2003年7月の映画  戻る


黒の試走車−テストカー

1962年 日本 大映東京
監督 増村保造
原作 梶浦季之(かじやまとしゆき)
脚本 船橋和郎/石松愛弘
撮影 中川芳久
音楽 池野成
美術 山口煕
出演  田宮二郎(朝比奈)/叶順子(昌子)/高松英郎(小野田)/菅井一郎(馬渡)/上田吉二郎(的場捨松)/船越英二(平木)/白井玲子/中条静夫(岡村)/見明凡太朗(小栗)/長谷川季子小野道子
メモ 2003.7.27 レンタルビデオ
あらすじ
タイガー自動車はこんどの新車パイオニアに社運をかけている。2流の自動車会社から1流にあがれるかの瀬戸際だ。ところが1流の自動車会社ヤマトがつぶしにかかってくる。敵の大将・馬渡部長は戦中関東軍の諜報将校。筋金入りのスパイだ。タイガーは「男は仕事だ」の小野田部長が産業スパイのチーム・企画一課を立ち上げ手段を選ばず勝負を挑む。そのゲームは勝ったり負けたりを繰り返しエスカレートし「それ、拉致やで犯罪やで」の域にまで達してしまう。
感想
「黒」シリーズの第一作。
アウトバーンがあるわけでもない狭い島国で130キロもでるスポーツカーが何故必要なのかさっぱりわからん。その上40年前の産業スパイ物。フルッ、いまどきスパイなあ。と思っていたさぼてんを、深く反省しております。
「組織と個人」を描く社会派映画。であるがなによりそれよりサスペンス・スリラーがすばらしい。スパイは「そうや、あんたや」とすぐにわかるんやけれど、古い映画を侮ってはいけない。狂った小野田部長と暴かれた哀しいスパイの攻防シーン。そのシャープさに目が醒めた。狂気のシーンに白黒の光と影の陰影。すごいな。めちゃ好みやん。
 
朝比奈(田宮二郎)の恋人昌子を演じる叶順子(かのうじゅんこ)という女優さんは「黒の報告書」でもかなめの役。グラマラスで退廃的ふてくされているようで冷静に真実を見抜く目を持っている。そうやね、伊佐山ひろ子を美人にしたような人。10年くらい大映の女優してはって結婚で引退しはったらしい。惜しい。
おすすめ度★★★★1/2
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黒の報告書

1963年 日本 大映東京
監督 増村保造(「好色一代男」 「妻は告白する」 「卍」 「この子の七つのお祝に」)
原作 佐賀潜(江戸川乱歩賞「華やかな死体」)
脚本 石松愛弘
撮影 中川芳久
音楽 池野成
出演 宇津井健(城戸検事)/叶順子(片岡綾子)/神山繁(人見)/殿山泰司(津田刑事)/小沢栄太郎(山村弁護士)/高松英郎/見明凡太郎(柿本センタロウ「晩菊」)/上田吉二郎
メモ 2003.7.21 レンタルビデオ
あらすじ
午前一時、食品会社の社長の死体を帰宅した息子が発見する。午前二時、発見場所の居間は警察と検察と鑑識でごったがえしている。第一発見者の息子とばあやから事情を聞き終えた頃、庭のフランス窓から夫人が午前様で帰ってきた。友達の家に長居をしてしまったと言う話だ。
演出家をしている息子は後妻の継母みゆきは浮気をしているというし、秘書の綾子は社長のお手つきだし、後妻のみゆきは元秘書の人見とやっぱり浮気をしているみだいだし、社長は会社の金で人見を通じて高利貸しをしているし(浮貸しというらしい)、なんだか金と欲でドロドロした一家だ。その晩社長の家を訪れた秘書の綾子と経理部長の証言から人見が容疑者らしいと城戸検事はめっこをつける。凶器の花瓶から指紋も出たことだし証言も物証も問題ない。人見をひっぱるがこれがしぶとかった。
感想
大映で11作つくられた「黒」シリーズの第二作。
秘書の綾子を信じ過ぎたために大やけどをおい「検事が人間を信じちゃいけない(女は化け物だ)」と学習した城戸検事。しかしラストには「また人間を信じそうだよ。」と言う。そお? えええのお? 片岡綾子は意地と復讐から相打ちの覚悟やねんよ。正義に目覚めた訳ちゃうねんよ。片岡を信じていいの?(なんの話だ)。
 
