倒壊の危険高い校舎改修は、わずか15棟

 大阪府下では、耐震化の伸び率は大阪府全体では前年の4.8%から4.3%に減速し、耐震化率は83.6%にととどまり、全国平均の耐震化率88.9%との差を縮めることはできませんでした。前回調査から、大阪府下では400棟を超える耐震改修工事を行ったものの、全国最多の1331棟の非耐震化棟数が残りました。

 調査対象となった2階建て以上で床面積200平方m以上の建物棟数は、8,115棟。耐震性能ありとされる昭和57年以降に建てられたものは、2,810棟、診断の結果耐震性が認められたものと耐震工事を完了したものの合計は3,974棟になり、耐震化の合計は6.784棟で、府下全体の平均耐震化率は83.6%でした。

 非耐震改修建物1,331棟の内、218棟がIS値0.3以下で巨大地震により倒壊する危険性の高いものであることが文部科学省により推定されています。この1年間に400棟以上の耐震改修が行われながら、倒壊の危険が高いと判定された建物は233棟から15棟しか減っておらず、危険建物の改修が後回しになっている実態が明らかです。

大阪府下非耐震100棟超は6市

 

 全国的に耐震化100%を達成した学校設置者が912自治体、組合になり過半数を超えました。大阪府下では前年の箕面市、松原市、高石市、四條畷市、田尻町に枚方市、門真市、交野市、大阪狭山市、熊取町が加わり、府下43市町村の内8市、2町が100%を達成しました。

 

 10%以上伸ばした市町 6市1町 

 大阪府下には、昭和56年以前の建物が占める比率が90%台の市が8市、80%台が8市、70%台が7市と、実に32市中23市が老朽化した学校施設を70%以上も抱えるという深刻な実態が浮き彫りになっています。

 100%を達成した10自治体に続き、大東市、大阪市、泉大津市、岸和田市、太子町、河南町が90%台、河内長野市、和泉市、富田林市、堺市、寝屋川市、茨木市、豊能町が80%でした。

 この1年間に耐震化率を10%以上引き上げた市は、7市ありましたが、前回のように30%の大幅な引き上げはありませんでした。7つの自治体の内訳は、忠岡町(19.2%)交野市(14.8%)藤井寺市(14.3%)茨木市(12.7%)寝屋川市(12.6%)吹田市(11.6%)豊中市(11.2%)です。

 一方で、平均耐震化率以下でありながら伸び率が5%を下回ったのは5市5町となりました。大阪府下の耐震化を引き上げる上で、非耐震建物100棟を抱える、東大阪市244棟、堺市103棟、豊中市123棟、吹田市100棟、高槻市120棟、八尾市138棟の奮起がまたれます。

 文部科学省は、非耐震建物を100棟以上保有する20市を公表しましたが、大阪府下6自治体が占めました。

 

2013年4月1日現在 大阪府下各市学校施設保有棟数と耐震化率
倒壊の可能性高い建物改修は、15棟に留まる 危険校舎置き去りか

 2009年4月の文部科学省の第8回の調査報告では、診断結果を住民に公開していない設置者320を発表しました。

 文部科学省が設置者名を公表することで、吹田市、貝塚市、守口市、大東市、羽曳野市、門真市、東大阪市、阪南市の8市は、2009年4月以降に次々と診断結果の公表に踏み切りました。

 しかし、その公表のやり方は、自治体により微妙に異なり、数字で示されたIs値を明確に発表するところと、ABC評価にとどめるところに分かれます。

 耐震工事を急がなければならない、巨大地震において倒壊の危険性が高いとされるIs値0.3以下の建物耐震改修費用への国の財政支援が1/2から2/3に引き上げられて、起債利子補給等により実質自治体負担は20%を切る水準まで抑えられていながら、大阪府下でこの1年間に400棟を超える建物の耐震改修工事が完了したものの、「大規模地震で倒壊の可能性が高い建物」緊急性が問われている棟数はわずか15棟しか施工されておらず、私たちが指摘して来たように、危険性の高い建物が先送りされている実態が明確になっています。

 明確なIs値が出る二次診断を受けながら、議会と住民に対する公表にあたっては、ABC判定に留める姑息なやり方は、児童・生徒の安全を願う住民の批判をそらすものであり、直ちに改める必要があります。

 

 非公開の指摘を受けた8市のその後は、門真市は今年度100%を達成し、大東市は99.1%と残り棟数は、1棟となっています。 耐震診断結果発表の内容は、羽曳野市(Is値公表)、阪南市(不明)、吹田市(ABC判定)、貝塚市(Is値公表)、守口市(ABC判定)、東大阪市(ABC判定)となっています。

  
 
    財政は言い訳になりません
 
大阪府下9市の耐震化の経過と財政力指数
口実にならない財政状態

文部科学省は、耐震化率の進展状態と自治体の財政力指数との相関関係を調査し、その結果も公表しました。

 耐震化100%を達成した自治体174団体を財政力指数別に分類したところ、174団体の平均値は0.52となり、全国市町村の平均値0.53とほとんどかわらないことが明らかになりました。逆に、94自治体が財政力指数では平均値を下回り、0.2〜0.3に35自治体と最も多く分布していました。 自治体の財政力を示す指標のひとつである財政力指数は、1を超えると地方交付税が財政力があるとして交付を受けることが出来ません。

 大阪府下を観ると、上のグラフでは、吹田市(1.06)、箕面市(1.03)が1を超えています。100%を達成した松原市が、上記市の中では0.61と一番低く、90%台の枚方市(0.86)、大東市(0.86)、大阪市(0.94)と財政を口実に耐震化の低さを擁護できないことが明確です。

 グラフで明確になっているのは、吹田市の耐震化の遅れと財政力指数の乖離です。自治体の財政力を示す指数には、いくつかありますが、吹田市の立ち後れは複数の駅前再開発事業を同時進行し多くの財政を継続的に支出しているのですから、児童・生徒の生命と教育環境を軽視していると指摘されても仕方ありません。

 耐震化の遅れに災害が追い打ちをかけるなら、住民の生命を守り防災拠点としての機能を失うばかりか、その財政的負担は巨額になり自治体としての基本機能にしわ寄せをきたすことは明らかです。

 

 

第11回調査までの歩み

12回までの歩み

第12回全国調査結果
吹田市の耐震化の遅れの原因は

 

 

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