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トビー

長編第2作「The Sign of Four(四つの署名)」に登場する犬の名前がトビー(Toby)。
「四つの署名」ではホームズが探索の為にShermanという人物から借りた犬であり、ホームズは、

"Yes, a queer mongrel with a most amazing power of scent. I would rather have Toby's help than that of the whole detective force of London."
「とても鼻が利く雑種だ。ロンドン中の警察よりトビーの手助けが必要だ」

と評価しており、実際に作中でもある匂いを追跡して活躍する。
「大逆転裁判2」のトビーも、第3話と第4話で匂いを追跡し、イーノック・ドレッバーを探し出したり、重要な証拠品の正体を見破ってくれる。

見かけについては、原作では、

Toby proved to be an ugly, long-haired, lop-eared creature, half spaniel and half lurcher, brown and white in colour, with a very clumsy, waddling gait.
トビーは汚れ、長い毛を持ち耳は垂れ、スパニエルとラーチャーの雑種で、色は茶と白であり、とてもぎこちなく、アヒルのような歩き方をしていた。

ということなので、本作のトビーとは「耳は垂れ」くらいしか見かけは合っていないようである。
(見た目を変更した理由については、ニンテンドードリーム2017年10月号の開発スタッフインタビュー中で語られている)
なお、本作のトビーは犬種がフィールド・スパニエルであると思われ、耳が垂れているのはスパニエルの特徴である。

余談だが、史実ではイギリスで初めて警察犬が採用されたのは1908年(明治41年)のことであり、イギリスのケント州で警察官の補助としてエアデールテリア犬種が警察犬として採用されている。
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警察犬(けいさつけん)(PDF形式:245KB)

目隠し

ドビンボーはドレッバーの工房へ馬車で連れて行かれた際、目隠しをされたと話すが、これは短編集第2作「The Memoirs of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの思い出)」に収録された短編「The Greek Interpreter(ギリシャ語通訳)」からのネタと思われる。
ギリシャ語の通訳を頼まれたある人物が、同じように目隠しをされ、馬車である場所へと連れて行かれるシーンがある。

イーノック・ドレッバー

長編第1作「A Study in Scarlet (緋色の研究)」の登場人物にEnoch Drebber(イーノック・ドレッバー)が居る。
「緋色の研究」では、ある人物の復讐により長年追われたあげく殺害されており、本作とは「逆転」した立場とも言える。
第3話には証拠品としてイーノック・ドレッバーの名刺が登場するが、「緋色の研究」にもイーノック・ドレッバーの名刺が登場している。
また、「緋色の研究」には、イーノック・ドレッバーの名刺を持つ被害者が殺害されていた部屋の壁には「RACHE」(ラッヘ:ドイツ語で復讐の意)という血文字が残されていた、というシーンがあるが、今作においても、イーノック・ドレッバーの名刺を持つドビンボーの留置所の部屋に大量の計算式が描かれるシーンがある(ついでにドビンボーはドイツで研究をしていた)。

おばあさんに変装

探偵【その2】で、ホームズに「現場写真(水晶塔(クリスタルタワー))」や「装置の《鳥籠(ケージ)》」をつきつけると、かつてエライダ・メニンゲンと対決した、という話が聞ける。この時にホームズはおばあさんに変装したのだが、背が高すぎて見破られたらしい。
原作でもホームズは老婆に変装したことがある(短編集第5作「The Case-Book of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの事件簿)」に収録された短編「The Adventure of the Mazarin Stone(マザリンの宝石)」)。ホームズは変装の名人であり、「マザリンの宝石」での老婆の変装は見破られなかった。

「‥‥あり得ない仮説を消去していけば、最後に残るのは、たった1つの《真実》。」

探偵【その2】の共同推理前のホームズの言葉。原作「シャーロック・ホームズ」シリーズでも何度か登場しているフレーズ。
前作第5話でも登場しており、逆転シリーズにおいては、「逆転裁判3」第5話のゴドーのセリフとしてもおなじみ。
詳細については、前作の色々ネタを参照のこと。

