岐路のパキスタン〜ラホール(旧市街)
 
Lahore(Old City)
 
 
ラホール(旧市街)
 

  ムガール帝国の首都として栄華を誇ったラホール。赤砂岩を主体としたインド・イスラム建築とイギリス植民地時代のコロニアル様式が、通りを彩る街路樹の緑に映え、「Lahore is Lahore(ラホールのように美しいのはラホールだけ)」とまで言われる景観を造り出しています。  

 
バドシャヒ・モスク
 


       
 
街のシンボル
17世紀から街の中心部に座り続けるラホールのランドマーク。バドシャヒとは「皇帝」の意味。パキスタンの人々にとってここは皇居のようなものなんですね。
 
門楼
これぞムガール建築という赤砂岩とチャトリ(小楼)はタージ・マハルにそっくり。赤砂岩はパキスタンでは産出せず、わざわざインドのラジャスタンから運んできたそうです。
 
ドーム
赤砂岩の建物に載る白大理石の三つのドーム。美しいコントラストです。壮大でありながら華美にならず、宗教施設らしい落ち着きを醸し出しています。
 

   
9万人の中庭
門楼をくぐるとだだっ広い中庭が現れます。「世界最大」の称号こそイスラマバードのシャー・ファイサル・モスクに奪われたものの、依然として存在感は際立っています。礼拝用に設けられたこの空間には9万人が収容できるといい、端から端まで行くのは一苦労。もちろん靴を脱いで入ります。
   

   
礼拝の間
モスク本体の礼拝の間は、壁から天井まで一面に施されたシンプルな幾何学模様の装飾ともあいまって、静かで落ち着いた空間を演出しています。異教徒である私たちも身を正さずにはいられません。厳かというか、清々しささえ感じます。やっぱり祈りの場はこうでなくちゃ。
   

   
光の装飾
ここでは建物に差し込む光さえ装飾の一部となります。ふと立ち止まった空間には、ただでさえ神聖な雰囲気に加え、神への畏怖すら思い起こさせるほど見事なコントラストがありました。計算していたのか偶然か、造った人に訊いてみたいですね。
   
シンメトリー
イスラム建築はよく左右対称を重んじたデザインをしますが、その思想はここでも活かされています。永遠に続くかのような回廊に佇んでいると、完全な世界があるとしたら、そこではあらゆるものが対称の位置にあるのでは、という気になってきます。
   

 
ラホール・フォート
 


       
 
赤砂岩じゃない
バドシャヒ・モスクと向かい合うラホール城。威容を誇るその門は当然ムガールの伝統に従って赤砂岩のはず、と思いきや、ただの漆喰造り。これじゃハリボテじゃないの。
 
通路
門をくぐると壁に囲まれた小道を進みます。ラホール城は歴代のムガール皇帝の居城でした。皇帝ごとの趣味の違いを見られるのが面白いところです。
 
アクバルの間
主が変わるに従い次々と増築を行われ、規模が拡大されてきました。ここは最初に造られたアクバル帝の謁見の間。さすがに敷地の一番良い場所にあります。
 

       
 
ジャハーンギールの間
こちらの作者は第四代ジャハーンギール。建物に比べて前庭が異様に大きいのが特徴です。彼は建築より造園に興味があったんでしょうね。
 
シャー・ジャハーンの間
アクバルやジャハーンギールに比べて小さな建物です。だんだん敷地もなくなってきたんでしょう。しかし、小さいからといって侮ってはいけません。
 
格子窓
細工の入った窓から眺める外界。この光景にピンと来た人はかなりのインド通です。そう、シャー・ジャハーンが幽閉されたアーグラ城と同じですね。
 

   
カラオケルーム
というわけで、世界三大奇人のひとり(というか、この人の他にあと誰がいるんだ?)シャー・ジャハーン帝の部屋は、壁一面に鏡細工を貼り詰め、ミラーボールのような効果を生むように工夫されています。こういうものを作ろうという感覚自体が、既に正気の沙汰とは思えません。
   

   
象嵌細工
シャー・ジャハーンの間では、天井に至るまで細かな象嵌細工が施されています。普段暮らしているときに誰がここまで見るんだ? しかし、本当のお洒落とは見えないところにするものだという説もありますからね。彼らしいといえば彼らしい。
   
イスラム風
城の出口の壁には、ムガール調というよりイランあたりで見かけそうな、イスラム風の装飾が施されていました。当時の色が今も鮮やかに残っているのが嬉しいですね。砂岩の赤など素材の色を生かすムガール建築にしては、かなり珍しいことなのでは?
   

       
 
反イスラム?
装飾に近づいてみました。幾何学模様なのかと思いきや、象や馬とそれに乗った人などが描かれており、かなり写実的。イスラムって偶像崇拝厳禁なんじゃなかったっけ?
 
外庭
城壁の外側には緩衝地帯のように芝生の庭が広がっていました。日本なら堀を巡らすところですね。いや、当時は実際に水を張っていたのかもしれないな。
 
完成
ラホール・フォートから見るバドシャヒ・モスク。しかし、この美しい光景を見ることができたのは、モスクの建設者である第六代アウラングゼーブだけでした。
 

 
街角の風景から
 


       
 
ミナリ・パキスタン
独立を記念して建てられたミナリ・パキスタン(パキスタン塔)。国内で唯一の独立記念塔をわざわざ置いたという事実が、この街の重要性を何よりも象徴していますね。
 
中古車
日本の中古車も多く輸入されています。しかもボディには「弘英ゴム株式会社」と電話番号がペイントされたまま。乗っている人は書かれてある意味をわかってるんでしょうか。
 
ダルガー
パキスタン特有の建物のひとつにダルガー(聖者廟)があります。モスクに似ていますが、よく見るとちょっと違うんですね、これが。イスラム教のカスタマイズでしょうか。
 


   

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