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シリーズ「先進国って何?」

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■ 動物ジャーナル90 2015 夏

先進国って何?(十四)

── 最終篇 中  道義的には「?」但し法的には問題なし

青島 啓子

おことわり
 前回この連載を終結させることをご説明して、終結のための最適材料としてBBCスコットランド支局制作のドキュメンタリー「The Dog Factory」が見つかったのでこれをご紹介する、長いので二回に分けると述べました。
 ところが、予定のテーマが二回では納まりきれない分量になることが判り、のめのめと前言をひるがえします。すなわち今回は、予告の「最終篇 下」を「最終篇 中」に変更、次回(15秋号)分を「最終篇 下」として終了させることにいたしました。よって「先進国って何?」は(十五)で完結となります。

今回とり上げる事柄の概要
 前回に引続き、番組後半を紹介し、その後、付随する問題を考察いたします。
 このドキュメンタリーを「最適材料」と考えた理由は、(1)仔犬繁殖の劣悪な環境・インターネットを縦横に活用する販売形態・結果として購入者の悲嘆を生み出す、という典型的図式を鋭く指摘・報告していること、(2)厳格な動物福祉関連法がありながら機能させ得ない現実を直視し、視聴者に考えることを促していること、の二点にあります。
 特に、動物に関する法律の無力・不甲斐なさを徹底的に追求した点で、従来の同種番組と大きく異なっています。このことが「最適材料」としての最大理由でありました。それをサマンサ女史の調査と報告に聞き、それから関連する事柄を補充して、読者諸兄姉に提供することを意図しました。
 今回は、番組紹介を終えた後、前回末尾の予告「1〜4」の内、1〜3を丁寧に見、「5 アイルランド共和国政府の動物愛護に対する取組み」を次回「最終篇 下」でまとめます。

番組のつづき

The Dog Factory の内容──前回分

 このドキュメンタリーの前回ご紹介分の内容とそれに関する補足説明を、念のためまとめておきます。
1. 英国領スコットランドで偽証明書(ワクチン履歴の)を付けた仔犬が売られている。
偽証明書を含め、証明書の類を一切付けないで販売するケースもある。

2. 市民が仔犬を購入するきっかけは、日本で淘汰されたものの、未だにドイツ同様、英国でも営業しているインターネット生体オークションである。

3. 販売される仔犬たちは生まれて以来、ワクチン接種せず、それ故正規証明書もなく、駆虫はおろか獣医師のケアも健康面の配慮もされていない状態で売られるため、購入後すぐさま看病・介護が必要となり、大体半年くらいしか共に暮すことが出来ない。

4. 仔犬に適切なケアを行わないのは利益優先のため。また法的に八週齢規制はあるが、業者からすれば、コストがかからない事が重要なので、若すぎる仔犬でもさっさと売ってしまう。

5. 販売される仔犬は、仕入れ単価が激安の北アイルランド(英国領)もしくはアイルランド共和国から、フェリーでノース海峡を渡り、車で運ばれる。なお、アイルランド共和国から正規手続を無視した移動は密輸となる。

6. スコットランド、北アイルランドでは、犬の繁殖販売について、細かい規定のある厳格な法律を施行。業者のライセンスは日本の五年よりずっと短い一年で更新と定められている。

7. 厳格な法律がありながら、劣悪な繁殖環境が存在し、そもそも繁殖・販売業に必要なライセンスさえ失効している若しくはライセンス不取得でも販売が出来る実例が紹介された。
ほぼこのようになるかと思います。

 読者諸兄姉には前号の「したたかな業者たち/短い命だった仔犬を思い出して歎く女性たち/頼もしい専門家の論評」などを思い起されたと思います。
 それと共に、取材者サマンサ・ポーリング女史(以下サマンサ女史)の冷静で情熱的な活動ぶりに喝采を送られたのではないでしょうか。
 筆者はと申せば、徹底した事前調査の上で目的にひたすら迫る手法は、番組スタッフの連携を得て大きな成果を上げますが、ご本人も変装その他で危地に乗り込む意気込みに圧倒されました。前号の解説によれば、これまで数多の巨悪に挑んできた女傑とのこと、けれども映像には可愛らしく無邪気な表情をたたえる人が現れます。そして時々きりっとなる眼は正義感むしろ義憤と言った方がよい鋭さで、私たちを引き込みもするようです。
 では、番組後半の紹介を。

北アイルランドで
 サマンサ女史は、スコットランドで売られている仔犬が北アイルランドから来ていることについて、更なる情報を得るべく、アルスター動物虐待防止協会(USPCA)(注1)代表スティーブン・フィルポット氏(以下USPCA代表)に接触します。
(注1)USPCA=アルスター動物虐待防止協会
The Ulster Society for the Prevention of Cruelty to Animals なお、この協会は「北アイルランドRSPCA」とか「ベルファストRSPCA」等と表されることがありますが、これは間違いです。アルスター動物虐待防止協会はRSPCAの支部ではなく、一八三六年に設立された独立した団体です。


