何 を 話 そ う か

12月号


キリスト誕生秘話

 
 いよいよ今年もあとわずか。街にはジングルベルが流れ始めます。今回はクリスマスにちなんで,イエス・キリストの誕生にまつわるお話をしましょう。
 聖書は東方の博士たちが西空に突然出現した星を見てイエスの誕生を知り、はるばるその星を追いかけてきたとしています。われわれ星見人にとってこの突然出現した星の正体が気になるところです。
 中世イタリアの画家ジオットはこの星を彗星として描いています。1301年のハレー彗星を見てモデルにしたのでしょう。しかし、現在確認されている周期彗星にはイエス誕生時に接近したものはありません。
 紀元前7年9月から12月下旬には土星と木星が接近し一時は見かけ上一つにさえなり、きわめて明るく日没後すぐの西空に大きく輝いて見えたはずです。これだとイエスの誕生年が七年ずれてしまいします。でもクリスマスの行事は最初西暦200年頃から5月20日に行われはじめ、今のように12月25日に祝うようになったのはそれから百年後、冬至のお祭りと融合してからです。しかしこの時期は雨季に当たっており導きの星の出現は不自然。
 いずれにしても西暦年は後代になってから制定されたもので,正確にイエスの誕生を意味するものではありません。東方の博士たちがはるばる旅を続けて来たのなら,一度きり地球に大接近した彗星と考えたほうが良いのかも。
Photo: 2005年のはじめに昴に大接近したマック・ホルツ彗星)