被団協新聞

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「被団協」新聞2010年 11月号(382号)

2010年11月号 主な内容
1面 原爆被害を償い、核兵器廃絶を宣言する国家補償法を!
院内集会で各党に訴え
2面 原爆症認定集団訴訟の現状と厚労省の認定審査結果について
意見書採択
アピール(要員)
日本被団協 臨界前核実験に抗議
3面 証言活動 工夫こらし各地で
戦争・空襲被害者に国の償いを
中央相談所講習会進/東北ブロック 宮城で開催
4面 相談のまど
声のひろば

原爆被害を償い、核兵器廃絶を宣言する国家補償法を!

 日本被団協全国都道府県代表者会議が10月20、21日、東京港区の東京グランドホテルで開かれ、全国討論が進んでいる現行法改正問題を柱に非核三原則法制化運動、実相普及運動などについて熱心に討議し、「原爆被害を償い、核兵器廃絶を宣言する国家補償法を」とのアピールを採択しました。参加者は34都道府県約100人でした。

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約100人の参加で活発な討論が行われた全国都道府県代表者会議(東京・港区)

日本被団協全国代表者会議がアピール
 会議は坪井直代表委員のあいさつで開会。「定期総会後の情勢の変化と日本被団協の運動」について田中熙巳事務局長が基調報告、「現行法改正要求案の討議状況」について木戸季市事務局次長が報告しました。
 木戸報告は「改正要求案」について各地で始まっている学習・討論を通じて「国家補償」要求に対する理解が広がっており、さらに来年度総会まで討論を進めること、専門家、協力団体にも意見を求めて練り上げることを提起しました。討論は正味2時間、国家補償の重要性の訴えや要求へのためらいなど、率直な意見が交わされました。
 現行法は原爆被害を放射線被害に限定して被害の実相を無視し、国民は戦争被害を受忍せよという反憲法的法律であり、改正される法律は「原爆被害を償い、核兵器廃絶を宣言する国家補償法」でなければならないことが確認されました。
 改正要求案の、(1)最大の被害者である原爆死没者への補償(2)すべての被爆者に対する補償(3)被爆者の医療、原爆症認定制度などの改善(4)二世三世の位置づけ(5)在外被爆者問題(6)被爆者手帳交付要件の見直し、についても多くの意見が出され、さらに議論を深めることになりました。

院内集会で各党に訴え

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院内集会で国会議員の話を聞く参加者

 日本被団協は全国都道府県代表者会議を終えた10月21日午後、国会内で院内集会を開きました。全国の被爆者約100人が参加しました。
 集会では、代表者会議で採択された「アピール」(2面に要旨)が読み上げられ、日本被団協が原爆被害への国家補償を求め、法改正をめざす議論を進めていること、非核三原則の法制化を求める運動を進めていること、原爆症認定問題で「新しい審査の方針」の運用改善について実質的協議の場を設けるよう厚生労働大臣に要請していることなどを、参加した国会議員と秘書に訴えました。
 民主党の川越孝洋、郡和子、福田衣里子、自民党の赤澤亮正、公明党の斉藤鉄夫、日本共産党の笠井亮、井上哲士、社会民主党の服部良一、の各議員と、秘書多数が出席しました。

原爆症認定集団訴訟の現状と厚労省の認定審査結果について

 日本被団協全国都道府県代表者会議2日目に、山本英典事務局次長が、原爆症認定集団訴訟の現状と、厚生労働省による原爆症認定の審査状況について報告しました。
 これによると、集団訴訟でたたかった306人の原告の勝訴、敗訴、未判決の状況は表1のとおりです。現在の敗訴原告が22人なのに、集団訴訟解決基金法に基づく基金の対象者が20人なのは、集団訴訟からはずれて控訴した1人と、訴訟外の別疾病で認定されている1人を除くためです。新基準でもいまだ認定されず、判決を待っている原告が22人(札幌の1人は別疾病で認定)です。
 2008年に「新しい審査の方針」が出されてからの認定状況は、表2にあるとおりです。従来は1年で150〜170件だった認定が、3000件近くまで増えたことは、被団協の運動の大きな成果です。
 一方で却下件数も相当な数に上っています。このため個別の訴訟が各地で起こっている状況があります。
 今後は、昨年の「確認書」で合意された「訴訟の場で争う必要のないよう」「協議の場を通じて解決をはかる」道をつくっていくことが最大の課題となります。

