何 を 話 そ う か

10月号


老人星カノープス

 
カノープスという星はシリウスにつぐ全天で二番目に明るい星ですが,高度が低く条件がそろわないと日本ではめったに見ることができません。高度が低いと大気の影響を大きく受け赤く揺らめいて見えます。海難に遭った人の魂がめらめらと燃えていて,この星が見えるときは海が時化ると言われ、まさに“めら星”と呼ばれています。
 全国に“めら”と名のつく土地は5箇所。布良、米良、和布、妻良,女良(現在はない)と様々に表記されています。もうお気づきでしょうか。大ヒットした宮崎アニメ『もののけ姫』の主題歌を歌った米良美一氏、パンフレットによると氏の出身は宮崎県とのこと。きっと米良川の辺りなのでしょう。(その後、上布良、西米良などの地名も上記の土地の付近に散在していることが分かりました)
 茨城県内にはカノープスにまつわる面白い話が伝わっていて、西春という坊さんが入定(仏になるために生き埋めになる)して,あるいはある坊さんが村人たちのリンチで死んでその魂がこの星になったというのです。このような陰惨な話とは逆に、赤く見えるため年老いた星に見られて、中国では七福神の寿老人の化身と考えられています。日本でも西暦9百年に見られたときはおめでたいこととして年号を延喜と改めたほどです。
 この星を見ると長生きできるそうです。
Photo:地平線すれすれのカノープス(右下)福島県滝根町星の村天文台 撮影=大野裕明氏)