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トバイアス・グレグソン

Tobias Gregson(邦訳では「トバイアス・グレグスン」の表記が一般的のようである)は、原作でもロンドン警視庁(スコットランドヤード)の警部として登場する。
なお、名前の表記については以下のインタビューもご参照いただきたい。

『大逆転裁判』ディレクター・巧 舟氏×シャーロック・ホームズ研究家・北原尚彦氏 スペシャル対談! 「ワトソン」?それとも「ワトスン」? 頭を悩ます翻訳問題【総力リコメンド】 | このマンガがすごい!WEB

「この部屋に、かのボヘミア国王さまも事件の依頼に来たのでございますね‥‥」

ホームズの部屋に初めてやってきた時の寿沙都の台詞。
短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「A Scandal in Bohemia(ボヘミアの醜聞)」のことであろう。
身分を隠したボヘミア国王が自らホームズの部屋を訪れて、ホームズに依頼をした事件である。

余談だが、ボヘミア王国は中世から近世にかけて中央ヨーロッパに存在し、現代のチェコ共和国の前身となった王国。
19世紀末から20世紀初頭にかけては、ボヘミア王国はオーストリア帝国に吸収されていた時代であり、ボヘミア王号はオーストリア皇帝の付加称号であった。
つまり、ホームズの部屋にやってきたボヘミア国王というのは、オーストリア皇帝でもある、ということになってしまう‥‥が、「ボヘミアの醜聞」で明らかになるボヘミア国王の本名は架空の名前であるので、ボヘミア国王の存在含め、現実世界とは切り離して考えるのが良いだろう。
ボヘミア関係については以下を参照されたし。

射撃の痕跡と暖炉

ホームズの部屋、画面左の乱雑な棚の上に小さく弾痕がある。
短編集第2作「The Memoirs of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの思い出)」に収録された「The Musgrave Ritual(マスグレーヴ家の儀式)」冒頭にて、ホームズは気まぐれに、部屋の中で銃撃を行い、V.R.という文字の形に弾痕を残すというエピソードがある。
寿沙都は弾痕を見て、このエピソード通りだと喜ぶのである。
ちなみに、第5話でアイリスと行動中に弾痕を調べると、ホームズが銃撃した時の話が聞ける。実はホームズは射撃の腕前はいまひとつらしい。
なお、「V.R.」は「Victoria Regina」のイニシャルである(ホームズの部屋を初訪問した時、「V.R.」を調べると、女王陛下の頭文字だと寿沙都が教えてくれる)。
Victoria Reginaは、19世紀の大英帝国のヴィクトリア女王のこと。
本作においてヴィクトリア女王の名前そのものは登場しないが、2021年発売の英語版では寿沙都が
「Those are the letters 'V.R.', standing for 'Victoria Regina'. It's Latin for Queen Victoria.」
と、「V.R.」がヴィクトリア女王(Queen Victoria)のイニシャルであることを明言している。

また、部屋中央の暖炉を調べると、寿沙都がペルシャスリッパや、ジャックナイフで刺したものについて話をしようとするが、アイリスによって「小説とは少し違う」エピソードを披露され、寿沙都ががっかりする。
このペルシャスリッパ関係の話も、同じく「マスグレーヴ家の儀式」冒頭のエピソードである。

なお、部屋の中で射撃をする話は、第5話探偵【その4】での「ハッチの質屋」捜索中にも登場する。
寿沙都が、部屋で射撃をする話を読んだと言うと、アイリスは「そういえばおもしろ半分で書いたっけ」と呑気に言う。アイリス曰く、実際には危ないからたまにしかやらない、とのこと。

「謎の革靴に、謎の木槌に、謎の踊る人形に、皇帝(ナポレオン)の石膏像‥‥」

ホームズの部屋、暖炉の右あたりの棚を調べた時に、寿沙都が「謎の革靴に、謎の木槌に、謎の踊る人形に、皇帝(ナポレオン)の石膏像‥‥」と、浪漫あふれる品々に感激する。アイリスによると、これらはホームズが解決した事件の記念品である。
これらの品々は、原作からのネタと思われる。

