2010年7月文部科学省は、2010年4月に行った9回目の全国の公立小中学校施設の「耐震改修状況調査」の集計結果を公表しました。2009年は、耐震化の取り組みを放棄している自治体名に続いて、診断結果を公表しない320の設置者名を公表しましたが、その効果は大きく、耐震化も過去最高の6.3%の伸びを実現しました。
第1回調査からの歩みを見ると、対象建物数は、約9,000棟減少しましたが、診断率は39.8%から98%へ、耐震化率は45.7%から73.3%と大きな前進です。
2010年7月文部科学省は、2010年4月に行った9回目の全国の公立小中学校施設の「耐震改修状況調査」の集計結果を公表しました。
調査の対象は、2階以上または延べ床面積が200を超える非木造建物124,238棟でした。
耐震診断実施率は、98%となりましたが、富山県、奈良県、鹿児島県の3県が100%実施となり、残る全ての都道府県が90%台となりました。
耐震化率の調査結果は、73.3%にあたる91,104棟が耐震性があることが明らかになりました。増加は前年より6.3%とこれまでの最も高い伸びとなりました。
中国・四川大地震における学校倒壊に人命被害を受け、改修工事に必要な補助率を大きく改善して国は大規模地震により倒壊する危険性が高いIs値0.3未満の建物耐震化に必要な財源措置を21年度補正予算も含め手当し、設置者である市町村もこれに応える取り組みを強化しました。
文部科学省は、前回第8回調査では、調査結果の非公表を続ける設置者320のリストも付け加え、昨年4月以降多くの自治体が調査結果を公表し、大阪府でも23.5%にあたる10市町が耐震診断結果を公表しました。非公表だった自治体名は、吹田市、貝塚市、守口市、大東市、羽曳野市、門真市、東大阪市、阪南市、島本町、能勢町でした。
全国の
耐震診断の実施率は、98.0%となり今年度末には最終段階になります。
文部科学省「平成22年4月・耐震改修状況調査」より
1995年1月の阪神・淡路大震災を受けて同年6月、政府は公共建物の耐震診断を急ぐ必要性を認め、「耐震改修促進法」を施行するとともに、「地震防災事業五箇年計画」を策定してそれまで特定地域に対して行っていた耐震工事事業への補助を全国対象に広げ、かつ耐震診断と耐力度調査の費用に対しても国庫補助を行うこととしました。
しかし、2002年5月実施された初めての全国調査では、震災から8年が経過したにもかかわらず、耐震診断すら大きく立ち後れていることが明らかになりました。
文部科学省は、この調査結果を受け2002年7月31日付けで「公立学校施設の耐震診断実施計画の策定について」において、都道府県教育委員会に公立学校の耐震性能の把握と耐震診断実施計画の策定を依頼し、全国的な取り組みの強化を図りました。17年度までに全ての公立学校施設の耐震診断を終えようと簡易優先度調査を専門家会議の強力を得て提起する等、上のグラフを見れば、文部科学省の粘り強い取り組みは9年にして最終段階を迎えました。
2006年1月施行された改正耐震改修促進法は、地方公共団体に対して耐震改修促進計画の立案を求め、とりわけ公共建築物については速やかな耐震診断、結果の公表、整備プログラム策定を求め指示等の対象に幼稚園、小中学校、老人ホーム等を追加しました。特定建築物の規模要件を強化し、地方公共団体の指示に従わない特定建築物を公表するという内容は、自ら保有する公立小中学校の耐震化を遅らせる口実がなくなりました。
耐震改修を求める各法令では、結果の公表を求めていますが改正耐震改修促進法は様々な口実で公表を避ける自治体等の学校設置者の姿勢と責任を糾す上で大きな効果をあげつつあります。
四川大地震における学校施設の倒壊と人命の被害を受け、2008年「地震防災対策特別措置法」(6月)と「教育振興基本計画」(7月)が策定・施行され、地震によって倒壊の危険性の高い公立小中学校施設1万棟を5年計画で優先して耐震化を図ることとし、Is値0.3未満の建物については、補助率を1/2から2 /3へ引き上げるなど前倒しのための予算措置を20年補正予算、21年当初予算、21年補正予算と国としての財源的措置は十分に行ってきたと言えます。学校施設の耐震化の遅れは、自治体での抜本的な取り組み強化策にかかってきました。
耐震化の課題だけに留まらず、急速な住宅開発により開設された学校の維持管理の負担は増大し老朽化が深刻です。学校施設耐震化の遅れる市町村を現状の水準で放置したまま地方への財源移転が行われ、国が責任を負うべき義務教育施設の安全性は深刻な打撃を受けつつあります。