殺された柿本社長は女好きだったせいかえげつない商売をしてきたせいか、身内にも部下にもまったく好かれちゃいない。寄生虫だった息子も嫁も、世話になった部下の専務も元秘書も社長の死を悼むどころか「死んだ奴は死んだ奴さ」とばかりに金・金・金の亡者。若い秘書さえ芋タコ南瓜芝居コンニャクそしてマネーなのだった。殺伐としている。恐ろしい。対して若い検事に老刑事は「あんたは息子のようなもんだ。」と足を棒にして力になろうとする。この老刑事役の殿山泰司さん、すばらしいよ。目撃者探しをしていて夜更けまで一軒一軒尋ねてまわって、ある家で「なんかあるな」と思ったら「お水一杯いただけませんか」と間をもたす。その家のおかみさんが同情して「あんた話したら」ってダンナさんに言うの。名場面だ。鉄壁と思われていた証拠がひとつの偽証を始まりにもろくも崩れていく法廷物でありながら、「人の幸せってなんやろな」と思わす映画なのだ。にくたらしい老獪な弁護士役の小沢栄太郎さんもいいよ。この弁護士は迷いがないの。信念を持っている。信念を持った人間が人類のためになるかどうかはまた話が別というのがよくわかる。そういや昔々、田原総一朗さんが「小沢一郎は信念の政治家だ。(だから危険なんだ)」とか言ってはったなあ。
おすすめ度★★★1/2
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マイ・ビッグ・ファット・ウエディング MY BIG FAT GREEK WEDDING

米国 2003年 96分
監督 ジョエル・ズウィック
脚本 ニア・ヴァルダロス
製作 リタ・ウィルソン/トム・ハンクス/ゲイリー・ゲッツマン
撮影 ジャフリー・ジュア
音楽 クリス・ウィルソン/アレクサンダー・ジャンコー
出演 ニア・ヴァルダロス(トゥーラ・ポルトカロス)/ジョン・コーベット(イアン・ミラー)/マイケル・コンスタンティン(ガス・ポルトカロス)/レイニー・カザン(マリア・ポルトカロス)/アンドレア・マーティン(叔母ウーラ)/ルイス・マンディロー(ニック・ポルトカロス)
メモ 2003.7.20 道頓堀角座
あらすじ
30歳になる冴えないトゥーラは家族が経営するギリシア料理店「ダンシング・ゾルバ」で働いている。昨日も今日も明日も同じ日の繰り返しだ。この30年間ギリシャ系の一族とも他のアメリカ人ともなじめない日々だった。何故なんだろう。死ぬまでこんな日が続くのかと嘆いていた所にひとりの男が天から舞い降りてくる。一目惚れするトゥーラ。しかし完璧な彼の唯一のそして最大の欠点はギリシア人ではない事だった。
感想
低予算ながら全米大ヒットと評判よく期待が大きかったがいささか肩すかし。マイノリティな文化と頑固親父、結婚騒動という所が一緒の「ベッカムに恋して」の方が笑えた。思うに日本語訳がいまいちだったのではないかという根も葉もない大きな疑いがある。爆笑したいのに出来ないのだ。「あんなカッコイイその上性格もいい男が手つかずで残っているかい? ほんまかい?」という面白い話なのに。ちなみに手つかずのお宝男は「ディナーラッシュ」のバーで飲んでいたビジネスマンだった。そうあの要の男で英国系白人の代表みたいに色白だった人。贅沢に文句言ってますがガンバレば道は開かれるっていう明るくて気持ちがいい映画なの。あったらいいなあっていう夢物語なの。皮肉な言い方してますが、家族を大事にしようっていうメッセージも強いの。これは年のせいか身にしみるな。
 
「ギリシア系の映画俳優」というとぱっと思い浮かぶのは「刑事コジャック」のテリー・サバラスとスタグロス刑事役だった弟(デモステネスだったか?)。「日曜はダメよ」 「トプカピ」のギリシャの名華メリナ・メルクーリそしてオリンピア・デュカキス。オリンピア・デュカキスは映画「マグノリアの花たち」で娘を亡くして世の理不尽に憤って誰かを殴りたいとわめいているサリー・フィールドに「(これ)殴って」とシャーリー・マクレーンを差し出した人ね。デュカキスって米国の政治家の従兄弟かだったな。確か。
そうそう、トゥーラの叔母ウーラ役のアンドレア・マーティンって俳優さんは「ヘドウィッグ・アンド・アングリー・インチ」のマネージャー役であるとともに、「フロッグ・プリンス(プリンス・チャーミング)」でマーティン・ショートと恋に落ちる侍女だったかの人。そしてママ・マリア役のレイニー・カザンは「ビッグ・ヒット」でマーク・ウォルバーグの婚約者クリスティナ・アップルゲイトのママだった人。どっかで見たなあーという人達ばっかで楽しめたよー。
 