 サマンサ女史の取材に対し、USPCA代表は北アイルランドの生体繁殖市場について、仔犬たちは生まれてから、概ね三〜六週齢で販売される利益追求のビジネスであるとコメントします。
 幼齢仔犬市場がビジネスであるのは英国では珍しいことでなく、ドイツでも同様の問題の根絶が出来ていないのですから、一見定番的なコメントと言えます。しかし、北アイルランド政府は二年前に犬の繁殖業者に関する法を改正しています。USPCA代表から見て、大規模生体ビジネスの現状は適切とは言いがたいとも述べました。
 サマンサ女史は、二年前に法改正をしたにも係わらず、なぜ不適切な問題が是正されていないのか、北アイルランド政府の法改正について調査を進めることにしました。

北アイルランド政府は法を改正・施行していた
 次の場面は北アイルランド議事堂(立派です。この中に政府もある)を空から撮影した映像。それに続き、同政府二〇一三年二月十八日付、犬の繁殖関連法改正に関する担当大臣発のアナウンス(注2)と、改正を審議した農業・農村開発委員会議事録(注3)と意見聴取ビデオなどを紹介しつつ、法が改正された経緯を分りやすく追っています。
 北アイルランド政府は犬の繁殖関連改正法を二〇一三年四月一日に施行しました。この改正に関する審議が始まったのは二〇一〇年。端的に言えば、この審議は、繁殖業の規制を強化しようとしたものです。
 この内容に対して、北アイルランドの犬繁殖業者有志でつくるCBI(Canine Breeders Ireland 会員六百名)は明確な根拠を基に異論を唱えつつ、同時に繁殖販売のライセンスは現状の有効期間一年ではなく、五年に緩和して欲しいと主張しました。
 この意見聴取は北アイルランド政府農業・農村開発委員会で行われ、意見聴取にCBI幹部三名が招かれたのは二〇一〇年十月十二日。
 番組は、この意見聴取ビデオの中から、CBIを代表して意見を述べるH氏の「私たちはパピー・ファームではなく、ライセンスを持ったブリーダーだ」との主張を紹介しています。
 また、委員のモロイ議員が「犬の繁殖と、牛や羊その他の動物の繁殖の違いは何か?」と問うとH氏は、「彼らは生きている動物であり、利益のため繁殖し、区別はない」とさらっと答えるシーンが一分程流されます。
 僅か一分ほどですが、H氏の心情をよく表しており番組の流れからすれば十分な長さとは思います。しかし、H氏の口調は自信に満ちており、或る意味強気で、発言内容の是非はともかく、この人はこのシーンにない場面では一体どのような発言をしているのか気になったので、この審議会の全議事録を調べた結果、興味深いやりとりが行れていました。(詳細は後述。30ページ参照)

(注2)番組に登場した犬の繁殖関連法改正に関するアナウンス(2013年2月18日)
北アイルランド政府ホームページ http://goo.gl/SgrBZF
(注3) 番組に登場した農業・農村開発委員会の議事録 
北アイルランド政府ホームページより
http://goo.gl/tn7BWO
A4で400ページにも及ぶ、北アイルランド議会・動物福祉法改正審議会最終報告書
http://goo.gl/G27EoS
法医学獣医師にきく
 番組が始まって四十数分、ラストに向けて、サマンサ女史はこのH氏が経営する犬の総頭数五百を超える大規模繁殖場に照準を合せていきます。
 この大規模繁殖場については、USPCA代表も従前からマークしていたということから、サマンサ女史は、同繁殖場に二〇〇七年から三年間かかわり、現在USPCAと懇親のある獣医師デビッド・ベイリー氏(以下ベイリー氏)に話を聞きます。
 ベイリー氏は、大規模繁殖場にいる犬の実頭数を経営者H氏に聞いた際、H氏が嫌がったこと、また、仔犬の死亡率が極めて高いことをH氏にメールで何度も上申したが、理解が得られなかった、と経緯を語りはじめます。
 さらに、施設内の状況が感染症で悪化した際、H氏は感染犬の薬剤殺処分を指示。これにベイリー氏が応じないと、今度は人道的対応を行う為だと拳銃で感染犬を処分する許可を警察(注4)に申請したなど、信じ難い状況が発生していたと吐露します。
(注4)北アイルランド警察(PSNI)銃器・爆発物部門

 なお、このシーンも、前回の女性獣医師へのインタビューと同様モザイク・音声加工一切なしで、ベイリー氏は個別事案に結びつく事象についてサマンサ女史のインタビューに答えています。
 番組では深く触れていませんが、ベイリー氏は食肉偽装等、食の安全を担当する元行政獣医師でありながら、動物虐待にも精通し、その証拠収集方法等を専門とする法医学獣医師(注5)です。
(注5)デビッド・ベイリー氏が主幹を務めるForensic Vet Ltd(法医学獣医師(株))
http://www.forensicvet.com/
 このサイトは非常に参考になるものですが、欧米ならではの虐待事案の解説写真がありますので閲覧にはご注意願います。

