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「ねじれた男と最後の挨拶」(Episode IV Twisted Karma and His Last Bow)

第4話のタイトル「ねじれた男」は短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「The Man with the Twisted Lip(唇のねじれた男)」からとられたと思われる。
(「最後の挨拶」の部分については、第1話解説で書いた通りなのでそちらを参照のこと)
「唇のねじれた男」はそのままゴシップの外見のことであり、今作においてはタイトルの英訳「Twisted Karma」(ねじれた業、宿命)が表すとおり、彼の「ねじれた」過去、「ねじれた」モーションなどを含めた意味での「ねじれた男」であろう。

原作「唇のねじれた男」は、ある夫人が失踪した夫の捜索をホームズに依頼し、ホームズが失踪の謎を解いていく物語である。依頼主はある日、夫を思いがけぬ場所で見かけたのだが、夫はその後失踪し、夫が居たはずの場所には唇のねじれた男、Hugh Boone(ヒュー・ブーン)が居ただけだった、と語る。
本作をプレイした方ならピンと来ただろうが、実はこのヒュー・ブーンこそが夫が変装した姿であり、妻と子供に隠れて二重生活を送っていたというオチである。
本作に登場する「ヒュー・ブーン」も「唇のねじれた男」からのネタであろう。

余談になるが、逆転裁判シリーズに登場する「狩魔豪」「狩魔冥」の「狩魔」の由来は思想に関する用語の「Karma」であり(書籍「逆転裁判3 真相解明マニュアル」より)、英語版逆転裁判シリーズにおいても、ローカライズされた名前は「Manfred von Karma」「Franziska von Karma」と、そのまま「Karma」が用いられている。
この第4話で検事として復活する、《狩魔》を持つ男も含めた意味での「Twisted Karma」(ねじれた業、宿命、「《狩魔》のカシラをひねる」)かもしれない。
思想に関する用語の「Karma」については、業 - Wikipediaを参照されたし。

「なぜ、海の底が磯巾着で埋めつくされないのか、フシギですよ。」

「成歩堂法律相談所」でアクアリウムを調べると、龍ノ介が磯巾着の繁殖能力の高さに「なぜ、海の底が磯巾着で埋めつくされないのか、フシギですよ。」と漏らす。
それを聞いた寿沙都が何故か喜ぶのだが、龍ノ介には意味がわからなかった。
実は前作の第5話にも、ホームズが「こうしている間にも‥‥海の底は、牡蠣まみれになるのだよ!」と言うシーンがある。これは短編集第4作「His Last Bow(シャーロック・ホームズ最後の挨拶)」に収録された短編「The Adventure of the Dying Detective(瀕死の探偵)」からのネタで、おそらく、寿沙都はこのシーンのことを知っていたために、龍ノ介の言葉に対して「ホームズのネタだ」と喜んだのではないだろうか。

赤毛連盟

第4話にて登場する「赤毛連盟」は、短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「The Red-Headed League(赤毛連盟)」からそのまま取られたと思われる。
本作での「赤毛連盟」は「赤毛の人だけ加盟資格がある赤毛連盟に入れば高収入が得られるから、まず審査登録料を払え」という詐欺であったが、小説の「赤毛連盟」も「赤毛の人だけ加盟資格がある赤毛連盟に入れば高収入が得られるから」の部分だけは同じで、とある赤毛の人を自宅から引き離すのが目的という話であった。

「赤毛連盟」については第2話の「ダンカン・ロス」の項目も参照のこと。

以下は余談。ド・ジッコが、「バカみたいに赤い髪のせいで、寄宿学校ではさんざんいじめられたりした」というような話をするが、残念ながら現実にも、赤毛に対する偏見が存在しており、「赤毛連盟」の物語の中にも、この偏見が反映されている箇所がある。詳しくは以下をご参照いただきたい。

バークリー刑務所

刑務所の名前「バークリー」は、短編集第2作「The Memoirs of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの思い出)」に収録された短編「The Crooked Man(背中の曲がった男)」の登場人物、James Barclayからか。
なお、Barclayの邦訳表記は「バークリー」「バークレー」「バークレイ」など表記が分かれる。

通気口からの刺客?

「刑務所 所長室」で鹿の剥製を調べると、龍ノ介は本物と勘違いして「誰かが通気口から“刺客”を送りこんだのかと思いました。」と発言する。
前作の第2話でもおなじみ、「まだらの紐」のネタである。
なお、寿沙都はこの後に「『シャーロック・ホームズの冒険』の“読み違い”かと存じます。」とツッコミを入れてくれる。

プライオリ幼年学校

法廷【その1】の尋問「移動した“ついたて”の謎」で、ビーナスの証言をゆさぶると、ビーナスが花火を売りつけている生徒たちの学校の名前が「プライオリ幼年学校」だと判明する。
短編集第3作「The Return of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの帰還)」に収録された短編「The Adventure of the Priory School(プライオリ学校)」から取られたものと思われる。