おすすめ度★★★1/2
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ショウタイム SHOWTIME

米国 2002年 95分 ワーナーブラザーズ
監督 トム・デイ
脚本 キース・シャロン/アルフレッド・ガフ/マイルズ・ミラー
撮影 トーマス・クロス
音楽 アラン・シルベストリ
出演 ロバート・デニーロ(ミッチ)/エディー・マーフィー(トレイ)/レネ・ルッソ(チェイス・レンジー)/フランキー・R・フェイズン(ウィンシップ警部)/ウィリアム・シャトナー /ドレナ・デニーロ/ペドロ・ダミアン/モスデフ
メモ 2003.7.18 サンケイホール試写会
あらすじ
制服警官をしながら演技の学校に通いアクションスターになるのが夢なんだ。俺トレイ(エディ・マーフィー)はチャンスを掴みかけている。犯人追跡中にTVカメラマンのカメラを粉々にした刑事ミッチにTV局から警察物ドキュメンタリの話が来ていて相棒を募集している。行け行けどんどんで売り込みに成功したがミッチの演技ったらなっちゃいない。へたな上にやる気ゼロ。強面刑事だが非番の時にゃ陶芸しているんだと。おじんくさ。
感想
B’zの曲ではなく肩のこらない相棒映画。スターふたりの余裕の演技と見るか、遠慮しあっている結果のぬるさ加減とみるかはスターふたりへ何を期待していたかによる。さぼてんは刑事物好きですから水と油のスターが出ている異色物としてマル。TVという媒体の軽さ加減を揶揄しているのを逆手にとった軽い映画。
楽しめる所は4つある。ひとつ目はカーアクション。これはなかなか。二つ目はエディ・マーフィーが名優ロバート・デニーロに演技指導をする所。みっつ目はTVプロデューサ役のレネ・ルッソ。何を食べているのかパワー溢れる元気さで。いささかお疲れ気味のさぼてんに分けてほしい。ほんと。黒髪のアシスタント役のドレナ・デニーロはロバート・デニーロの娘さん。よっつ目に真打ち登場は「宇宙大作戦(スタートレック)」のカーク船長ウィリアム・シャトナー。いつもどおりのあのアクション2発。眉を上げる練習とかしてね。デニーロの事を「(いままで見たことないほどの)ダイコン」(とか)いう所が楽しい。この人もダイコンって言われていたよな。愛されるキャラだ。
 
銃火器の品評会で「ここにいる!」と悪人を指さしたのがハリー・ディーン・スタントンに見えた。寄る年波で目が霞んだんであろうか。
おすすめ度★★★
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殺意の夏 L’ETE MEURTRIER

仏 1983年 134分
監督 ジャン・ベッケル
原作・脚本 セバスチャン・ジャプリゾ(セザール賞脚本賞)
撮影 エチエンヌ・ベッケル/ジャック・ドロー
音楽 ジョルジュ・ドルリュー
出演 イザベル・アジャーニ(エル・セザール賞主演女優賞)/アラン・スーション(パン・ボン)/シュザンヌ・フロン/フランソワ・クリュゼ
メモ 2003.7.12 レンタルVHS
あらすじ
仏蘭西の片田舎で車の整備工をしているパン・ポン(フロリモン)は母と叔母、年の近い弟と13才離れた弟と5人で暮らしている。村の消防士もしている優しいお兄ちゃんだ。優しくておとなしいがそこはイタリアとフランスの血が混じっているもんで映画館主の妻とのあわただしいアバンチュールもかかさない。ところが心奪われる女が現れる。村の奥からダム工事のために引っ越してきたエリアーヌ(エル)。19才の彼女と30才の自分とは年が離れているが目が釘付け。彼女が他の男と寝ていると聞くといたたまれない。
感想
セバスチャン・ジャプリゾが気になってレンタル。セバスチャン・ジャプリゾは「雨の訪問者」の脚本、「寝台車の女」、「シンデレラの罠」の作家。ジャン・ベッケル監督は「穴」 「幸福の設計」 「モンパルナスの灯」のジャック・ベッケル監督の息子さんらしい。パン・ボン役のアラン・スーションって方はシャンソン歌手みたい。
 
