EU Observer 2017年5月2日
EUの除草剤の安全性証拠は モンサントにより書かれた ビンセント・ハームセン 情報源:EU Observer, 2 May 2017 EU weed-killer evidence 'written by Monsanto' By Vincent Harmsen https://euobserver.com/environment/137741 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2017年5月10日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_17/ 170502_EU_weed-killer_evidence_written_by_Monsanto.html
今年の初めに、アメリカの裁判で、モンサント社のラウンドアップという商標名で販売されているグリホサートに関する少なくとも二つの学術報告書への同社の関与を示す同社の多数の内部メールが開示された。 モンサントの従業員は開示されたeメールの中のひとつで、同社はグリホサートに関するある調査報告を書き、その後、その調査は大学研究者によるものであることにしたと告白した。 グリホサートに関するもう一つの調査は、もっと都合が良い結果を作り出すために、同社の科学者の支援を受けて、”改ざん”されたということを内部メールは示唆している。 EUobserver と OneWorld は、両方の調査は、EUの承認更新手続きの一部として 2015年に欧州食品安全機関(EFSA)がグリホサートの安全性を評価した時に、同機関により根拠とされたことを発見した。 カリフォルニア州の米連邦裁判所により3月13日に開封された文書は、同社の旗艦除草剤について疑問を提起した。 ”ラウンドアップががんを引き起こさないとは言えない”とモンサントの毒性学者ドナ・ファーマーは開示されたメールのひとつ、2009年9月29日付けのメールの中で書いている。オーストラリアにいる同僚に批判的な報道にいかに最善に対応するかに関して書いているファーマーは、同社はそれを証明するために必要な”発がん性調査”をしていないと述べている。 モンサントは、サンフランシスコの法廷でラウンドアップが稀ながんの一種である非ホジキンリンパ腫(訳注1)の原因であると主張する人々から約225件の訴訟を受けている。原告の大部分は、その除草剤を仕事で使用して病気になった農民、又は物故者の縁者である。 EUの協議がすぐに始まる 今年の末に失効するその除草剤の承認の更新についての討議がブリュッセルですぐに始まることが予想される。 4月14日の欧州経済社会委員会で演説をしたEUの農業委員フィル・ホーガンは、EUはその除草剤の10年間の再承認に合意するであろうと表明した。 2015年2月19日付けのeメールの中で、モンサントの製品安全部門の長であるウイリアム・ハイデンは、社内の科学者が調査報告書を書き、その報告書を独立の大学研究者が”少し編集”し、会社の関与を明らかにせずに”署名する”ことを提案している。彼はそれを”代作(ghostwriting)”と呼んでいる。 2015年に同社がその計画を実施したかどうかわからないが、ハイデンはそのメールの中で以前に使用した同様な戦術のことに言及している。”我々がウイリアムス、クロース及びムンロ・・・と、どのように付き合ったかを思い出そう”。 ウイリアムス、クロース及びムンロによる調査は、グリホサートとラウンドアップに関する多くの異なる研究のレビューであり、2000年に科学誌『Regulatory Toxicology and Pharmacology』に発表された。 ウイリアムスによるレビューはまた、ドイツ連邦リスク研究所(BfR)により書かれたある報告書の中で30回以上、参照されている。 ドイツはグリホサートのための”加盟国報告者”であり、 BfR は欧州食品安全機関(EFSA)に、評価報告書−除草剤に関する全ての科学的文献−を提供する責任があった。 BfR 報告書のひとつの章で、このドイツの機関は、活性成分グリホサートは”一般的に毒性学的懸念が低いと見なされている”と結論付けるために、参照源として、代作されたと伝えられる文献レビューを使用している。 有害健康という結果は軽視されている EFSA は、2015年11月に、 BfR によって提供された評価に基づき、グリホサートが人間にがんを引き起こすという十分な証拠はないと結論付けた。 EFSA によれば、グリホサートには遺伝毒性 (訳注:化学物質が直接的または間接的にDNAに変化を与える性質) がない、すなわち、それは生きた細胞にDNA ダメージを、そして潜在的に人間にがんを引き起こすであろう重要なメカニズムが欠如している。 EFSA のその結論は、二人とも当時モンサントのコンサルタントであったラリー・キエール博士とデービッド・カークランド教授によってなされた2013年の文献レビューにある程度依存していたことを、アメリカの裁判で明らかにされたeメールが示している。 EFSA のグリホサート評価の基礎作りをしたドイツの BfR による報告書の中で、その調査は証拠の重みの一部をなしていた。 ”グリホサート及びグリホサートに基づく製剤の遺伝毒性調査に関する新たな包括的なレビューがキエールとカークランドにより提出された”と、グリホサートの可能性ある遺伝毒性に関する全ての科学的証拠が重み付けられているある章の中で BfR は書いている。”著者らはグリホサート及びグリホサートに基づく製剤には遺伝毒性はない・・・と結論付けた”。 しかしモンサントのeメールは、この文献レビューのドラフト作成の過程で、有害健康影響を示した調査は軽視されたことを示唆している。 デービッド・カークランドが 2012年にモンサントと契約を結ぶより前に初期のレビュ−・ドラフトは、長年同社のコンサルタントであったラリー・キエールによってすでに論文になっていたことをeメールは示している。 ”不幸にも、その論文はそのように多くの遺伝毒性影響を報告する調査になった。その物語はそこに書かれているように信頼性を脅かすものであった”と、モンサントのハイデンは2012年7月13日のメールに書いている。 論文を’改ざん’する 遺伝毒性レビュー論文を”改ざんする”ための取組みがなされ、また”信頼性”を加えるために共著者として独立系科学者デービッド・カークランド教授を加えることをハイデンは同僚らに知らせた。 キエールとカークランドによる調査は、ジャーナル『Critical Reviews in Toxicology』に2013年に発表された。その主要な結論は、グリホサートとラウンドアップのような調剤製品は”有意な遺伝毒性のリスクをもたらさない”というものであった。 EFSA の報道担当官は EUobserver に対して、同機関はこのことについて既に調査していると告げた。”我々はモンサントの一連のeメールの中で言及されているレビュー論文のどれがEUのリスク評価で考慮されたかを特定した。それらは二つだけであり、それらの重要性を評価した”。 その報道担当官によれば、EFSA は主に、当初の調査に依存し、調査データを基にした。”科学的調査に関するこれら二つのレビューがEUのリスク評価に不適切に影響を及ぼしたと示唆する根拠はない”。 訳注1 ![]() 訳注:本件関連記事 ![]() 訳注:当研究会が紹介したモンサント関連記事
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