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遺棄毒ガス敦化訴訟 東京地裁 判決に対する弁護団声明

弁護団声明

2012年4月16日

敦化遺棄化学兵器被害訴訟弁護団

 

1 本日、東京地方裁判所民事第33部(小林久起裁判長・中島崇裁判官・見原涼介裁判官)は、敦化遺棄化学兵器被害訴訟事件につき、原告らの国に対する賠償請求を棄却する判決を言い渡した。

 

2 本件は、2004年7月23日、中国吉林省敦化蓮花泡の小川に遺棄されていた毒ガス砲弾(イペリットとルイサイトの混合剤)によって引き起こされた事故の責任を問うものである。

判決は、旧日本軍が遺棄した毒ガス砲弾により原告らが被害を受けたことは事実であり、日本国政府が、遺棄化学兵器処理事業を推進しつつも被害を未然に防止できなかったことも事実であって、原告らの被害は、真に遺憾なことであると述べた。

  また、判決は、日本政府が、1991年に2名の被害者と面談し被害状況の説明を受けていたこと、そして、中国政府が翌1992年にも、日本政府に対して、本件現場には遺棄毒ガス砲弾が存在している可能性を指摘するとともに、日本政府の調査に対しては全面的に協力する用意があることを伝えてきたことも認定した。

しかしながら、本判決は、上記事実に言及しながら、責任を認めなかった。

我々弁護団は同じ司法に携わる者として深い失望を覚える。

 

3 中国大陸に遺棄された毒ガスによる被害については、本件以前に3つの裁判が起こされている。そのいずれの判決においても、旧日本軍が化学兵器を遺棄して住民らの生命身体に危険を生じさせたという先行行為に基づいて、日本国政府の違法性を問題とするとの法的枠組みを採用している。

しかし、本判決は、なんらの理由も示すことなくこのような法的枠組みすら採用せず、化学兵器禁止条約の義務の履行に伴う被害防止義務を取り上げ国の広い裁量を認め、日本国政府を免責した。

これは、独自の判断に基づく、極めて不当な判決である。

 

4 しかしながら、何ら落ち度無く、日本国政府による不当な行為によって、被害を被った被害者は救済されなければならない。日本国民は、先の侵略戦争における敗戦の中、二度と戦争を起こさないと誓い、人々が恐怖から解放される世界の構築を誓った。これは日本国民が、自ら犯した過ちの中から見いだした希望でもある。

本件を含む遺棄毒ガス兵器による被害者の救済は、日本国民が見いだした希望の一つの実現である。

我々弁護団は、被害者らとともに、裁判所、日本国政府が過ちを正面から認識し、希望ある未来に向けて舵を切るまで闘い続ける。

 

以上

 

 

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