表1 原爆症認定集団訴訟の現状
原告306人
勝訴164人
判決前に認定98人
敗訴22人
基金対象敗訴原告20人
未認定未判決※22人
※札幌1人、東京16人、大阪5人
表2 新基準による認定・却下
認定却下合計
2008年度2,919622,981
2009年度2,8072,1344,941
2010年4月95358453
5月119386505
6月34619653
合計5,9743,5599,533

意見書採択

 非核三原則の法制化を求める地方議会の意見書採択、9月24日以降10月25日までの報告分です。
 秋田=横手市 八郎潟市 埼玉=鳩ケ谷市 草加市 北本市 東京=日野市(2度目) 熊本=長洲町 水上村
 全国代表者会議での議論では、取り組んでも採択が難しいところがある一方、今から取り組みを始めるところもあるようです。意見書採択議会の全国的広がりをめざし、12月議会に向けて取り組みを強めましょう。

アピール(要員)

 65年前の8月、私たちは広島と長崎で人類史上初めて原子爆弾の攻撃を受けました。多くの被爆者が惨苦の死にたおれ、生き残った被爆者は今なお、いのち、からだ、くらし、こころにわたる被害を受け続けています。
 私たちは、核兵器が人間と共存できない悪魔の兵器であることを世界に訴え、一日も早い核兵器の廃絶をもとめて行動してきました。日本政府に対しても、核兵器廃絶をめざす国際世論のイニシアティブをとるよう求めてきました。
 しかし核保有国は、核兵器の使用を前提とする核抑止力の神話にすがり、核兵器をなくそうとしていません。一方、被爆国である日本政府は核の傘にしがみつき、核兵器の存在と使用を容認しています。そして私たちの求める原爆被害への国家補償を拒否し、被害の受忍を強いています。
 私たちは訴えます。
 1.原爆被害を償い、核兵器廃絶を宣言する国家補償法を! 私たちはそのために、国家補償を拒否して戦争被害の受忍を未来にわたって強制する現行法を、国家補償法に改正する運動をすすめます。
 2.非核三原則の法制化を! 私たちはそのために、国会請願署名運動と地方議会の意見書採択運動をすすめます。
 3.原爆被害の実相普及をさらに! 私たちの運動の原点は、被爆の実相を訴えることです。国内外での実相普及活動をさらにすすめます。
 2010年10月21日
 日本被団協代表者会議

日本被団協 臨界前核実験に抗議

 日本被団協は、アメリカが24回目の臨界前核実験を行なったことに対し10月13日、オバマ米大統領あて抗議文を米大使館に届けました。今回の実験は、事前通告なしで9月15日に行なわれていたことが、報道によって明らかになったものです。
 抗議文は「核兵器廃絶への流れに明らかに逆行する暴挙に厳しく抗議し、満身の怒りをこめてこれを糾弾する」とし、臨界前核実験の計画を永久に放棄すること、核兵器廃絶のための国際条約締結に向けた多国間交渉をただちに開始すること、などを求めています。

証言活動 工夫こらし各地で

 全国各地で、毎日のように被爆者の証言活動が行なわれていますが、今回3人の被爆者の活動経験をご紹介します。

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ホワイトボードで説明する中村さん(右端)

声を失っても語り継ぐ
北海道 中村治弘さん

 札幌市の中村治弘さん(87歳)は、2009年末、咽頭がんで声帯を摘出し声を失いましたが、「命ある限りあの日のことを伝えつづける」として、ホワイトボードと黒のサインペンを両手に持って、「語り部」活動を続けています。
 活動の場は、北海道被爆者協会が運営するノーモア・ヒバクシャ会館です。言葉は全く出せないので、原爆展のパネルを指さしながら「あの日」の状況や自身の思いを、ホワイトボードに克明に書いていきます。ペンを握る指は固くなり、30分も書き続けると腕がだるくなるそうですが、「核兵器を廃絶して平和な世界を」の一念で、活動を続けています。

小学生の感想に励まされ
埼玉県 副島健義さん

 埼玉県の副島健義さん(73歳)は、毎年夏に地元の公民館で開いてきた「原爆と人間」展がきっかけとなって、4年ほど前から小学校に呼ばれ、6年生に被爆体験を話すようになりました。
 話すたびに感想文が寄せられます。中でも、証言の最後に「二度と戦争はしない、軍隊を持たないとする憲法9条が『ノーモア・ヒバクシャ』の誓いから生まれた」と話したことを受けとめた次のような感想に、副島さんは感動しているといいます。「いま日本は憲法で戦争をしないとしているが、それがなくなったらいやです」「これから自分にできることは9条を守ることです」「アメリカのような国になってほしくないので、副島さんのように戦争をやらないような運動をしたい」

