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遺棄毒ガス敦化訴訟 東京高裁 判決に対する弁護団声明

声  明

 

本日,東京高等裁判所第10民事部(園尾隆司裁判長)は,控訴人らが、日本政府に対し,旧日本軍が中国に遺棄してきた毒ガス・砲弾の被害による損害賠償を請求していた事件につき、控訴人らによる控訴を棄却する不当な判決を下した。

 

本件は、2004年7月23日、中国吉林省敦化蓮花泡の小川に遺棄されていた毒ガス砲弾(イペリットとルイサイトの混合剤)によって引き起こされた事故の責任を問うものである。

 

今回の高裁判決は、他の遺棄化学兵器被害事件と同様、日本国政府の先行行為に基づく作為義務違反の有無につき、@違法な先行行為の存在、A危険性の存在、B予見可能性の存在、C 結果回避可能性の有無の4要件に基づき、かつB「予見可能性の有無を判断するにあたっては行為時に現に存在した知見のみを前提にするのではなく、研究調査を尽くしていたとすれば入手し得た情報をも加えて判断するのが相当である」との規範を新たに付け加えた。

そして、本件について、旧日本軍が中国国内に化学兵器を埋設し遺棄・隠匿したとして@違法な先行行為を認め、Aについても本件毒ガス兵器は人の生活圏内に存在しこれに接触することにより直ちに人の生命・身体に危険をもたらしたものであるから、人の生命・身体という重要は法益に対する危険性があり、かつこれが切迫した状態にあったと認めた。

Bの予見可能性については、1991年6月に日本国政府が毒ガス被害者2名に会い、両名が1951年「敦化地区の馬鹿溝を指すと解される地点で毒ガス弾による被害を受けた」事実、1996年に出版された書籍に「馬鹿溝付近に多数の毒ガス弾が散らばっているなどと記載されている」事実、1992年には中国政府が提供した資料において遺棄毒ガス兵器の埋設可能性のある地区として馬鹿溝が挙げられている事実、さらに1993年9月の日中専門家会合において中国側より右資料にある地域はいずれも差し迫った危険が存在していると述べた事実、をいずれも認定した。にもかかわらず、被控訴人において、結果回避措置につながる程度の具体性を持って、馬鹿溝周辺に遺棄化学兵器が存在することを予見することができなかった、とした。

また、高裁判決は、「予見可能性の有無を判断するにあたっては行為時に現に存在した知見のみを前提にするのではなく、研究調査を尽くしていたとすれば入手し得た情報をも加えて判断するのが相当である」との規範を定立しておきながら、上記認定事実を契機とした日本政府の調査研究に何ら言及することなく予見可能性を否定した者であり、結論ありきの判断と言わざるを得ない。

 

我々は、この不当な判決に対し、怒りをもって直ちに上告する。同時にこの判決は日本政府が遺棄した事実、先行行為の違法性、人の生命身体という重要な法益侵害の事実を認定したことに鑑みれば日本国政府の政治責任は免れない。我々は日本国政府が政治責任を果たし、被害者の救済と二度とこのような被害が起きない防止策を強く求めるものである。かかる意味での解決を図るまで最後まで戦い抜く決意である。

 

    2013年11月26日

    

    敦化遺棄毒ガス被害訴訟弁護団

 

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