 こういうキャリアをもつベイリー氏なればこそ、H氏の大規模繁殖場に関する考察は一般の獣医師とは異なる法医学の視点に立つもので、サマンサ女史には大きな助勢と感じられたことでしょう。ベイリー氏の言葉を柱に、この大規模繁殖場に詳しい男性らのサポートを得つつ、その実態を映像に収めることにしました。

大規模繁殖場へ
 小雪がちらつく午前二時、ニット帽に手袋、防寒服を着込んだサマンサ女史らは、民家がほとんどない場所にある大規模繁殖場に到着、漆黒の夜空ゆえに撮影映像は暗視モードのモノクロですが、大規模繁殖場の状況を描ききっています。

 人の気配に気付いた多数の犬たちは大合唱のごとく吼えまくり、その耳を劈くばかりの大音響は凄まじいものです。過去に、この種の繁殖場を取上げた番組は英国やドイツ、米国、日本等にもありましたが、これほどの鳴き声、かつこれほど大規模の繁殖場の様子を伝えたものは見たことがありません。
 色々な犬種ごとに区切られた犬たち、そして給餌の手間を省くため、自動的にパイプラインでドライフードが送られる仕組が採り入れられ、ナレーショ

ンでは、この仕組は養鶏で問題視されたバタリー・ケージの給餌方法に酷似していると指摘しています。

 この映像も滅多に見ることができないと思われ、全てが想像を絶する大規模繁殖場ですが、肝心の仔犬の姿を見出すことができません。
(この辺りのサマンサ女史の説明はひそひそ声で、見ている方も緊張します。)
 そこで周りを見回したところ、野外に置かれたコンテナから微かな仔犬の鳴き声が…。鉄製の扉を開け、コンテナに入ると、案の定多数の仔犬を発見。
同様のコンテナが複数置かれていますが、どのコンテナにも母犬の姿はなく、「生後まもなく母仔は分離される」とのナレーションが入ります。
 母仔を最小限の期間しか共に暮させないことは、徹底した利益追求の場合の鉄則と見え、これはこの大規模繁殖場に限ったことではないので、「鉄則」と言い切っても暴論とはならないでしょう。

 この繁殖場の空撮地図。
 参考リンク
 http://goo.gl/6tSYUg
 いずれにしても、この現実はライセンスを有する繁殖場で起きており、白い息を見せながらリポートするサマンサ女史ですが、母犬から離され、身を寄せ合う仔犬たちの姿には流石にショックを隠しきれない様子。降り止まぬ小雪の舞う中、暗視モードゆえに目がキラキラ光って見える犬舎の成犬たちの視線を浴びながら、取材の人々は大規模繁殖場を後にします。

 続く場面は、サマンサ女史が、この大規模繁殖場の映像を専門家三名(注6)に見てもらい、意見を求めるシーンです。
 三人の専門家は、
?ノイズ(多数の犬の耳を劈くばかりの鳴き声)は、敏感な聴覚を持つ犬たちにとって好ましくない。
?手間を省くための自動給餌パイプラインを使うことで、人が犬舎に入る頻度が減り、犬たちが人と接触する機会も減り、犬の社会化上好ましくない。
?この大規模繁殖場は集中的な飼養形態をとっているが、畜産動物における同形態の標準的基準より低い基準で運用されている。このような繁殖場は見たことがない。
との見解を示します。
 これらの見解は、この番組の主張である「適切とは思えない繁殖販売者たちが、なぜ法に基づくライセンスを持っているのか」という疑問が「見当外れのものでない」ことを裏付けるものでした。
(注6)本稿前回紹介部分にも登場した三人の専門家。
ブリストル大学獣医学部人間動物関係学研究所
ジョン・ブラッドショー所長(動物行動学)
スコットランド動物虐待防止協会(SSPCA)
ハリー・ヘイワース理事長(同協会獣医療ディレクター)
アバディーン大学法学部
マイケル・ラドフォード准教授(動物福祉法)

反論──問題なし
 さて、深夜に自ら経営する繁殖場に立ち入られ、撮影までされてしまったH氏は、顧問弁護士を通して以下のようなコメントを出して真っ向から反論しています。
① H氏の繁殖場は関連法規に則り、営業している。
② 営業方針は透明かつ完全にオープンである。
③ 繁殖場の全ての犬たちは指名獣医師(注7)の監督により管理されている。
(注7)行政が犬の繁殖場や畜産農家等を監督するために任命する民間獣医師