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紙芝居とマンガを使って
福岡県 西山進さん

 福岡市の西山進さん(82歳・まんが家)は、自身の体験を紙芝居にして証言活動をしています(写真)。証言先の中学校の先生から事前に「目と目をあわせて体験をうかがえる機会がいかに貴重であるか、生徒たちにとって大切な平和学習であるかと考えています」との手紙とともに、71人の生徒からの質問が届きました。さまざまな質問への答えを、B4用紙1枚にマンガでまとめて配布し、好評を得ています。

戦争・空襲被害者に国の償いを
第5回浅草ウォーク

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被爆者も一緒に(写真提供=東友会)

 第5回浅草ウォークが10月24日、行なわれました。行進に先だって、午後1時30分から台東区民会館で「尊い命とそうでない命があるのか。戦争、空襲被害者に国の償いを」をテーマに集会を開きました。日本被団協の山本英典さん、全国空襲連の星野ひろしさんらの報告をうけ、「差別なき国家補償」を実現していく新しい出発の年にしようとのアピールを読み上げて集会を閉じた後、3時30分に花川戸公園を出発しました。
 力を合わせて戦争被害受忍論を打ち破ろうとの思いを込めた折り鶴のレイをかけて、今にも雨が降りだしそうな肌寒いなか、参加者約120人が元気に歩きました。道行く大勢の人々に訴えながら約1時間歩き、吾妻橋のそばで解散しました。

中央相談所講習会
東北ブロック 宮城で開催

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 日本被団協原爆被爆者中央相談所の東北ブロック講習会が、10月5〜6日、仙台市秋保ホテルクレセントで開かれ、弁護士、協力者も含めて22人が参加し、現行法改正問題について討論、交流しました。
 早坂博宮城県原爆被害者の会会長と、木村緋紗子日本被団協代表理事があいさつ。木戸季市日本被団協事務局次長が報告し、吉田一人現行法改正検討委員が「被爆者運動が築いたもの」と題して講演しました。
 討論では、原爆被害への国家補償の意味、あり方、二世三世の問題などをめぐり、活発に意見が出されました。被爆者の減少、高齢化などで困難が増している東北各県の実情についても交流。先輩たちが築いてきた被爆者運動の灯を守っていこうと励まし合いました。

相談のまど

◇葬祭料の支給
・死亡原因は問われますか
・親族でなくても申請できますか


 【問】 被爆者が死亡した時に支給される葬祭料について教えてください。死亡原因は問われるのでしょうか。また、申請者は死亡した被爆者の親族でなければいけないのでしょうか。
  *  *  *
 【答】 葬祭料は、被爆者健康手帳を所持していた被爆者が死亡したときに支給されます。
 支給額は現在、20万1千円です。
 死亡原因については、交通事故の被害者や、天災などによる死亡で、原子爆弾の傷害作用の影響によらないことが明らかな場合は、支給されません。
 自殺の場合は、「病気のために悩んでいた」などの診断や証言があれば支給されます(昭和44年衛発543号)。
 葬祭料は、葬祭を行なった人に対して支給されるので、実際に行なった人が申請者となります。必ずしも親族である必要はありません。
 死亡した被爆者が生活保護を受給していた場合には、やはり葬祭を行なった人に対し、生活保護法による葬祭扶助も併給されます(昭和44年衛発543号)。
 葬祭料の申請には、地方自治法236条の「5年」という時効規定が適用されるので、これを過ぎると申請できません。

声のひろば

 ◆10月号の「相談のまど」を読んで。私は、原爆症の認定申請をしましたが却下されました。その時感じたのは、医師は被爆そのものと、手続きなどの仕組みを知らなさ過ぎるということです。(新潟・75歳・女)
 ◆私は以前に原爆症と認定された時、病院を変わるよう連絡を受けましたが、同じ病院にお世話になりたかったので、先生にお願いして指定医療機関になってもらいました。できることは自分で行動することも大切だと思います。(大阪・70歳・女)
 ◆被爆は宇品で24歳のとき、船舶司令部警備小隊長でした。ピースボートには平成12、15、20年に乗り、3回地球を一周しました。船内では必ず被爆証言をしました。今も年に2度くらいは被爆証言の依頼がきます。(東京・89歳・男)
 ◆被爆の友達が、毎年減ってきて、淋しく感じています。(香川・84歳・男)
 ◆お蔭様で生かされたことを感謝しながら、精一杯生きています。(東京・86歳・女)
 ◆父のあとを引き継いで、この新聞を愛読することになりました。(大分・59歳・女)
 ◆毎月、新聞を楽しみに待っています。クイズを解くのが楽しいです。(鹿児島・78歳・女)