《プロフェッサー》

本作における、10年前の連続殺人事件の犯人の通称が《プロフェッサー》である。
一方、シャーロック・ホームズシリーズにおいて《プロフェッサー》、すなわち「教授(Professor)」といえば、シャーロック・ホームズの仇敵、ジェームズ・モリアーティ教授(Professor James Moriarty)である。
モリアーティ教授の裏の顔は犯罪組織の長であり、部下に命じて犯罪計画を実行しているが、人を利用して殺人計画を実行しているという点では、第5話で判明する『全ての事件の黒幕』と共通している。

前作第5話では、質屋の合言葉として「PROFESSOR」が使われていたが、この《プロフェッサー》から取られたのかどうかはわからない。

なお、本作において、10年前の連続殺人事件の犯人が《プロフェッサー》と呼ばれていた理由は不明のままであった。作中の説明によれば、連続殺人事件が起きている最中、犯人の正体は不明ながら《プロフェッサー》と呼称されていたようである。しかし、犯行の内容(貴族が狙われる、猟犬によって殺害する)からしても、教授を意味するProfessorと呼ばれる理由はこれといってなさそうに思えるのだが‥‥。

番外 ソーラーポンズ

法廷【その3】の最終弁論で陪審員1号をゆさぶると、新聞を読んでいた1号が「ソーラーポンズ通り(ストリート)の連続殺人事件、2日で解決‥‥」という話をする。
オーガスト・ダーレス著、「ソーラー・ポンズの事件簿」からとられたと思われる。
シャーロック・ホームズシリーズが有名になると、個性的な名探偵の登場する推理小説が次々に生み出されたが、その中のひとつが「ソーラー・ポンズの事件簿」である。
詳細は以下などを参照。
シャーロック・ホームズシリーズ関連作品#ライバルたち - Wikipedia

なお、2021年には、「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」公式開発ブログの最終回で、1920年~1930年代の名作へのオマージュとして、『ソーラー・ポンズ(Solar Pons)シリーズ』が登場していることが明かされた。

余談 「切り裂きジャック」と「シャーロック・ホームズ」と「オッターモール」

探偵【その1】、「ローザイク蝋人形館」の一番左の蝋人形たちを調べると、アイリスが、若い女性ばかりを狙った「切り裂きジェーン」の蝋人形だと教えてくれる。
元ネタは、イギリスで実際に起こった連続殺人事件の犯人「切り裂きジャック」であると思われる。
「切り裂きジャック」は、1888年にイギリスのロンドンで起こった連続殺人事件であるが、未解決であり、犯人は通称「Jack the Ripper」、訳すと「切り裂きジャック」と呼ばれている。
大まかな内容はWikipedia等、インターネットでも読むことが出来るが、猟奇的な殺人事件であるため、ご注意いただきたい。

切り裂きジャック - Wikipedia

「Jack」は男性の人名であるが、日本における「名無しの権兵衛」の「権兵衛」のような扱いであり、特定の個人を指してはいない。
女性であれば「Jane」(ジェーン)が使われる。

「切り裂きジャック」の概要を読むとわかるが、本作における《プロフェッサー》による連続殺人事件は、「切り裂きジャック」もモチーフとしている可能性がある。
「切り裂きジャック」も《プロフェッサー》による連続殺人事件も、ロンドンで5人連続、残虐な方法で殺害されているという共通点がある。
(「切り裂きジャック」については、「確実に切り裂きジャックの犯行である」と考えられているのが5人で、他にも切り裂きジャックの犯行ではないかと疑われている殺人事件もある。ちなみに「バスカヴィル家の犬」での犠牲者は、最後に行方不明となった人物も含めれば3人)

1888年といえば、現実世界においてはシャーロック・ホームズシリーズの著者、アーサー・コナン・ドイルが小説家としての活動を開始した頃である。
Wikipediaによると、