 さらに、H氏にライセンスを与え、監督する行政(ファーマナ・オマー地区協議会)は、抜打ち検査を行った結果、「野外のコンテナに仔犬を閉じ込める状況はなく、施設や犬たちの状態は良好、よって法規に則っている」とコメント。つまり、ライセンスを与えていることに何ら問題がないという見解を示しました。番組の主張とは正反対の見解です。
 当会は、サマンサ女史らによって撮影された映像と、行政の抜打ち検査の報告内容との大きな相違を不審に思い、この〈抜打ち検査報告書〉を調べましたのでその詳細は後に述べます。(31ページ参照)
検査報告書(ペーパーE,D)フォーマナ・
オマー地区協議会環境委員会より
  http://goo.gl/oF5uNL
「野蛮!」の発言も
 不適切な者によって涙させられた市民と無慈悲な扱いをされる仔犬、そしてその背景について、番組では一時間枠のほとんどを使って報じてきました。
 先述の通り、繁殖者を管理する北アイルランド行政は、番組の主張に反して大きな問題がないとの見解を示しましたが、サマンサ女史は最後に、BBCスコットランド支局の地元であり、番組で紹介した被害者の住む地でもあるスコットランドを統括する同政府庁舎を訪れ、番組で報じた仔犬にまつわる現状を問いかけました。
 インタビューに応じたのはスコットランド政府のCVO(Chief Veterinary Officer=主任獣医官)のシェイラ・ヴォアス女史(以下ヴォアス女史)。
 このシーンは約一分二十秒ですが、サマンサ女史の問いに対して、ヴォアス女史は嫌悪感をもあらわに「野蛮で、生産ラインのように商品として動物を扱っている」と発言。サマンサ女史のバタリー・ファームか?との突込みにもYesと答えていました。異例とも言える所管外=北アイルランドの繁殖場問題についての発言は、主任獣医官として現状を知りつくすヴォアス女史の心情の反映でしょう。

The Dog Factory の結論
 番組の最後は、リポーター・サマンサ女史のコメントで締めくくられます。
「犬の販売者、ブリーダーと同等の責任が、犬の購入者にもある。購入者が適切に判断することによって、犬に無慈悲な者たちが利益を上げることが出来なくなる。」と。
 映像はコメントするサマンサ女史を追いつつ、時に仔犬、時に販売人と、番組にあったシーンを短くはさみ込み、あまたの悲劇を運んだことなど知らぬ気に、いつも通りスコットランド・北アイルランド間をゆるやかに航行するフェリーをロングショットで写し出して終ります。

番組に関する諸問題
一応ドキュメンタリー「The Dog Factory」の紹介を終りました。
 ここからは、番組そのものから離れ、この放送の余波や、番組内容を補足すべき事柄を記します。

このドキュメンタリー放送の余波

(1)放火事件──放映三日後深夜

 複数の報道(注8)によれば、二〇一五年四月十九日深夜、大規模繁殖場の経営者で、北アイルランド犬繁殖業者有志の会CBIのリーダー格でもあるH氏の自宅敷地内の小屋から出火、延焼はなかったが、仔犬六頭を含むヨークシャテリア十三頭が焼死。
 所轄のエニスキレン警察署グラハム・ドッズ主任警部は、放火の疑いで捜査を開始、市民に広く情報をもとめつつ、周辺のパトロールを強化したとのこと。
 この事件は、The Dog Factory 放送の三日後に発生、H氏は地元紙に対し、「お前は地獄で焼かれろ!」と脅迫めいた嫌がらせを動物権利運動家から受けた/市民によるH氏の繁殖場閉鎖要求署名運動/等の不当な扱いを受けてきたと訴えています。
 地元メディアのインタビューにH氏が答えた映像も確認しましたが、嫌がらせが電話やメールなのか、自宅前にピケを張られたのかは明らかにされていませんでした。捜査上の配慮かもしれません。また、今のところ犯行声明も出されていません(二〇一五年十月十五日現在)。

 これまでの例でみると、動物権利運動家や動物解放闘争家は、動物問題で組織的嫌がらせ(企業の電話回線封鎖・多数回脅迫メール送付・対象者への付きまといや自宅前ピケ他)や放火・爆破等を行った場合、自らの主張を世に知らしめるためネット等で犯行声明を出すのが普通でした。
 しかし現在に至るまで、放送と放火との因果関係
を合理的に立証できる情報はなく、興味深いことに、
北アイルランドの動物権利団体ARAN(Animal Rights Action Network)が、犯人につながる情報に二千ポンド(約三十八万円)の懸賞金を出すとアナウンスするなど、混沌としています。
 筆者としては、動物愛好家がH氏憎しといきり立つ気持からの犯行と推量されても仕方ないが、その前に、犯人は果して動物愛好家なのか。犬さんに被害が及んでいるのを知ると、動機・原因・事情は複雑なのかもと考えてしまいます。
(注8)BBCニュース 四月十九日 http://goo.gl/6tPYJy
 RTEテレビニュース 四月二十日 http://goo.gl/xtFMFO
 UTVニュース 四月二十三日 http://goo.gl/HX3IBQ
 ベルファスト・テレグラフ 四月二十三日 http://goo.gl/CjjvCm

