産声

浅賀 品子

平成16年2月15日(日曜日)朝からどんよりとした空模様だったが、さほどの寒さは感じなかった。
「大丈夫かなぁ。」「まだまだみたいよ。」夫と私はそんな会話を交わしながら、ウォーキングの会に参加する為に市内の緑化植物園へ向かった。

少し早めの昼食を済ませ、ぱらぱらと降りだした雨を避けて東屋で雑談していた時だった。
夫の携帯電話が鳴った。それは、病院へ向かっていると言う婿からだった。
まさか!そんな気配はなかったのに…。私は、平静さを装いながらも、胸の高鳴りを抑える事はできなかった。

車に乗り込むと、夫も窓を開けると、気持ちをおちつかせるかのようにゆっくりと煙草を吸い始めた。そんな夫をせかしながら病院へ…。
ところが、「夜中になりそうですね。」の言葉に帰宅。再度病院を訪れたのは22時近くだった。

婿が、笑顔でVサインをしながら分娩室へ入るところだった。祈りながら待ちわびていると、部屋の天井が突然騒がしくなってきた。
「もう少しですからね。頑張ってね。」の声。
分娩室の様子が流されてきたのだった。
聞き耳を立てる事数分。「おめでとうございます!10時28分です。元気な赤ちゃんですよ。」の声と同時に産声が部屋に響き渡った。