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まだらの紐

第2話のタイトルで使われた「まだらの紐」は、短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「The Adventure of the Speckled Band(まだらの紐)」から。
被害者が亡くなる前に「口笛の音を聞いた」「まだらの紐という言葉を残した」というくだりは、原作と同じ。
そしてニコミナが使った偽名「グリムズビー・ロイロット(Grimesby Roylott)」は原作の登場人物で、原作においては蛇を使った殺人を目論んだ真犯人である。

原作でのあらすじは、共同推理でホームズが述べる通り「ミルクで慣らした蛇を口笛で操って毒殺」であるが、作中にて寿沙都が言う通り、蛇をミルクで訓練することは困難と思われるし、蛇に耳はないので口笛で操ることも不可能、そして蛇の体の構造では呼び鈴の紐を昇り降りすることも難しいということで、このホームズの推理はかなり無茶ということになる。
だが第4話にてアイリスが発言した通り、「“お話”なんだし。ワクワクするほうがいいでしょ?」という理由で、「大逆転裁判」世界においても、原作同様に「ミルクで慣らした蛇を口笛で操って毒殺」の物語に変えられる運命のようである。

余談になるが、英語の原作タイトル「The Adventure of the Speckled Band」は、「band」に複数の意味がある(「一団・楽団」または「紐」)ことが読者への引っ掛けになっている。
つまり、被害者が残した言葉が「bandは楽団のことなのか? 紐のことなのか?」という謎をも解き明かしていくことになるのであるが、邦訳の際にはあっさりと「紐」であることがわかるタイトルにされてしまった。
詳しくはまだらの紐>タイトルの仕掛け - Wikipediaを。

アフガニスタン帰り

第2話でホームズは初対面の龍ノ介を「アフガニスタン帰り」だと推理するが、原作の長編第1作「A Study in Scarlet(緋色の研究)」でも、ホームズは初対面のワトソンを「アフガニスタン帰り」だと推理する。
原作では確かに、ワトソンはアフガニスタン帰りであったのだが、龍ノ介はアフガニスタン帰りどころかアフガニスタンが何なのかすら知らなかった。

シャーロック・ホームズ

言わずと知れた、原作「シャーロック・ホームズ」シリーズの主人公。
「大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-」においては、その名前から始まり、原作の特徴との共通点が多い。

‥‥など。
ただし同居している「ワトソン」については、原作では「ジョン・H・ワトソン」、大逆転裁判においては「アイリス・ワトソン」である。
「鋭い観察力で人の特徴を捉え見抜いてしまう」については、大逆転裁判においては怪しい部分があることは「共同推理」からしても否めない。
また、服装こそ原作に寄せているが、髪型については原作の挿絵でオールバック・黒髪として描かれており、本作とは異なる。この点については、「大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險- 公式原画集」にて、デザイナー塗和也氏が「TVドラマや映画、原作を読んでいる方には黒髪の印象が強いかもしれないんですけど、主人公(日本人)との対比を重視してこの色にしました。」とコメントしている。
各話冒頭のプロローグにて、ナレーションによりホームズとワトソンの物語が語られているが、この時の挿絵風のイラストのホームズが、原作の挿絵に近いイメージになる。

ストランドマガジン

アーサー・コナン・ドイルの書いた「シャーロック・ホームズ」シリーズが連載されていた雑誌(よって、厳密には、原作「シャーロック・ホームズ」世界とは関係がない)。
原作「シャーロック・ホームズ」シリーズは「ホームズの相棒ワトソンが、ホームズの活躍を物語として発表している」という設定になっているが、「ワトソンがストランドマガジンに連載していた」という訳ではない。

3DS/スマホ版では、「ストランドマガジン」という名称がそのまま使われているのだが、PlayStation4 / Nintendo Switch / Steam版「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」では、「ランドストマガジン」(英語版では「Randst Magazine」)に変更された。
3DS版ではダウンロードコンテンツ、PlayStation4 / Nintendo Switch / Steam版では特別付録に収録の「ランドストマガジン」に名称をあわせたのかもしれないが、実際のところは変更の理由はわからない。

番外編「ランドストマガジン」第4話「ホームズの部屋にて」では、「ストランドマガジン(ランドストマガジン)に連載したホームズの小説をまとめて、『シャーロック・ホームズの冒険』というタイトルで出版した」というネタが登場する。

「The game is afoot!」「Elementary.」

共同推理にて、「推理開始」の時に表示される「The game is afoot!」の文字、「推理完了」の時に表示される「Elementary.」は、原作「シャーロック・ホームズ」にも登場する台詞である。
有名な台詞だが、原作で何度も登場した訳ではない。

「The game is afoot!」

短編集第3作「The Return of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの帰還)」に収録された短編「The Adventure of the Abbey Grange(「僧坊荘園」、「修道院屋敷」などの邦訳がある)」の冒頭に登場するホームズの台詞。

It was on a bitterly cold and frosty morning, towards the end of the winter of ’97, that I was awakened by a tugging at my shoulder. It was Holmes. The candle in his hand shone upon his eager, stooping face, and told me at a glance that something was amiss.
“Come, Watson, come!” he cried. “The game is afoot. Not a word! Into your clothes and come!”