(2)農業・農村開発委員会──四月二十八日

 この番組放映の約二週間後、四月二十八日に北アイルランド議会は農業・農村開発委員会を開催、The Dog Factory で指摘された犬の繁殖業者とライセンスに関して質疑が行われました。
 質疑の概要は、27ページ(横書き)にまとめましたので、それをご覧下さい。
 なお、答弁に立つのは、日本のこの種の場面でよく見る担当部局長・同政務官など事務方ではなく、北アイルランド政府 農業農村開発省大臣ミシェル・オニール女史(以下大臣)が一人で、自分の言葉で、法の詳細を含め全質問に対応しています。
 この質疑でおぼろげながら見えてくるのは「法が機能しない原因」。つまり法をつくる政府とそれを運用する地方協議会とが別組織で二者に極端な上下関係がないこと。このことは、質疑の様子から大臣も議員も百も承知ではないかと察せられます。
 なお、この質疑の最後に「動物福祉法(11年)及び13年改正の犬繁殖業者法によって多数が起訴されたが、ライセンス剥奪数は」と聞かれ、把握していないと答弁しています。私たちからすればやや残念と感じますが、この大臣は農業農村開発が担当であり(動物のことだけではない)、運用は現場(協議会)に任されていることを考えれば、やむを得ないことでしょう。

北アイルランド議会 農業農村開発委員会  
BBCスコットランド制作 The Dog Factory に関する質疑内容

(2015年4月28日)

議員側
・BBCの The Dog Factoryからも明らかな通り、貪欲や搾取・残酷の度合から考えると、法が機能していない。
・法が機能していない状況を改善し、犬の繁殖業者へ不当な偏見なしに良好な状態を継続できるか。
・動物福祉法(2011年)及び2013年に改正された犬の繁殖業者法により、違反者が多く起訴されたが、犬繁殖業者のライセンス剥奪数はどのくらいか。

大臣
・2013年に改正された法は、犬の繁殖業者に対して、ライセンスなしの営業又は法令違反をした場合、上限5000ポンド(約97万円)※の罰金と懲役6ヶ月を科すことが出来る厳格な法律である。
※北アイルランド政府管轄内
・更に、一般飼い主を含む犬を飼育する責任者は、動物福祉法2011も遵守しなければならず、動物に不必要な苦しみを与えた者は誰でも法に規定する厳しい罰(禁固最高2年や莫大な罰金)を科せられるべきと強く思っている。
・犬への労りより利益を重視する者、無免許等の不法行為を行う者を識別する為には、公共、ライセンスを所持する犬販売者、動物福祉・慈善団体、更にライセンスを与え管理指導する協議会と、法の執行機関が協調していく努力が必要で、見直す点があれば随時見直す。
・ライセンスに関する施設検査等の権限を各々の協議会に与えており、違法行為があれば、協議会は法に基づき、厳格に対応する必要がある。
・パピー・ファーム(仔犬の繁殖場)は違法ではないが、厳格な基準を遵守する必要があり、これが守れない者には協議会は厳格に対応する必要がある。
・ライセンスに必要な遵守事項を守れない者にはライセンスを与えず、ライセンス取得者でも遵守事項を守れなければ、ライセンスは剥奪されなければならない。
・動物福祉法2011、及び2013年改正の犬の繁殖業者法によるライセンス剥奪数は、把握していない。

(3)署名集め、抗議運動、地元行政の啓発

 The Dog Factory に限らず、このような番組が放送されると、その中で紹介された〈けしからん存在〉に対し、インターネットで抗議活動を呼びかける、署名集めが始められる等の「行動」は、今や当り前の現象となっていると言えましょう。
 H氏の大規模繁殖場に対しても閉鎖請願が起されましたが、管轄する行政が「問題なし」との見解を出している(前述)ので、閉鎖実現は予測できません。
 また、署名集めと一対と言ってよい抗議活動ですが、番組前半に登場したO夫妻──一人で幾つもの名前を使い、スコットランドへ仔犬を密輸・販売していた──への抗議サイトが立ち上り、犬を購入した人が「ひどい目にあいました!」と書き込んでいます。真贋は不確かながら。

 ただし、15年十月十五日現在、O夫妻が行政から何らかの制裁を受けたとの報道は、地元メディアを含めて見当りません。O夫妻地元を管轄する行政=サウスラナークシャー・カウンシルは、自らのホームページやフェイスブックを使い、仔犬購入でトラブルになった場合は相談を受ける、また情報提供して、と広報していて、それは好意的に受け止められているようです。