ねたばれあります。
秘密が大好きで後生大事に抱え込んだり、言うべき人にしゃべらず(敵を討ったと言えばいいやん)、言うべきでない人にしゃべったり(なんで子供に話すんだろう)、思い込みやその場の感情で行動したり、その気がありそななさそなと誤解が誤解を生む事をややこしくする名人のフランス人らしい展開でミステリファン必見。
前半は何故エルがパン・ポンのような冴えない男と一緒にいるんだろうと何を考えているのか訳わからず退屈しそうな所を、おしげもなくさらすイザベル・アジャーニのお肌とモンローウォークも真っ青のお尻フリフリで興味をつなぐ。当時イザベル・アジャーニは29歳。それが19歳の役って・・・。とてもそうは見えない。ベビードールの衣装のせいか時には16、7歳に見える(**)。後半はベールをはがされていく謎がサスペンスフル。それでも材木屋のオヤジがイザベル・アジャーニの胸を撫で回すところはえろっぽさ満点。不安で叫びそうになる恐ろしくてかわいそうな話なのだ。それでも好きになったんだからしかたがない恨んではいない今も愛しているというフランス男のいさぎよい諦めがいいな。
おすすめ度★★★★
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メラニーは行く! SWEET HOME ALABAMA

米国 2002年 109分
監督 アンディ・テナント(「エバー・アフター」「アンナと王様」)
脚本 C・ジェイ・コックス
原案 ダグラス・J・エポック
音楽 ジョージ・フェントン
撮影 アンドリュー・ダン
出演 リース・ウィザースプーン(主人公メラニー)/ダコタ・ファニング(小メラニー「アイ・アム・サム」)/ジョシュ・ルーカス(夫ジェイク)/パトリック・デンプシー(恋人アンドリュー)/キャンディス・バーゲン(市長ケイト)/メアリー・ケイ・プレイス(母パール)/フレッド・ウォード(父アール)/ ジーン・スマート(ジェイクの母ステラ・ケイ)/イーサン・エンブリ(幼なじみのボビー)
メモ 2003.7.5 梅田ブルク7
あらすじ
新進ファッション・デザイナーのメラニーはニューヨークでの成功目前。私生活も大富豪の恋人アンドリューと熱々。ファッションショーの終わった夜、とうとうアンドリューから求婚される。それも5番街のティファニーを借りきってのプロポーズ。お姫様のようだ。ティファニーを丸ごと買ってくれたわけではなく、プレゼントされた指輪はたった一個だけだったがそんな事はどうでもいいのよ。気持ちが嬉しいのよ。7年前に故郷のディープサウスを後にしてとうとうここまで来た。
ただし魚の骨のようにひっかかっている問題がひとつだけある。片づけなきゃいけないものは縦約180センチ、幅約50センチの大きさ。つまり故郷アラバマに残してきた夫。しばらく秘密にする筈の婚約をすっぱぬかれたメラニーは故郷に文字どおり飛んで帰る。離婚届けを手に持って。早く片づけなきゃー。
感想
ふーん。そうか、深層心理の話だったのか。うっかり忘れた訳ではなく心の底では望んでいたって訳なのか。なるほど。
あまりにもメラニーのえじきがかわいそうで「どこへなと行ってまえ!」と言いそうですが、あの場で決心できるなんてなかなかできませんよ、普通の神経をもった人間には。すごいやつ>メラニー。周りの人間の気持ちなんざ考えていた日にゃアタシはシアワセにはなれないのよ、が幸せならみんなも幸せなのよ、が不幸ならあなたも不幸になるから別れた方がいいのよ。・・・・・納得できるかどうかはともかくなかなかの理屈ですな。現代版スカーレット・オハラ物語と思えば痛快だ。
 
リース・ウィザースプーン出演の映画はこれで6作目かな。「みんな愛している(1993)」は覚えていない。赤ずきんちゃんの映画「連鎖犯罪−逃げられない女−(1996)」、 「カラー・オブ・ハート(1998)」、 「ハイスクール白書−優等生ギャルに気をつけろ!(1999)」、 「完全犯罪(1999)」。「キューティ・ブロンド」は見ていない。今回は今までより難しい役だ。上昇志向の強いきかん気に器の大きなふたりの王子様はぞっこん。なんでだろー。7年間音信不通の酔っぱらいを故郷の幼なじみ達は大きな気持ちで受け入れる。なんでだろー。N.Y.の個性的なデザイナー仲間ともうまくいっている。ライバルなのになんでだろー。こんなのアリ? 唯一の軋轢は母親。ところがこれも何故なんだかイマイチわからんのよー。そのわからん話をキュートなリース・ウィザースプーンが力業で納得させようとしている。
おすすめ度★★★
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