私が肩を引っ張られて目を覚ましたのは、1897年の冬の終わり頃、霜が降りるような厳しい寒さの朝だった。それはホームズだった。屈んだ彼の真剣な表情を、手に持った蝋燭が照らしており、一目で何か問題が起きていることがわかった。
「来い、ワトソン、来てくれ!」彼は叫んだ。「もうゲームは始まっているぞ。何も言うな! 服を着てこい、行くぞ!」

「The game is afoot!」は、「推理開始」の時にぴったりの、「さあ、ゲームは始まっているぞ!」というような意味になる。gameは、ホームズにとっては楽しい遊戯でもある推理の時間と捉えることもできるし、メタフィクション的にビデオゲームの意味とも考えることができる。

本作においては、第5話冒頭、ハッチの質屋を訪れた時に、ホームズが実際に、
「さあ、来たまえ! ‥‥闘いゲームの始まりさ!」
と発言している。
もっともこの時のホームズは、質に入れたバイオリンを自分のミスでうっかり取り違え、それを店主のせいにして取り戻してやろうと気合充分で訪れているというだけで、プレイヤーからしたら何の闘いだよ! と、突っ込みを入れたくなるシーンであるが。

なお、ホームズ原作における「The game is afoot.」自体、実はシェイクスピアの戯曲「Henry IV, Part 1(ヘンリー四世 第1部)」に登場する台詞が元ネタである。

Before the game's a-foot, thou still lett'st slip.

がそれで、ここでのgameは「狩猟」の意味なので、「獲物が動く(=狩猟が始まる)前に失敗しないようにしろ」、要するに「早合点するな」という意味のたとえ話になる。
よって、ホームズの「The game is afoot.」は、gameを「獲物」と捉えて「獲物が動き出した」と意訳もできるだろう。

「Elementary.」

「elementary」は初級、初歩といった意味になる。
この第2話では、初登場時の「なあに。ほんの初歩のスイリです。」、二度目の共同推理時の「ほんの“初歩”ですよ。退屈しのぎにはなりましたが、ね。」という本人の台詞を聞くことができる。

原作では、短編集第2作「The Memoirs of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの思い出)」に収録された短編「The Crooked Man(背中の曲がった男)」の、

“Elementary,” said he. “It is one of those instances where the reasoner can produce an effect which seems remarkable to his neighbour, because the latter has missed the one little point which is the basis of the deduction.(後略)"

「初歩的なことさ」と彼は言った。「推理する者が他者を驚かせることがあるのは、その人が推理の基本となる一つの小さなポイントを見逃しているからに過ぎないんだ。(後略)」

これが、ゲーム中に表示される「Elementary.」と一番近い意味合いになるだろう。
他にも、長編第3作「The hound of the Baskervilles(バスカヴィル家の犬)」の冒頭に、

“Interesting, though elementary,”

というホームズの台詞がある。
これは、ワトソンがホームズに促されて、ワトソンなりに一本のステッキから持ち主が誰かという推理を披露した後、ホームズがワトソンの推理を褒め、そして改めてホームズがステッキを観察した後に発した第一声である。
ワトソンの推理が間違いだったので「面白い推理だったけど、初心者の推理だ」というような意味合いになるだろう。

原作ではホームズの卓越した推理力と優越感を表現した台詞になるが、本作においては、共同推理でホームズの珍推理を散々修正した後、ホームズが「初歩的なことさ」と言ってのけるということになってしまう。なかなかツッコミどころがある台詞であり、本作のホームズの大物っぷりを示しているとも言える。

余談だが、動画「大逆転裁判 大特別法廷」(「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」の特別付録に収録)でのホームズの「初歩さ。ほんの初歩的なスイリだよ ワトソンくん」という台詞がある。
英語だと「Elementary, my dear Watson.」で、シャーロック・ホームズのテレビドラマや映画作品などにも登場する。
だが、実はこのフレーズは原作小説にはない。
「大特別法廷」において、寿沙都はホームズの台詞の後、「本に書いてあったとおり」と喜んでいるので、大逆転裁判世界のホームズの小説には収録されているのかもしれないが。

バリツ?

第2話終盤にて、ホームズが寿沙都の柔術を見て、「あれが、いわゆるニホンの“武術”なのですか。」「よかったら。そのミゴトな“投げ”‥‥ゼヒ。伝授していただきたいのですが。」と、興味を示すシーンがある。
原作ではホームズには「baritsu(バリツ)」という日本式の武術の知識があった、という話がある。
「バリツ」などという日本式の武術はない‥‥というよりそもそも日本語の単語として存在しないだろう、と思われる方は、以下をご一読いただきたい。

バリツ - Wikipedia

原作者のアーサー・コナン・ドイルが、日本について無知で適当な武術をでっち上げたという訳では決してない、ということがおわかりいただけると思う。

「寿沙都投げ」と「バリツ」の繋がりは不明であるが、第2話終盤でのホームズと寿沙都のやりとりを見て、「バリツ」を連想したホームズファンもいらっしゃるかもしれない。
もっとも、「スサトナゲ」や「スサトオトシ」と「バリツ」では文字数すら合わないので、同一のものとは思えない‥‥だが本作のホームズの性格からして、勝手に解釈を変えてしまう可能性もあるが。真相は不明である。

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