 シャーロック・ホームズシリーズで知られる同時代の推理作家アーサー・コナン・ドイルは、切り裂きジャック事件については特に公式に意見は述べておらず、事件を扱った小説も発表していない。子息によれば、切り裂きジャックの正体について「女装した男性」であると自分の推理を述べたことがあったという。

とのことである。
後にホームズもののパスティーシュ(いわゆる二次創作みたいなもの)として、ホームズVS切り裂きジャックの作品も生み出されている。
「大逆転裁判2」も、ギリギリ、ホームズと切り裂きジャックが関わった作品‥‥といえるかどうかは微妙なところか。

また、「切り裂きジャック」を元にしたフィクションも多数発表されており、その中には今作に登場した「オッターモール」の元ネタ、トマス・バークによる小説「オッターモール氏の手」という推理小説もある。
「ローザイク蝋人形館」で警備をしていた老警察官を、ホームズは「殺人警察官オッターモール」だと勘違いし、どんな事件だったか話してくれるが、そのあらすじは「オッターモール氏の手」とほぼ同内容である。

日本語に訳された「オッターモール氏の手」は、創元推理文庫の「世界短編傑作集 4」内に収録されている。

なお、2021年には、「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」公式開発ブログの最終回で、1920年~1930年代の名作へのオマージュとして、『『オッターモール氏の手』(“The Hands of Mr Ottermole”)』が登場していることが明かされた。

余談 映画「シャーロック・ホームズ」(2009年作品)

シャーロック・ホームズ (2009年の映画) - Wikipedia

【ワーナー公式】シャーロック・ホームズ

管理人は未見のため、Wikipediaの記述を元にまとめておく。
映画「シャーロック・ホームズ」(2009年作品)は、原作小説「シャーロック・ホームズ」をそのまま映画化した内容ではなく、登場人物や設定を利用したオリジナルストーリーが展開されるが、この中には、本作の《プロフェッサー》とイーノック・ドレッバーの元ネタになったのではないか? と思われる要素が幾つか見られる。

*えびせん様から情報提供いただきました。ありがとうございます。

余談 蝋人形あれこれ

本作に登場する「ローザイク蝋人形館」は、ロンドンに実在する蝋人形館、「マダム・タッソー館」がモデルと思われる。
「マダム・タッソー」の名前は、短編集第5作「The Case-Book of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの事件簿)」に収録された短編「The Adventure of the Mazarin Stone(マザリンの宝石)」にも登場している。
上の「蝋人形のホームズ」の項目にも書いた通り、「マザリンの宝石」にはホームズの蝋人形が登場する。この蝋人形は、「マザリンの宝石」中のある登場人物が、マダム・タッソーが作ったのかと驚くほど本人とそっくりであった。
シャーロック・ホームズの原作が書かれた時代でも、マダム・タッソーが有名であったことを伺わせるエピソードである。
(ただし作中のホームズの蝋人形は、マダム・タッソーが作ったものではない)

マダム・タッソーについての概略は、マダム・タッソー東京の公式サイトやWikipediaをご参照いただきたい。

マダム・タッソー館 - Wikipedia

マリー・タッソー - Wikipedia

上の通り、「ローザイク蝋人形館」やローザイクの尋問で聞ける話は、実話を元にしているのである(創始者であるマリー・タッソーがフランス革命の犠牲者たちのデスマスクを作った、ロンドンのマダム・タッソー館に「恐怖の部屋」を作った、など)。
なお、マリー・タッソーの出生名は「アンナ・マリア・グロシュルツ」である(参照)。

一方、蝋人形は「ムラージュ」としても当時から利用されていた。
ムラージュとは医療教育用などの模型のことで、蝋人形は解剖学の実例を教える人体模型として使われていた。
つまり蝋人形は法医学にも縁があるのである。

そして、法医学の権威ドクター・シスの娘の名前は「マリア・グーロイネ」。
「グーロイネ」は恐らく日本語のダジャレと思われるが、「アンナ・マリア・グロシュルツ」にちなんだネーミングであるかもしれない。
(ネーミングについては、今後、関連書籍やインタビューで明かされる可能性がある)

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