実行列の加法・スカラー乗法 ― トピック一覧   [数学についてのwebノート]

定義:実行列の和/実行列のスカラー倍/−A/実行列の差 
定理:実行列の加法の性質/実行列のスカラー乗法の性質


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定義:実行列の和

定義

実行列ABは、
 AB型が一致する場合に限り、
 対応する成分の 「実数体Rに 定義されている」を成分とする行列として定義される。
・つまり、A, Bともに m×n行 列であるならば、
 AB 
  実行列の和の定義1
   実行列の和の定義2
 と定義される。
 なお、aij,bij実数で あり、
 最終式の行列内の"+"は、実数体Rに 定義されている加法を指 す。 
・上記定義を略記すると、 m×n行列A=(aij), B=(bij)にたいして、AB =(aijbij) 

[文献]
岩波数学辞典』83行列B (pp.219-220);
永田『理系のための線形代数の基礎』1.4(p.24);
斎藤『線形代数入門』2章§1(p.32);
藤原『線形代数』2.1(p.22)




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 定義:実行列のスカラー倍
定義
kRによる、実行列A スカラー倍スカラー積 kA とは、  
  Aの各成分の 「実数体Rに 定義されている乗法」に よるk倍を成分とする実行列のこと。  
・つまり、 
  kA    
    実行列のスカラー倍定義1
    実行列のスカラー倍定義2
 と定義される。
 なお、
  aij実数で あり、
 最終式の行列内のkaijは、
 「実数体Rに 定義されている乗法」に よるkaijと の積を指す。
・上記定義を略記すると、kR, A=(aij)にたいして、kA=(kaij) 


[文献]
岩波数学辞典』83行列B(pp.219-220);
永田『理系のための線形代数の基礎』1.4(p.24);
斎藤『線形代数入門』2 章§1(p.32);
藤原『線形代数』2.1(p.22)
設定 以上の定義がなされるのは、下記の舞台設定上。
R実数をすべて集めた集合実数体) 
k実数   (実数体Rの)  
A実行列


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定義:−A
定義
・「A」 とは、(−1)R実行列Aとのスカラー積のこと。
・つまり、
 −A(−1)A
    実行列のマイナス定義1
    実行列のマイナス定義2  ∵スカラー積の定義  
    実行列のマイナス定義3     ∵実数の積と符号の性質  



[文献]
・藤原『線形代数』2.1(p.23);『高等学校代数幾何』(p.79)
設定 以上の定義がなされるのは、下記の舞台設定上。
R実数をすべて集めた集合実数体) 
k実数   (実数体Rの
A実行列


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定義:実行列の差 
定義
実行列A実行列Bの差(AB)とは、A(B)のこと。   
・つまり、AB型が一致する場合に限り、ABA(−1)Bと定義される。
  A,Bともにm×n行列であるならば、
 AB
 実行列の差定義1
 実行列の差定義2
 実行列の差定義3  ∵行列のスカラー積の定義  
 実行列の差定義4      ∵実数体における積と符号の性質 
 実行列の差定義5   ∵行列の和の定義 


[文献]
・藤原『線形代数』2.1(p.23);『高等学校代数幾何』(p.79)

設定 以上の定義がなされるのは、下記の舞台設定上。
R実数をすべて集めた集合実数体) 
A,B実行列


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定理:実行列の加法の性質
定理
1:可換則
 同じ型の任意の実行列A,B,Cについて、行列の加法+は、
    A+BB+A
 を満たす。
2:結合則  
 同じ型の任意の実行列A,B,Cについて、行列の加法+は、
     (A+B)+C A+(B+C)
 を満たす。   
3:零行列との  
 任意の実行列Aと、同じ型の零行列Oとの間で、
    A+O O+AA  
 が成り立つ。 
4:   
 任意の行列Aと、同じ型の零行列Oとの間で、 
   A(A)(A)AO    
 が成り立つ。
[文献]
・『岩波数学辞典』83行列B(pp.219-220);
・斎藤『線形代数入門』2章§1(p.33);
・藤原『線形代数』2.1(p.23);
・『高等学校代数幾何』(p.79);]

設定 以上の定理は、下記の舞台設定上で成り立つ。
R実数をすべて集めた集合実数体) 
A,B実行列


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定理:実行列のスカラー乗法の性質
定理 1:  
 任意の実行列Aと、実数体R上で定義された乗法の単位元"1" との、スカラー積1Aは、A等しい。 
   つまり、 1AA 
2:結合則 
 任意の実行列Aと、任意a,bRについて、
  「実数体R上で定義されたab」とAとのスカラー積(ab)Aは、
      aと「bAとのスカラー積bA」とのスカラー積a(bA)に等しい。    
 つまり、任意の実行列Aと、任意a,bRに対して、(ab)Aa(bA)    
3:実行列に関する分配則  
 同じ型の任意の実行列A,Bと、任意aR について、
   aと「ABとの」とのスカラー積a(A+B)は、
      「aAとのスカラー積aA」と「aBとのスカラー積aB」との等しい。 
 つまり、同じ型の任意の実行列A,Bと、任意aR について、a(A+B)aA+aB   
4:スカラーに関する分配則  
 任意の実行列Aと、任意a,bR について、
  「実数体R上で定義されたa+b」とAとのスカラー積(a+b)Aは、
     「aAとのスカラー積aA」と「bAとのスカラー積bA」との等しい。 
 つまり、任意の実行列Aと、任意a,bR について、(a+b)AaA+bA  

[文献]
・斎藤『線形代数入門』2章§1(p.33);
・藤原『線形代数』2.1(p.23);
・『高等学校代数幾何』(p.79);

設定 以上の定理は、下記の舞台設定上で成り立つ。
R実数をすべて集めた集合実数体) 
A,B実行列


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