ちぐはぐな校舎配置と逐次整備

教育設備整備水準は
高かったはずが
 

 吹田市の教育設備の整備は、昔からレベルが高いと言われてきました。プールの全校設置や視聴覚教材・設備の整備、多目的ホール整備、コンピューター室整備などの5年計画事業が大阪府下でも比較的早い時期に取り組まれ整備が行われてきました。
 吹田の学校整備の特徴は、吹田独自の整備方針が確立していないところに、国の補助事業にあわせたこのような中期の計画を立案し比較的短期間に整備計画をすすめるというものです。

学校別の長期的視点を欠く
 それぞれの学校の問題点を把握し、長期的視点に立ってその学校の個別の課題を解決していくというプランが無いにもかかわらず、国の提唱する整備補助事業に次々と取り組んだ結果、第二音楽室や第二理科室などの特別教室が校舎のあちこちに分散してできあがる結果になりました。

運動場に後から整備されたプール

プールが運動場に飛び出す形に整備されてしまったため、運動場が凹型の使いづらいものになりました。 吹田 第三中学校  

 バラバラな特別教室の配置
 管理棟の不在

 職員室、校長室、放送室をはじめとする学校運営の中心になる諸室が集まる学校建物を管理棟と言います。会議室、校務員室、印刷室、倉庫、相談室、保健室、事務室等を集中することで、まとまりのある機能的な学校運営が出来ます。管理棟に理科室、図書室、家庭科室、音楽室、コンピューター室、図工室、視聴覚教室等の特別教室を上階に配置するのが全国的によく見られる学校のレイアウトです。
 吹田の学校では、管理棟の考えが徹底していない上に、 児童・生徒数の多いときに無理して国の補助事業に基づく特別教室整備を進めたため、結果的には配置が分散する結果になっています。児童数が減少する時期にはいるといろんな問題が見えてきます。
 資材の搬入、児童・生徒の移動、特別教室同士や職員室と特別教室の連携、普通教室を転用すること自体に設備整備上の無理があるため、特別教室自体が不十分な機能のまま整備されることになります。

  他市の学校はこんなんです
管理棟と教室棟は明確に分かれています





 左 管理棟・右 教室棟
 管理棟には、管理諸室と特別教室が集約されています。
 エレベーターも設置され、物資の搬入や障害者利用も容易になっています。 枚方市立第四中学校

体育館の上に整備されたプール

 後から整備され運動場に飛び出す形であったプールを体育館の建て替えと同時に整備し、体育館の屋上に建設されました。建て替え費用は、約6億円。吹田市立第五中学校

 すでにある学校に特別教室などを整備する追加工事は、工事費を高くし、不徹底なものになりがちです。学校現場の声を反映して整備された第五中学校の体育館は、高い水準の整備となりましたが、市民体育館を新築するトータルの費用が50億円近いことを考えれば、市民的な視点から見ても効率的な財政の執行だったと言えます。

改善できることを証明した事例 ↑


 

ゆとりのスペース作り




堺市・浜寺南中学校 教室3つ分の広さの多目的スペース(写真左)と8m幅の広い中廊下(写真右)

 学校の位置づけの低さ物語る
 立地条件の悪さ


 人口急増期の昭和50年代に開校した学校は、増築を繰り返すことなく当初から、一定の生徒数を見込んで計画できたため、普通教室を特別教室に転用することを避けることが出来ました。校舎建築の一定の考え方が導入されたのも、この時期に建設された学校からです。
 しかし、基本的な敷地面積の狭さや校地内の高低差が大きくなったり、校区の端に学校用地を選定する等の立地条件の悪さは、自治体内での学校の位置づけの低さを物語っています。
  また、ハードとして学校建築物の仕様を見れば、時代の水準を考えてもあまり高いものとは言えません。個別の学校を検討しても、管理棟と教室棟を明確に区分出来ていない学校も見受けられます。

  プランニングの基本段階で明確な指針が見られない

運動場はどこに配置するの?

 学校の基本レイアウトを考えるときは、校地のどこに校舎を建て、どこに運動場を整備するかが第一に決められます。学校建築の歴史の中では、それぞれの考え方が理由付けられ、新しい校舎建築ほど、問題点を解消する改善が入れられてきました。しかし、一つのまとまった教育委員会としては、施設整備の考え方が統一され、それが次第に改善されていくものです。
  吹田では、その統一性が無く、先に紹介した開放廊下校舎が昭和50年前後の人口急増期に集中的に建設されながらも運動場と校舎の位置関係は、一定していません。全体としては、学校建築の実験場でもあるかのようにさまざまな様式のものが見られます。 隣り合わせの小学校と中学校が、運動場を北と南に持っていたりするのです。

室温40度の校舎

 夏場の室温が40度に達するため、暑さ対策として簾が取り付けられた校舎。窓枠を見るとガラス面積の三分の一しか開けることができません。つまり、有効開口面積が小さいために通風が少なく室温が上昇する結果になっています。   
   第五中学校 三年生校舎

 プール、特別教室、多目的教室の後からの整備

端っこに作られたり
   じゃまになったり
 

国の補助を受けた整備事業がこれまで繰り返されてきましたが、その学校の問題点を長期的に解決するという計画を欠いた状態でその時々の整備事業を進めた結果、音楽室が普通教室の授業を妨げたり、多目的教室への距離が平面移動で200m以上も離れたり、後から整備されたプールが運動場を変形した使いづらいものにしたり、という学校運営上の有機的な連携を欠いた配置になっています。
 大阪府下でもさまざまな整備事業を国の計画期間にあわせて早期に実現してきた吹田市ですが、多目的教室だけでも1校の整備に、1500〜2000万円前後の予算を掛けながら、対象学校の教育環境としての課題を同時に前進させるようなアプローチは、十分とは言えません。さらに、個々の学校の現状に対する継続的な関心と計画の立案が求められています。

地域交流室とのアンバランス

右の写真は桃山台小学校に開設された地域交流室です。一見して分かるように学校と内装のレベルは段違いに良く、別世界となっています。


 地域交流室のエアコン室外機は、屋上に設置されていますが、2階の6年生教室に騒音被害が出たため、2000年夏防音対策工事が行われました。矛盾を感じる事例です。
 

   
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