ブラック・ピーター

ホームズの部屋、アイリスの思いつきメモが書かれている黒板を調べると「ブラック・ピーター」と書いてある。
短編集第5作「The Return of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの帰還)」に収録された「The Adventure of Black Peter(ブラック・ピーター)」からそのまま取られたものと思われる。
アイリスの説明では「ピーターという黒猫がいなくなり、ホームズが魚屋で見つけてくれた」というエピソードであるらしいのだが、「シャーロック・ホームズの帰還」に収録された「ブラック・ピーター」は全く異なる物語である。

ジョン・ガリデブ

短編集第5作「The Case-Book of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの事件簿)」に収録された「The Adventure of the Three Garridebs(三人ガリデブ)」の登場人物に「ジョン・ガリデブ」がいる。
原作ストーリー自体と、本作におけるガリデブに特に繋がりはないようである。
本作におけるガリデブ夫妻が「痩せた体型」と「ふくよかな体型」であることから、「ガリ+デブ」というダジャレで採用された‥‥のかもしれない。

彼は退役軍人で、「マイワンドの戦いで膝に銃弾を受けた」と語っているが、原作のジョン・H・ワトソンも、長編第1作「A Study in Scarlet (緋色の研究)」冒頭にて、マイワンドの戦いで重傷を負っている。
「マイワンドの戦い」とは、史実では1880年7月27日に起きた、第二次アフガン戦争中での戦のことである。
彼が軍人だった頃の身分は「第4ノーザンバーランドフュージリア連隊・第3連隊小隊長」だったと法廷【その2】で判明するが、原作のジョン・H・ワトソンはホームズと出会う前、「the Fifth Northumberland Fusiliers」つまり「第5ノーザンバーランド フュージリア連隊」に所属していた。
(ノーザンバーランドは地名。「フュージリア連隊」については、ロイヤル・フュージリアーズ連隊 - Wikipediaを参照のこと)

「人間の脳が記憶できる“容量”は、決まっているからね。必要のないコトは、できるかぎりさっさと忘れるべきなのさ。」

夏目漱石の部屋で、自ら「緋色の研究」からの自分の言葉だと語ったホームズ。この部分、ゲーム中では台詞2つ分にまとめてあるが、原作ではもうちょっと長めである。
ちなみに彼が忘れるに値すると原作シーンで語ったのは、「地球が太陽の周りを回っていること」である。地動説だろうと天動説だろうと、ホームズの仕事には何の影響もないから忘れても構わない、というのが彼の言い分である。

"You see," he explained, "I consider that a man's brain originally is like a little empty attic, and you have to stock it with such furniture as you choose. A fool takes in all the lumber of every sort that he comes across, so that the knowledge which might be useful to him gets crowded out, or at best is jumbled up with a lot of other things, so that he has a difficulty in laying his hands upon it. Now the skilful workman is very careful indeed as to what he takes into his brain-attic. He will have nothing but the tools which may help him in doing his work, but of these he has a large assortment, and all in the most perfect order. It is a mistake to think that that little room has elastic walls and can distend to any extent. Depend upon it there comes a time when for every addition of knowledge you forget something that you knew before. It is of the highest importance, therefore, not to have useless facts elbowing out the useful ones."