 また前回、同行政が The Dog Factory の放送を察知してか、放映一ヶ月半前の二月二十七日に仔犬購入者向け注意喚起をホームページに上げたと述べました(89号26ページ)。ここに内容を補足します。
 そこに挙げられる注意点とは
(1)出来るだけ地元のブリーダーから購入する。
(2)購入時、予防接種記録の提示を求める。
(3)その記録に接種獣医師の連絡先等詳細がない場合は要注意。
(4)母犬情報の提示を求める。出来れば父犬情報も。母父犬の写真すら提示しないブリーダーは要注意。
(5)購入契約書は慎重に確認してからサインすること。
(6)代金は可能なら現金でなく、クレジットカードまたは小切手で。必ず領収書を求めること。(7)血統証明書は犬の状態を保証するものでなく、仔犬が純血種であることを担保しない場合もある。等々、かなり踏込んだ内容です。
H氏の大繁殖場閉鎖を求める書名
http://goo.gl/AZ8Q1r
O夫妻に対する抗議ページ
http://goo.gl/gH8osx
サウスラナークシャー・カウンシルのフェイス・ブック
https://goo.gl/O9Ly1T

(4)ネット・オークションも転換?

 The Dog Factory では、犬のオークション・サイトについてもモザイクなしで画像を見せており、その内の一つには大々的に「セール」という文字が躍っていました。
 しかし、番組放送後は「レスキュー」「アダプト(譲渡)」を随所に配した、飼い主募集サイトに変っていました。「生体販売」から「救助/譲渡」に生れ変ったと印象づけたい、「恵まれない動物に愛の手を」と考えていますとの思いが伝わってきますが、所詮無料ではないので、カモフラージュであるのは直ぐ露見します。この種のやり方はごく普通、珍しいことではありません。
 また、「救助/譲渡」を看板にするサイトはいくつもあり、「生後八週齢のシェパード、フィラリア症(犬糸状虫症)のため百五十ポンド(通常の半値以下)」その他、命の安売り広告も存在しています。
参考リンク
http://goo.gl/APYAj9
https://goo.gl/z4tm5W

北アイルランド政府の対応
 前章(2)に述べましたように、このドキュメンタリー放映後の北アイルランド政府の対応は素早いもので、この問題を担当する委員会を開き、積極的な論議が行われました。
 また、番組中で問題視されたH氏の大規模繁殖場に対しては、放映直後に地元行政が抜打ち検査をしています。その結果が「問題なし」であったことは先述の通りです。
「問題なし」の根拠となったのがこの検査の報告書で、それは地元行政(ファーマナ・オマー地区協議会)のホームページにアップされていますので、横書きにまとめ、お目にかけます。

(1)H氏施設の抜打ち検査

 この報告書によれば、この繁殖場のライセンスは15年三月二十七日に取得されています。申請は同月八日、それに伴う通常全検査を十八日に実施、そして、取得が認められたわけです。
 ところが一ヶ月も経たないうちに「The Dog Factory」が放映され、翌日と二十三日の二回、再検査が行われました。二回目は抜打ちの部分検査だったことその他、検査内容は図版(横書き)でご覧いただくとして、詳細を省きます。
 一読して、検査結果は百点満点の合格と見てとれます。繁殖場のお手本となりそう…ですが、これだけの犬=♀四百九頭、♂八十八頭の数に先ず驚き、どのくらいの人数で世話をしているのか、妥当な人員なのか、気になりますが、それへの言及がありません。繁殖が業であれば当然仔犬が生れ、生後四週くらいまで母犬に面倒を見させたとしても、それ以後母犬からの分離、離乳食への切替えその他の世話には人間(スタッフ)が必要の筈。前出法医学獣医師ベイリー氏が「仔犬の死亡率が高いと何度も上申した」のを思い合せると、検査の範疇にないのを知悉して、コストの削減に努めている…と想像してしまいますが。
 いずれにしても、たて続けに検査して、「犬は、痛み・傷害・疾病・恐怖・苦痛を示しておらず、その証拠もない」故に問題なしとした監督行政の結論は、揺るぎない事実です。
 しかし思い出されるのは前出H氏の「畜産も犬繁殖も区別はない」(10年十月十二日意見聴取時)発言、それと、犬の繁殖場にライセンスを与え、管理指導するのは地元の協議会であり、「基本的に畜産農家を管理する手法と同じ」だとのこと、これで何となく納得できる気がします。
 
 次にこの報告書を〈冷静に〉読んで判ってくる英国の法制事情も興味深いものがありました。
 この検査は、北アイルランド政府により二〇一二年に改正された最新の動物福祉法に含まれる〈犬の繁殖場に関する規定〉に基づいて行われたものです。
 この報告書には「この法に規定する内容の責任は
この法を所管するDARD(北アイルランド農業農
村開発省 Department of Agriculture and Rural Development)にある」と、敢えて記されています。
 これが意味するところは、現場(地元行政)として、法令(中央の)に則って検査等を適切に行った、故に、異論がある場合はこの法の所管者DARDへ意見を述べてほしいということでしょう。また穿った見方をすれば、DARDが地元行政へうるさく指導をかけてくることなどない事も織込み済み、かもしれません。

