無いはずの
アスベスト
社会問題化

 尼崎市の旧クボタ尼崎工場周辺の住民被害が明らかにされアスベスト被害の大きな広がりが社会問題化する中で、学校をはじめとする公共施設のアスベスト使用が緊急調査されてきました。
  1987年、1988年の全国調査では、公立小・中・高校、大学、幼稚園の1500校・園・機関で使用されていることがあきらかになり、私学でも450以上の校園で使用されていました。アスベスト吹きつけ材の除去工事への補助事業は、3分の1を国が行うとなって、2004年までに公立学校1001校が補助事業での除去工事を完了しました。吹田市でも教室天井に吹き付けられていたアスベスト除去が古江台小学校などで実施され、「アスベストはない」はずでした。

 

青山台小学校
吹きつけ材

15教室と廊下の天井に残る

 事実上の再調査になった今回の緊急調査の結果、多くの自治体で学校での除去工事から漏れていた事例が報告されてきました。9月27日に文部科学省がまとめた中間結果では、全国の公立学校807校で使用が確認され144校で飛散していた可能性が報告されました。10月中旬を過ぎて、吹田市でも、青山台小学校で15教室と廊下の天井1000以上が白石綿を含む吹きつけ材が残っていることが明らかになり普通教室に使っていた5クラスが10月18日に緊急に移動する事態が発生しました。過去の撤去工事では、含有率が5%を下回っているとして除去の対象にはされなかった部分でした。
 仮覆い等の措置を行ったあと、撤去等の工事は2006年夏に行われる予定ですが、撤去費用だけでも5000万円近い金額が見積もられています。
  また、2004年春まで調理が行われていた給食調理場の天井に残っている事例や電気室、階段室のスチール屋根の裏側に吹き付けられている事例等7校での使用が報告されています。
 今回の緊急調査では、主にアスベスト吹きつけ材がクローズアップされていますが、吹きつけ材が劣化によって剥離・脱落する時間経過を前提にしたプロセスで周辺を汚染することに比べ、アスベストを含む建材は児童・生徒の学校生活の身近なところに多様な形で存在し、施設の利用と共に微量ずつ飛散するため有効な対策をたてることが困難な分より深刻と言えます。

 
 

アスベストは

身近に存在

アスベスト汚染の深刻さは、アスベストが建築資材として広範囲に使われてきたことにあります。
2002年12月に厚生労働省が設置した「アスベストの代替化検討委員会」は、製造業界と使用する業界のヒヤリングを行っていますが、情報公開法により明らかにされた委員会の内容からは、国民生活のあらゆる分野にアスベストが存在していることが明らかになっています。
 建材だけを見ても、 屋根材・防水材から窯業系サイディング外壁材、内装の天井材、壁材、床材等にも及び、工事で使用するシール材やパッキング材の製品にも使用されてきました。壁紙への使用もありました。
 社会問題化により、多くのメーカーでは、アスベストを含んでいた自社製品と取り扱い方法の注意点などをホームページで明らかにし、慎重な扱いを呼びかけています。

 

混ぜられて

老朽化
環境 を汚染

 

 アスベストは、その持っている特性から断熱性能や耐火性能を上げるためだけでなく、耐久性を与えるためにも産業界では重宝されセメント、珪酸カルシュウム、塩化ビニール樹脂等に混ぜられ多くの製品となっています。シール材等では、価格の安価なことと性質の安定性からパウダー状にしたアスベストを増量材としても使われてきました。
 樹脂床材には、塩化ビニール樹脂15〜30%にアスベストと珪酸カルシュウムが混ぜられていますが、校舎の廊下に使われている場合持ち込まれた砂が児童・生徒が歩くことで表面を研磨し、飛散するおそれがあります。学校では、ワックス塗布が学期に1回程度しか行われず、業者が頻繁にメンテナンスする事務所ビルに比べ研磨の危険性は格段に高いからです。
 校務員が現場で補修するとき、古くなった床材はもともとあった2ミリの厚みが1ミリ程度に薄くなっている例もあります。床材用接着剤にも、 アスベストは含まれていました。


 

ガラス窓に使われたパテ

 昔は、ボイル油や乾性油でアスベストと珪酸カルシュウムを練って使いました。40年経てば写真のようにひび割れボロボロになります。
 ガラスが破損したときこのパテを除去してから入れ替えることになりますが、そのときアスベストが飛散します

 
   
 

化学床タイルは、塩化ビニール樹脂にアスベストと珪酸カルシュウムで製造していました歩行による研磨と樹脂の劣化に伴う飛散汚染が問題です。

床用接着剤には、増量材としてアスベストが入っていました。

 

 土壌改良材
バーミキュライト
アメリカで問題に

 

 

 園芸用の土壌改良材として広く市販されているバーミキュライトにも、アスベストが含まれアメリカでは1990年代に園芸農家や園芸家が汚染被害を受けたと問題になりました。
 アスベストの需要拡大のため、土壌の排水改良等を謳って商品化した企業の過失が認められ、訴訟に負けた鉱山は廃鉱に追い込まれました。
 日本での実態は、明らかではありませんが、学校でも教材や栽培に使われ、残土が不用意に学校の敷地内に撒かれ処分していたり本格的な調査と指針が求められています。

 

 

 アスベスト輸入量と規制の推移