「いいかい」彼は説明した。「人の脳というものは、元々小さな空の屋根裏部屋のようなもので、そこに自分が選んだ家具を配置していかなければならない。愚か者は、見つけたものをなんでも詰め込んでしまい、必要なはずの知識が追い出されてしまう。良くて他のものとごちゃ混ぜになるだけだ。結果として、知識を積み重ねることが難しくなってしまう。できる人間は、脳という屋根裏部屋に何を収めるかとても気をつける。彼は仕事に役立つものだけを手に入れるが、大量なそれらを完璧な順序に並べておかねばならない。だが、この小さな部屋の壁に弾力性でもあって、幾らでも広がると思うのは間違いだ。新たな知識を仕入れる為に、何かを忘れなくてはならない時が必ずやってくる。だから、無用の知識が有用な知識を押しのけないようにすることこそ、もっとも重要なんだ」

ジョンなのかジェームズなのか

探偵【その2】の共同推理中、「メアリ」という人物が「ジェームズ」に当てて書いた恋文が登場し、ガリデブ夫人が夫を誤解した、という事実が判明する。
この時にジョン・ガリデブが「自分の名前はジェームズではなくジョンだ」と弁明している。
短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された「The Man with the Twisted Lip(唇のねじれた男)」にて、原作のジョン・H・ワトソンの妻メアリ(Mary)が、何故かワトソンのことを「ジェームズ(James)」と呼ぶという謎のシーンがあり、これをもじったネタと思われる。

唇のねじれた男 - Wikipedia

恐らく上のネタをやりたい為に「メアリ」「ジェームズ」という名前を登場させたのであろうが、原作「シャーロック・ホームズ」シリーズにおいてホームズの宿敵でもあるモリアーティ教授の名前は「ジェームズ(James)」、5話登場のハッチ・ウィンディバンクの元ネタ「ジェームズ・ウィンディバンク(James Windibank)」など、シャーロック・ホームズシリーズには「ジェームズ」さんが結構たくさん登場していたりする。

(セント)バーソロミュー病院

第4話の被害者、ビリジアン・グリーンが入院した病院の名前は「(セント)バーソロミュー病院」。
原作の長編第1作「A Study in Scarlet(緋色の研究)」で、ホームズとワトソンが初めて出会った場所も「(セント)バーソロミュー病院」である。
ちなみに、実在の病院である。
聖バーソロミュー病院 - Wikipedia

『The Adventure of the Lion's Mane』

証拠品「4冊目の本」は『獅子王物語』というタイトルだと証拠品の説明に書いてあるが、詳細画面でタイトルを見ると、英語で『The Adventure of the Lion's Mane』と書いてある。
短編集第5作「The Case-Book of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの事件簿)」に、同じタイトルの短編が収録されている。邦訳では「ライオンのたてがみ」が一般的である。

なお、2021年発売の「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」では、英語タイトルが「The Lion's Pride」という、シャーロック・ホームズ原作とは全く関係ないネタに変更された。
英語版(The Great Ace Attorney Chronicles)も同時収録しているが、海外向けにホームズ作品の著作権に配慮しての変更であろうか。
または、ガリデブの「ライオンへの憧れ」を表現するのに、「The Adventure of the Lion's Mane(ライオンのたてがみ)」の内容ではそぐわないという判断だろうか(ホームズ原作の「The Adventure of the Lion's Mane(ライオンのたてがみ)」には、猛獣の方のライオンは登場しない)

番外編 夏目漱石と「吾輩は猫である」

第4話に登場する夏目漱石(本名「金之助」)は、本作において唯一、「現実世界に実在した人物」である(もちろん、大逆転裁判がフィクションである以上、完全に同一ではないが)。
ロンドンに留学していたことがあるのも事実である(「大逆転裁判」は西暦何年の出来事?をご参照ください)。
留学中は精神的に疲労していたようで、本作においても反映されている。
4話初対面時には「留学の成果を報告せよと通達があったが、白紙で提出してやった」という話があるが、これは実際の夏目漱石のエピソードからとられたものと思われる。
(本作では「初年度の報告書を白紙で提出した」という話になっているが、実際には、最初の報告書には「ロンドンの物価が高くて留学費がもたない」というようなことを書いており、白紙で報告書を提出したのは後のことである。参照:夏目漱石 - Wikipedia)。
このように、作中にて夏目漱石の実際の行動が反映されている部分もあるので、探してみるのも面白いだろう。
以下は余談である。

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