虹: 概 要

 

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概 要:

 太陽光線が雨滴(水滴)に当ると,光線は雨滴表面で屈折して雨滴内部に入り,雨滴内で反射を繰り返す。その際光の一部は屈折して,再び雨滴の外に射出されます。
 光の屈折率は光の色,すなわち光の波長によって異なるため,雨滴から出ていく光線の射出方向は色ごとに少しずつずれ,この結果,射出後の光線は色ごとに別々の方向に進むこととなります。この色分けされた方向に進んでくる光線を見ることによって,その延長上に色の付いた虹が見える……というわけです。
 このように,虹は光の色(波長)によって屈折率が異なることが原因で生じます。屈折率の違いによって光が色分けされることを『光の分散』と言います。プリズムで白色光が七色に分離されるのも同じです。

主虹と副虹:
 下の写真は,水まき用シャワーの水滴にできた虹の写真です。
 はっきりと写っているのは主虹と呼ばれ,雨滴内反射を1回を起こした光線によって生じている虹です。普段見かける虹は,一般には主虹です。
 その外側にうすく写っている虹は副虹と呼ばれる虹で,雨滴内反射を2回を起こした光線によって生じています。実際の虹では条件の良いときにか現れず,まれにしか見られません。


 次の図は,雨滴(水滴)によって散乱された光線の散乱角と,光線が雨滴のどの位置に入射したかを表す衝突係数と呼ばれる量との関係を表すグラフです。赤色が雨滴内反射1回の,青色が内部反射2回のグラフです。

(*衝突係数) 光線の入射する位置を雨滴の中心線より測った高さで表し,これを雨滴の半径で割った値。
(*散乱角) 散乱光の方向を,太陽光線の入射方向から測った角度。



 赤色グラフが極大値をとる角方向に主虹が,青色グラフが極小値をとる角方向に副虹が現れます。その理由は,解説1解説2で説明します。
 主虹と副虹について,次のような特徴があります。
1. 主虹と副虹の色の配列が逆になっている。
2. 主虹と副虹の間では,向こうの景色(本写真ではフェンス。虹ならば雨雲など)が透けて見える。
3. 主虹の内側と副虹の外側が白っぽく明るくなっている。


◎説 明:

1.について:
 主虹は水滴内反射を1回,副虹では水滴内反射を2回している関係で,色と散乱角の大小関係が逆になっています。主虹では波長の長い赤色の方が散乱角が大きいため他の色よりより上方に現れ,副虹では赤色の散乱角が小さいため下方に現れます。
2.について:
 上のグラフよりわかるように,赤線グラフ(主虹をつくる)には最大値が,また青線グラフ(副虹をつくる)には最小値があり,両者は重なっていません。この関係はすべての色の光について言え,この間に挟まれた区間(角度)には水滴による散乱光が一切ないことになります。したがってこの部分は光学的には「透明」であり,背景が透けて見えるわけです。虹は降雨によってできるわけですから,背景とはふつう雨雲であり,したがってこの部分は暗くなっているのが一般です。このことからこの部分は,発見者の名にちなんで『アレキサンダーの暗帯』と呼ばれています。
3.について:
 この部分にはすべての色の光について散乱光は存在しますが,その強さはどの色の光についてもほとんど同じになっています。とくに強い色の光が無く,いろんな色の光が等しく混じり合った光……ということで,その混合光は白っぽく見えてしまうわけです。

(*) 散乱角-衝突係数グラフの傾きの大きさが光の強さに関係します(虹の色と散乱角 参照)。



過 剰 虹 (干 渉 虹):
 下の写真(強調処理をしてある)のように,主虹の内側(時に副虹の外側)に,紫~黄緑のぼんやりとした光の筋 が見えることがあります。これは干渉虹,もしくは過剰虹と呼ばれるものですが,反射や屈折といった幾何光学では説明できません。光の干渉といった波動光学によって説明できる現象であり,定量的に説明するには積分(エアリー積分)などが必要になってきます。
 詳しくは,解説6 ~解説10で説明します。



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   次に続く(解説1:雨滴による虹散乱)

  虹の話   概要
  解説1(解説1:雨滴による虹散乱)
  解説2(虹の色と散乱角)
  解説3(散乱角の詳細計算)
  解説4(反射率)
  解説5(虹散乱での反射率)
  *** 以下,過剰虹について ***
  解説6(波動光学)
  解説7(過剰虹成因の概要)
  解説8(波面の式)
  解説9(虹の光強度の式)
  解説10(波動光学による虹)