 かくして、H氏の大繁殖場は、サマンサ女史の現場リポート・動物福祉専門家の否定的見解・スコットランド主任獣医官の異例のコメント等の集積をもってしても、つき崩されませんでした。その理由は、この繁殖場の現状や販売法に違法がないこと、のみならず、交配を重ねて数々の犬種を生み出してきた英国ならではの伝統が鎮座しているからと考えざるを得ません。

大規模繁殖場に対するファーマナ・オマー地区協議会 検査概要

1. 大規模繁殖場のライセンス取得日は2015年3月27日(申請は同月8日)
2. ライセンス取得時の通常全検査は同月18日に実施
3. 通常全検査により許諾された繁殖用成犬は、♀409頭、♂88頭(いずれも生後6ヶ月以上)
4. ライセンス取得後、僅か1ヶ月ほどで再検査が行われた理由は
a.市民からの大規模繁殖場閉鎖請願書(署名数1万2千名)
b.サマンサ女史のリポート(BBCスコットランド支局制作The Dog Factory)
c.これらを受けて、犬の繁殖場規制法と動物福祉法を遵守しているか確認する為に再検査を行った。
5. 検査方針は、ライセンス取得時の状況(適切な状態)と現状に変化がないかの確認
6. 再検査は2回行われ、
a.1回目は「ライセンス取得時に行う通常全検査」を、番組放送の翌日
 2015年4月16日)
b.2回目は2015年4月23日、抜打ち部分検査
c.検査員は地元行政の獣医師免許を持つ専門職員9名検査結果の詳細
検査結果の詳細
1. 給水システムにより、犬に対する給水は適正に行われ、給餌も良質のフードを自動給餌装置(パイプライン)と食器で与えられている。
2. 犬は痛み・傷害・疾病を示しておらず、その証拠もない。
3. 犬は恐怖・苦痛を示しておらず、その証拠もない。
4. 犬は週一回の獣医健診が可能になっており、敷地内に診察用スペースがある。
5. 適切な大きさの犬舎で、過密飼養は認められない。
6. 各犬舎は十分な換気と照明を持ち、セントラルヒーティングを設置している。
7. 各犬舎は衛生的で、それぞれの入口には靴底消毒用の消毒槽を設置している。
8. 各犬舎は、非刺激性・吸収性のわら、シュレッダー紙、おが屑、木材チップが敷かれ、定期的に交換するなど、乾燥した清潔な良好な状態である。
9. 全仔犬は予防接種され、ライセンスを持つ施設や飼育施設のみに販売し、個人に販売しないことを確認した。
10. 火災リスク評価と消防計画を立てている。
11. 全繁殖用犬のマイクロチップ挿入済を確認、正常にデーターは読み取れ、無作為に選んだ6頭のデーター真贋性を確認したが、問題はない。
12. 繁殖用成犬は全て生後6ヶ月以上7歳以下で、ライセンス取得時と同頭数。
13. 犬の品種とサイズ別の定期的な運動が可能なスペースが敷地内にある。
14. BBC制作 The Dog Factory で指摘された仔犬用ユニット(コンテナ)は、ライセンス取得時の検査で確認済で、建築許可された一時的の措置であり、この一時的ユニットは暖房が装備され、非透過性の内装を使い、清掃されており、何ら問題はない。
15. 以上の検査結果から、ライセンス取得時の適切な状態と現状には変化がなく、当該繁殖場は法令が遵守され、動物福祉上の問題もなく、指導及び閉鎖の必要はない。

(2)10年の法改正審議会意見聴取

 本稿前半、番組紹介部分にあったH氏の「区別はない」発言ビデオは二〇一〇年十月十二日、この改正審議の一環として意見が聴取された時のものです。
 番組に採用された部分以外の発言も確認したいと先述(20ページ)しましたので、その要旨を次に横書きにまとめてお目にかけます。
 この審議会にCBIからは三名が出席、H氏が代表して質疑に応じました。
 その質疑で、例の発言の外、委員はインターネットでの生体販売の規制が必要かと質問、H氏が明確に答えなかったため、イエスかノーかと詰め寄られ、渋々イエスと答えた場面もありました。
 委員は、総じて規制強化のための具体策(巡査の権限強化等)について質していますが、H氏は愛護団体等が警察に通報、それによって巡査が繁殖場を訪れ、「飼育環境に問題あり」と判断して犬を没収することを危惧しています。
 H氏と共に法改正審議会の意見聴取に参加したCBIのベテランブリーダーたちによると、北アイルランドの犬繁殖業者らは、イングランド、スコットランドはもちろん、世界中に犬を輸出し年間市場規模は一億六千万ユーロ(約二百十七億円)とのこと。

