→「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」−内容 →「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」−証明 →実数の公理における「コーシーの収束条件」の位置 →実数の公理における「コーシーの収束条件」の位置の証明 →[トピック一覧:数列の極限の性質] →総目次 |
直感的な定義・「数列 { an } はコーシー列 である」「数列 { an } は基本列である」とは、 数列 { an } の「項の番号」nが大きくなるにつれて、 数列 { an } の各項が次第に密集していくことをいう。[→志賀] 厳密な定義の主旨 |
※概念「コーシー列」の活用上の意義 「数列{an}がaに収束する」という条件は、(1){an}は収束する、(2)その極限値はaで ある、という二つの部分に分けられるが、 (2)の極限値を求めることが面倒な数列について、とりあえず、 (1)の収束だけを示したいときがある。 そんなとき、(2)極限値を表に出さずに数列の収束のみを示せる条件があると便利。 それが、「コーシー列」。 「コーシー列」であることは、数列が収束する必要十分条件だが、極限値についてまったく触れないですむ。 ※概念「コーシー列」の理論上の意義 コーシーの収束条件とアルキメデスの原理をあわせると、実数の連続性公理と同値となる。つまり、コーシーの収束条件は、「実数の定義」の本質的要素の一表現。 |
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・「数列 { an } はコーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an } は基本列 fundamental sequence である」とは、 「数列{an}の項どおしの距離の目標」εをどのような『正の実数値』に指定しようとも、 その「項どおしの距離の目標」εに応じて、数列{an}のはじめの有限N個の項を選んで、これを無視することにすれば、 「(N+1)番目の項」に後続する任意の二項間の実際の距離を、「項どおしの距離の目標」ε以下に収めることができる ということ。 [笠原『微分積分学』;『岩波数学辞典』] |
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厳密な定義の正確な表現・「数列 { an } はコーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an }は基本列 fundamental sequence である」 とは、 数列 { an } において、 任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、 (つまり、εを1でも、0.1でも、0.00…001まで狭めても) ある(十分大きな)自然数Nが存在して、 「 m,n≧Nならば、 | am−an |<ε 」 すなわち、「 m,n≧Nならば、 −ε< am−an<+ε 」 を満たす ということ。 論理記号で表すと、 (∀ε>0) (∃N∈N) (∀m,n∈N) ( m,n≧N⇒ | am−an |<ε) 記号・「数列 { an } はコーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an }は基本列 fundamental sequence である」 ということを、 以下の記号で表すことがある。
am − an → 0 (m,n→∞) [→吹田・新保] |
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「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」−内容・数列 { an }が収束するための必要十分条件は、 数列 { an }がコーシー列であること。 つまり、 ・命題P「実数の数列 { an }は収束列」⇒命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」 ・命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 がともに成立する。 ・「実数体Rはコーシー完備である」とは、 実数体Rの性質として、 命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 が成り立つという事実を指す。[→斎藤]。 ※命題P「実数の数列 { an }は収束列」⇒命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」 が成立すると言えるのは、なぜ?→証明 ※命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 が成立すると言えるのは、なぜ?→証明 ※赤攝也『実数論講義』は、 命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 を「カントルの公理」と呼ぶが、これは一般的なのか? →実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置 →実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置の証明 | ※活用例:関数の極限についてのコーシーCauchyの判定法、
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→数列についての「コーシー列」の定義 →「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」−内容 →「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」−証明 →実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置 →実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置の証明 →[トピック一覧:数列の極限の性質] →総目次 |
【証明】命題P「実数の数列{an}は収束列」⇒命題Q「実数の数列{an}はコーシー列」an→α(n→∞)なら、anがコーシー列であることを示す。 an→α(n→∞)とは すなわち、 任意の(どんな小さな)ε>0に対して(でも)、 …@ | an −α|<ε/2 (n≧N ) …A を満たす自然数Nが存在する、 ということ。(収束の定義から) m,n≧N に対して | am −an |=| ( am −α)+(α−an )| ≦| am −α|+|α−an| ∵|x+y|≦|x|+|y| <ε/2+ε/2=ε ∵A つまり、任意の(どんな小さな)ε>0に対して(でも)、 ∵@ | am −an |<ε ( m,n≧N ) が成り立つ。 これは、コーシー列の定義そのもの。 ゆえに、数列 ![]() (吹田・新保『理工系の微分積分学』p.12.定理6) (神谷・浦井『経済学のための数学入門』pp.74-75.) |
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【証明】命題Q「実数の数列{an}はコーシー列」⇒命題P「実数の数列{an}は収束列」anをコーシー列であるとする。 定義よりすなわち、 任意の正数εに対して、ある番号Nをとると、 N以上のすべての自然数m,nについて、 |am −an|<ε ( m,n≧N ) が成り立つ。 …@ [コーシー列は有界] @よりN以上のすべての自然数nに対して、 |aN−an|<ε ( n≧Nを満たす任意のn ) が成り立つ。 ゆえに、 −ε<aN−an<ε aN−ε<an ,an<aN+ε ∴aN−ε<an<aN+ε つまり(aN +ε)は数列{ an| n≧N }の上界、 (aN −ε)は数列{ an| n≧N }の下界であって、 { an| n≧N }は有界。 { an }はこれに有限個(N−1)の要素を付け加えただけの集合なので、 (上界・下界は多少かわったにしても)やはり有界となる。 …A [コーシー列は収束部分列を含む] Aより、ボルツァノ・ワイエルストラス(Bolzano-Weierstrass)の定理が適用され、 有界な数列{ an }は収束部分列を含む。 この部分列を ![]() とし、αに収束するとする。 すなわち、 任意の(どんな小さな)ε>0に対して(でも)、 | ank −α|<ε/2 (nk≧N2 ) …B を満たす自然数N2が存在する、 ということ。(収束の定義から) @より、 任意の正数εに対して、ある番号N1をとると、 N1以上のすべての自然数m,nについて、 |am −an|<ε/2 ( m,n≧N1 ) が成り立つ。 …C max{ N1, N2}以上の任意のm, nkについて、 |am−α|=|am−ank+ank−α| (m, nk≧ max{ N1, N2 } ) ≦|am−ank|+|ank−α| (m, nk≧ max{ N1, N2} ) ∵絶対値の性質 |x+y|≦|x|+|y| <ε/2+ε/2=ε ∵BC つまり、任意の正数εに対して、BCから決まるmax{N1, N2}以上の任意のmについて、 |am−α|<ε ( m≧ max{N1, N2} ) 数列の収束の定義より、 { an }は「収束部分列の極限」αに収束するといえる。 |
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実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置s ・コーシー完備性とは、順序体において、 数列収束のための必要十分条件が、コーシー列の収束となっていることをいう。 実数体は、上記の通り、これが満たされた順序体であるので、 実数体は、コーシー完備である。 ・ ・・「『アルキメデス+コーシー収束条件』で、実数の連続性公理と同値となる。 |
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実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置の証明・コーシー完備性とは、順序体において、 数列収束のための必要十分条件が、コーシー列の収束となっていることをいう。 実数体は、上記の通り、これが満たされた順序体であるので、 実数体は、コーシー完備である。 ・ ・・「『アルキメデス+コーシー収束条件』で、実数の連続性公理と同値となる。 |
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