倒壊危険990棟

 大阪府下では、370棟余りの耐震工事が行われ、耐震化の伸び率は大阪府全体では前年の7.5%から4.8%に減速し、耐震化率は79.3%ととどまり、全国平均の耐震化率84.8%との差を縮めることはできませんでした。

 調査対象となった2階建て以上で床面積200平方m以上の建物棟数は、大阪府全体の公立小・中学校で8,088棟あり、耐震性能ありとされる昭和57年以降に建てられたものは、2,781棟、診断の結果耐震性が認められたものと耐震工事を完了したものの合計は3,632棟になり、耐震化の合計は6.413棟で、府下全体の平均耐震化率は79.3%でした。

 大阪府には、耐震性のない学校施設1,675棟が残り、全国でも北海道に次ぐ大きな非耐震建物を抱えています。文部科学省は二次診断等、一次診断、優先度調査、未実施傾向を総合的に判断した結果、大阪府下では233棟がIS値0.3以下で巨大地震により倒壊する危険性の高く、IS値0.3〜0.5の巨大地震で倒壊の危険ありとされる学校建物は757棟と判定されました。老朽化した上、万一の時は巨大な被害復旧費用が発生するこれらの学校建物は、隠れた不良資産といえます。

100棟の5市が今後の焦点に

 

 全国的に耐震化100%を達成した学校設置者が750自治体、組合になった一方、大阪府下では前年の箕面市、松原市、高石市、田尻町に続いて四条畷市が加わりました。府下43市町村の内3市、1町が100%を達成しました。

 大阪市は、防災拠点となる区役所等の公共施設の建替え工事を進めるとともに、第二次世界大戦後のベビーブーム時に建てられた中心部の学校改築を計画的に進めてきました。そのため、大阪市の昭和57年以降の建物比率は、50%を超え、阪神大震災後に耐震化工事にも旺盛に取り組んだ結果、耐震化において大阪府下各市を大きくリードしてきました。

 門真市 1年で30%伸ばす

 大阪府下には、昭和56年以前の建物が占める比率が90%台の市が8市、80%台が8市、70%台が7市と、実に32市中23市が老朽化した学校施設を70%以上も抱えるという深刻な実態が浮き彫りになっています。

 100%を達成した4自治体に続き、大東市、大阪市、枚方市、泉大津市、大阪狭山市、熊取町が90%台、門真市、岸和田市、河内長野市、交野市、和泉市、富田林市が80%でした。この1年間に耐震化率を10%以上引き上げた市は、11市あり、とりわけ門真市は30%、交野市20%、大阪狭山市19%と飛躍的な引き上げとなりました。

 一方で、平均耐震化率以下でありながら伸び率が5%を下回ったのは4市4町となりました。大阪府下の耐震化を引き上げる上で、非耐震建物100棟を抱える、東大阪市219棟、堺市175棟、豊中市160棟、吹田市138棟、高槻市132棟の奮起がまたれます。

 

24 年大阪府下各市学校耐震化
診断結果公表は数値を

 2009年4月の文部科学省の第8回の調査報告では、診断結果を住民に公開していない設置者320を発表しました。

 文部科学省が設置者名を公表することで、吹田市、貝塚市、守口市、大東市、羽曳野市、門真市、東大阪市、阪南市の8市は、2009年4月以降に次々と診断結果の公表に踏み切りました。

 耐震改修促進法等の法令では、これまで耐震診断の早期実施と結果の住民への公表を求めてきました。

 しかし、その公表のやり方は、自治体により微妙に異なり、数字で示されたIs値を明確に発表するところと、ABC評価とどめるところに分かれます。

 耐震工事を急がなければならない、巨大地震において倒壊の危険性が高いとされるIs値0.3以下の建物耐震改修費用への国の財政支援が1/2から2/3に引き上げられて、起債利子補給等により実質自治体負担は20%を切る水準まで抑えられています。

 耐震診断の結果を公表するにも、数字で出せるかABCにとどまるかは、二次診断等ができているかどうかの違いでもあります。ABC判定では、深刻な欠陥を抱えたり手抜き工事により本来なら建て替えるべき建物が明示されず、あたかも耐震工事の対象になり得ると市民に誤認させる危険性があります。

 Is値が低い危険な建物ほど耐震工事は大規模になり費用は大きくなります。そのため、危険建物が後回しにされる心配がありますが、ABC判定では、住民には判断することが出来ません。

 

 非公開の指摘を受けた8市のその後の取り組みは、大きく異なりました。この3年間の耐震化の伸びを見ると門真市(55.4%)羽曳野市(36.4%)、大東市(32.4%)、阪南市(25.7%)、吹田市(21.8%)、貝塚市(21.5%)、守口市(19.9%)、東大阪市(7.7%)となり、この間の大阪府の平均伸び率18.3%を多くの自治体で上回る結果となりました。

  
 
    財政は言い訳になりません
 
大阪府下耐震化と財政力指数
口実にならない財政状態

文部科学省は、耐震化率の進展状態と自治体の財政力指数との相関関係を調査し、その結果も公表しました。

 耐震化100%を達成した自治体174団体を財政力指数別に分類したところ、174団体の平均値は0.52となり、全国市町村の平均値0.53とほとんどかわらないことが明らかになりました。逆に、94自治体が財政力指数では平均値を下回り、0.2〜0.3に35自治体と最も多く分布していました。 自治体の財政力を示す指標のひとつである財政力指数は、1を超えると地方交付税が財政力があるとして交付を受けることが出来ません。

 大阪府下を観ると、上のグラフでは、吹田市(1.06)、箕面市(1.03)が1を超えています。100%を達成した松原市が、上記市の中では0.61と一番低く、90%台の枚方市(0.86)、大東市(0.86)、大阪市(0.94)と財政を口実に耐震化の低さを擁護できないことが明確です。

 グラフで明確になっているのは、吹田市の耐震化の遅れと財政力指数の乖離です。自治体の財政力を示す指数には、いくつかありますが、吹田市の立ち後れは複数の駅前再開発事業を同時進行し多くの財政を継続的に支出しているのですから、児童・生徒の生命と教育環境を軽視していると指摘されても仕方ありません。

 耐震化の遅れに災害が追い打ちをかけるなら、住民の生命を守り防災拠点としての機能を失うばかりか、その財政的負担は巨額になり自治体としての機能を果たせなくなることは明らかです。

 

 
第11回調査までの歩み
2013年 文部科学省学校耐震化全国調査

第11回耐震調査都道府県結果

2013年大阪府下各市学校耐震化調査結果

 

吹田市の耐震化の遅れの原因は

 

 

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