• リハビリテーションの本来の意味は、障害を受けた者に対して、身体的、精神的、社会的、職業的、および経済的な能力を、それぞれがなし得る最大限にまで回復させることです。つまり、病気や怪我によって受けた障害を可能な限り回復をはかり、残された能力を最大限に利用することによって、その生活に満足できるようにすることです。
  • 脳卒中の患者さんの多くは、何らかの後遺症を残します。この後遺症、すなわち障害を持ったまま、それとうまく共存して、如何に人間らしく生きていくかということがリハビリテーションなのです。
  • 患者さんおよびその家族を支えるリハビリテーションの治療には、医師や看護婦だけでなく、多くの人々による協力が必要です。運動機能の回復訓練を担当する理学療法士および作業療法士、言語訓練を担当する言語療法士、精神心理面での援助を行う臨床心理士、そして社会への橋渡しを手伝う医療ソーシャルーワーカーなど多くの人々が関わっています。
  • リハビリテーションは、脳卒中の発症当日から開始するのが原則です。
  • 早期のリハビリテーションの目的は、麻痺によって動きが悪くなった手足を放置することによって、関節が固くなるような二次的な障害を予防することです。この障害された四肢を安静にしすぎることによって起きる二次的障害には、関節の拘縮、筋力低下、褥瘡(床ずれ)、深部静脈血栓症、起立性低血圧などがあります。
  • そこでまず必要となる理学療法は、体位変換、四肢の関節を良い位置に保持すること、関節可動域の訓練です。関節可動域の訓練とは、関節の拘縮予防のための他動的な運動です。良いほうの手を使って自分で麻痺側の運動をすることもできます。但し、麻痺側の四肢は痛みを感じなくなっている場合もあり、動かしすぎによって関節を損傷する危険性もあります。家族が行う場合には、まず理学療法士に相談してください。
  • 血圧、脈拍、呼吸といった全身状態が落ち着き、脳卒中の急性期の治療が一段落すると、本格的な理学療法が始まります。
  • その目的は、個々の患者さんの障害の程度に見合った適切な訓練を積み重ねることによって、障害された部位の自然回復を助けることです。また、残された機能を使って日常生活を少しでも快適に過ごせるようにする事も大切です。そのためには、電気治療や温熱治療を行ったり、適切な装具や杖などの使用も有効です。
  • リハビリテーションでどこまでよくなるのでしょうか?
  • 脳卒中によって脳の神経細胞へ供給される血液がとだえ、酸素や栄養が全く届かなくなると、神経細胞は通常の場合数分間で死滅してしまいます。一度死んでしまった神経細胞は、現代の医学では如何なる方法でも生き返らせることはできません。すなわち一旦生じた四肢の完全麻痺は、健康な状態に完全に回復することは極めて困難なのです。障害を直ちに回復させる薬も、手術もありません。リハビリテーションに対する本人の意欲と毎日の地道な訓練の継続が重要なのです。


  • 目 次

    脳卒中とは?

    脳卒中を起こしたら

    症 状

    予 防

    種 類

    検 査

    脳梗塞の治療

    脳内出血の治療

    くも膜下出血の治療

    脳ドック