北アイルランド議会による犬の繁殖関連法 改正審議会での
CBI(Canine Breeders Ireland)H氏発言要旨

(2010年10月12日)
自分たちはライセンスを持ったブリーダーであり、ブリーダーは正当かつ何ら恥じることのない職業。よってバックヤード・ブリーダーやカーブート・ブリーダー(※)ではない。
※バックヤード・ブリーダーは、自宅の庭などで知識もないまま安易に犬を繁殖・販売する者。カーブート・ブリーダーは犬を乗用車のトランクに入れて運び、路上や商業施設の駐車場で販売する者。いずれも英国愛護諸氏による造語で、ベルリン等でも見られる販売形態。
繁殖場に対する動物権利運動家USPCA代表スティーブン・フィルポット氏らの指摘は事実と異なる等、我々は彼のような熱心な告発者による権利の乱用に晒されている。
虐待を語る時に多用される動物の痛みに関する定義は曖昧、一部に獣医学的見地とは言え、妥当でない主張で動物の苦痛を強調する者がいる。
繁殖場適正化案では、巡査(警察官)の権限に比重をおいているが、繁殖場検査員(獣医師)に比べ、巡査は、動物の生態や動物福祉の基本的な知識を有しているとは限らない。
よって、獣医師のチェック等の立会なしに巡査が不適切飼育もしくは虐待の判断を行い、生体の保護収容等(押収)が可能となる改正案は、虐待に対する誤った判断を招くことを否定できず、フェアでない。
インターネットによる仔犬販売広告と新聞雑誌の広告には何ら違いはない。
現在使役犬に認められている断尾(※)の完全禁止には反対。
※ 動物福祉法2006 第6節により、軍用犬・警察犬・災害救助犬・有害獣(狐や穴熊を想定)を駆除する犬には断尾が認められている。
飼い主責任を高める法改正には賛成。
※は当会による注釈

(3)北アイルランド政府の改正作業

前回(89号12ページ)の犬繁殖に関する法の表紙写真四枚を思い出していただきたいのですが、一九
七三年、一九九一年、そして一九九九年には法のタイトルにも(Welfare 福祉)と添えられた法律、の三枚と、これらを連合王国を成す四つの政府が、それぞれに運用する法令を作り、施行しますが、四枚目の表紙写真が北アイルランド政府の「2013 犬の繁殖事業関連規制改正法」です。

 The Dog Factory で問題視された大規模繁殖場、それ故機能していないと指摘された、二年前改正の繁殖業者に関する厳しい規定。
 単純に考えれば、〈機能しないような改正〉の審議に関った政府や議員が無能だからと言えるかもしれず、そうであった場合、審議に加わった人々の資質の問題、つまり審議の内容も影響も理解できていない人が改正に携わったことが原因と考えられます。日本の場合は往々にしてこの種の審議会が散見され、動物愛護法改正を審議する部会も該当すると言えるようです。
 しかし、北アイルランド議会の繁殖関連法改正に関った審議会、そして審議に参加する議員や政府関係者は、問題の本質をよく認識し咀嚼していて、審議中ロビーの影響は否定できないものの、政府提出の改正素案に対する意見提言書が生れるまでの過程は、日本と大きく異なります。

 この改正案の審議は、北アイルランド議会の農業農村開発委員会が担当、委員会の構成は委員長・副委員長を含め十一名の議員。質疑においては、改正案に上げられる繁殖業界や動物関係団体・きつね狩り擁護団体・獣医師等々に対して問題の在処を質す必要から、出席関係者に直接質問することは勿論、改正案の修正や政府への提言も活発に行われていました。
A4で400ページにも及ぶ、北アイルランド議会・動物福祉法改正審議会最終報告書

 結局、それができるのは議員全員が知識があり問題点をよく把握しているから。
 このように熱意と能力ある議員たちの改正作業の結実した法であるだけに、「機能していない」と評される現状であるのは、極めて深刻なことと思います。 
 兎にも角にも、ブーイングや爆笑も頻発する中、熱心な論議が交される英国議会の様子は時に日本のテレビでも見かけますが、この傾向は中継録画や議事録を見るかぎり、下院のみならずスコットランド議会、北アイルランド議会、さらに、隣国アイルランド共和国議会にも共通しています。
 日本の国会で、質疑はペーパー頼り、後見人?官僚頼り、委員会に公述人を呼びながら議員が居眠りするなどの光景を見慣れている身からすると、「さすが先進国!」と思ってしまいます。

今回分を終えて
 また長文になりました。次回は、アイルランド共和国における動物問題の取組み及び動物保護団体の活躍と苦悩をご紹介します。
 そして最終回のその末尾に、古くから日本に影響を与え続けたRSPCA考察を置きます。
 近年のRSPCAは、虚偽広告で排除勧告を受けたり、内部告発をした元インスペクターが自殺したり、長年パトロンであったカンタベリー大司教に縁を切られたりと、問題続出。いわゆる新聞の高級紙には「落ちぶれた」と書かれる等、「ボクシングに例えれば棒立ち状態」にあります。
 また、日本人には理解しがたいのですが、彼らが連呼してきた「動物福祉」という名の欺瞞もしっかり見たく、合せて、ここに至った英国における動物事情を総括する予定です。