なお、「幼年学校(英:Infant school)」は文字通り、幼児向けの学校で、日本では幼稚園に近い存在。
ビーナスは幼稚園児くらいの子どもに花火を売りつけていたのである。危ない。

余談だが、19世紀末のイギリスは、1880年小学校教育法にて5~10歳の義務教育がようやく定められた状態で、当時の日本と同じく、高等教育を受けられるのはほんの一握りであった(明治時代の日本の教育制度については、前作の色々ネタの「帝都勇盟大学」の項目を参照されたし)。
この時代、ジーナのように(孤児であってもなくても)「文字の読み書きができない子ども」は珍しくも何ともなかったのである。
上の「幼年学校」に通うことができていた子どもたちは、それなりに裕福な家庭の子どもであったのだろう(そうでなければ、ビーナスが花火を売りつけたりはしまい)。

ジェイベズ

ビーナスが、事件現場で拾った時計を売りつけようとしていた古道具屋の主人の名前は「ジェイベズ」。
「赤毛連盟」に登場する質屋の経営者、Jabez Wilson(ジェイベズ・ウィルスン)の名前からと思われる。

ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモンド・オルムシュタイン(独逸(ドイツ)?)

「共同推理」にて、ホームズが、部屋で倒れている人物について、「数年前、独逸(ドイツ)の紳士から、重要な手紙を取り戻して欲しいと依頼を受けた。彼は高貴な身分を隠すため覆面をしていた。彼は独逸(ドイツ)の国王、ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモンド・オルムシュタインである」と推理する。
第3話解説でも書いたとおり、元ネタは短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「A Scandal in Bohemia(ボヘミアの醜聞)」。
この推理を披露した後、龍ノ介が「ホームズさんの言った事件を最近本で読んだが、《独逸(ドイツ)》ではなく《ボヘミア》の国王だった」と突っ込んでくれる。

波斯式室内履(ペルシャスリッパ)

共同推理中、「アイリスの視線の先にあるのは?」で調べることができる。
ペルシャスリッパについては前作の色々ネタの、「射撃の痕跡と暖炉」の項目を参照。
今作でも、小説とは異なる設定の「ペルシャスリッパ」に対して、寿沙都が不満を漏らす。

「“瀕死の探偵”というヤツだな。」

共同推理後、ふっとばされたホームズの一言。
「瀕死の探偵」そのままのタイトルが存在する。
短編集第4作「His Last Bow(シャーロック・ホームズ最後の挨拶)」に収録された短編「The Adventure of the Dying Detective(瀕死の探偵)」である。

ホームズと“相棒”の出会い

第4話終盤で、ホームズと“相棒”の出会いについて語られるが、この時の話は長編第1作「A Study in Scarlet(緋色の研究)」とほぼ同じ。
本作では、下宿を探していたがどこも家賃が高く、家賃を折半できる同居人を探していたら、当時病院の研究室で研究をしていたホームズを紹介された、という流れ。
一方、「緋色の研究」では、当時病院の化学研究室にいたホームズが、いい部屋を見つけたが家賃が高く、家賃を折半できる同居人を探している、という話をワトソンが聞いて、同居を決めるという流れ。

余談 「ACD0522」

証拠品「旅券(パスポート)」の旅券番号が「ACD0522」となっているが、「シャーロック・ホームズ」シリーズ作者の名前はアーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle)、誕生日は5月22日である。
ドイルのイニシャルはA・C・D、誕生日が5・22‥‥
続けると「ACD0522」‥‥
偶然ではなさそうである。

*kb0312様より情報提供いただきました。ありがとうございます。

番外 ブラックウィドワーズ

法廷【その1】の尋問「目撃したこと」で、ある証言をゆさぶると、「パブ・ブラックウィドワーズはヘンリー街のカドを曲がってスグ」というセリフがある。
アイザック・アシモフによる短編推理小説シリーズ「黒後家蜘蛛の会(原題はthe Black Widowers、つまりブラックウィドワーズ)」が元ネタと思われる。
「ヘンリー」は小説内の登場人物で、探偵役の給仕。

黒後家蜘蛛の会 - Wikipedia

番外 バロネス

法廷【その2】終盤で、「バロネス亭」という店の名前が登場する。
第3話の「ソーラーポンズ」同様に、シャーロック・ホームズシリーズのライバル作品である、「隅の老人の事件簿」の作者バロネス・オルツィの名前から取られたものと思われる。
詳細は以下などを参照。

シャーロック・ホームズシリーズ関連作品#ライバルたち - Wikipedia

なお、2021年には、「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」公式開発ブログの最終回で、1920年~1930年代の名作へのオマージュとして、
『黒後家蜘蛛の会(ブラックウィドワーズ/the Black Widowers)と彼らの“比べるもののない”給仕ヘンリー・ジャクソン(Henry Jackson)』
『当時のホームズのライバルでもある『隅の老人』(“The Old Man in the Corner”)を書いたバロネス・オルツィ(Baroness Emma Orczy)』
が登場していることが明かされた。

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