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海南島訴訟 東京地裁 判決に対する弁護団声明

本日,東京地方裁判所民事第24部(矢尾渉裁判長)は,「海南島戦時性暴力被害賠償請求事件」で,原告らの請求を棄却する不当な判決を下した。

本件訴訟は,日中戦争中の1941年頃より1945年8月までの間,中国海南島において,8名の原告が「性奴隷」として想像を絶する肉体的及び精神的苦 痛を被ったうえ,日本兵に慰み者にされた女性として名誉を侵害されたまま戦後も失意の人生を歩むことを強いられ,あまつさえPTSD(心的外傷後ストレス 障害)により今日まで苦しみ続けてきたことについて,日本政府に対し,名誉の回復と損害の賠償を求めて2001年7月16日に東京地方裁判所に提訴したも のである。

本判決は,戦時中,日本軍によって海南島に「慰安所」が設置され,軍の管理下に強制連行した女性たちを監禁し日本軍将兵や軍属に性的奉仕をさせたことを 認定したうえで,原告ら1人1人につき,日本軍人によって,拉致され,「慰安所」に監禁されたうえ連日強姦が繰り返されたという,悪質極まりない加害と被 害の事実を具体的かつ明確に認定した。

にもかかわらず,本判決は,戦前の被告国の法的責任については,不法行為性を認めながらも戦前天皇制下の国家無答責理論により免罪し,政府が放置したこ との責任を取らず,長期間権利行使をしなかったことにより権利が消滅したとし,また戦後の被告国の法的責任については,具体的事実を見ることなく政府に名 誉回復義務などないと否定し,原告らの請求をいずれも棄却した。

原告らの名誉回復と賠償請求を否定したこの判決は,司法の正義を踏みにじるものであり,私たちは,日中両国民の厳しい批判を免れないものと確信し,強く抗議するものである。

しかし,日本軍による「戦時性奴隷」の加害と被害の事実を認め,その不法行為性を認定した本判決によって,原告ら被害女性達に対する日本政府の政治的・道義的責任は,もはや疑う余地のないものとなった。日本政府は,自らのこの政治的・道義的責任を免れることはできない。

私たちは,日本政府が上記責任を真摯に受け止め,河野官房長官(当時)談話において示されたように,直ちに原告らを含む中国人「慰安婦」被害者たちに対 し,具体的事実を認め,誠意ある謝罪を行うとともに,謝罪の証としての適切な補償を行って政治的解決をはかることを強く求める。

私たち弁護団は,本件につき直ちに控訴するとともに,本日の判決を契機にして,中国人戦時性暴力被害賠償問題の早期全面解決の実現を勝ち取るまで,日中両国民の連帯をより一層強め,最後まで戦い抜くことを表明する。

2006年8月30日
中国人戦争被害賠償請求事件弁護団
海南島戦時性暴力被害賠償請求事件弁護団
団  長   尾山 宏 
団長代行   小野寺利孝

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