を求めるか」を解説しています。
いずれもA5判32ページ、200円(送料別)。申し込みは日本被団協まで。
広島県の北広島町議会は6月22日、政府が大飯原発の再稼働を決めたことに対し、大飯原発再稼働方針の撤回を求める意見書を採択しました。同日、原爆「黒い雨」指定地域の拡大を求める意見書なども採択しました。
私たちは今、被爆70年の2015年までに原爆被害への国の償いを実現することを目標にして、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の改正要求「原爆被害者は国に償いを求めます」を掲げて運動しています。「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」においては、国が原爆症の認定制度を抜本的に見直すよう、全力で交渉しています。脱原発への取り組みも進めています。
不況の折、大変恐縮ですが、今月号に付録として同封した「お願い」もご覧のうえ、大きなご支援をいただけますようお願い申し上げます。
【問】母は現在一人暮らしで88歳になります。病気がちではありますが、何とか一人で生活していました。ところが最近家で転んで足を骨折し、入院しました。今は退院して、介護保険の要支援の認定を受けていますが、十分な介護は受けられません。隣県に住んでいる私と妹が交代で介護をしていますが、それぞれに家庭があります。
この場合、被爆者の介護手当を受給することはできませんか。
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【答】介護手当は、介護が必要になった被爆者が、費用を支払って身の回りの世話をする人を雇ったときに支給されます。
今年で60回目を迎える「60周年記念平和美術展」が、8月12〜19日、大改修を終えた上野の東京都美術館で開かれます。
第7回平和美術展(1959年)から取り組まれている原爆死没者肖像画の制作について、今年は都道府県被団協を通じて8件の申し込みがありました。美術家による制作が始まっています。
この肖像画は平和美術展で展示された後、遺族に贈られます。