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   ● 頚椎症 ●
   
■ どのような病気ですか?
   
   首の痛み・肩・腕・手にかけての痛みやしびれが起きます。原因は頚椎の加齢性の変化(変性)です。40歳を過ぎるころにはすでに頚椎には変性が生じています。
1.変性して痛みを起こす原因として問題をおこすのは椎間板・椎間関節です。
2.続いて骨の変形・骨のずれ・不安定性、椎間板ヘルニアがおきます。
3.変性のために頚椎の中を通る神経が圧迫されると神経症状がでます。
   ■ 症状は? 頚椎の変性とは?
   
 赤いところに痛みやしびれを感じます
1.変性そのものの症状
2.変性の影響による神経痛・しびれの症状
 の2つに分けられます。変性した局所に炎症性が起きていて痛みの原因となります。もっとも問題となるのが神経の症状です。頚椎を通る神経の本幹の脊髄(せきずい)と枝にあたる神経根(しんけいこん)がおされる場合で症状が違います。頚椎症で生じる場合は次の2つに区別しています。両方の症状がでることもあります。
1.頚椎症性脊髄症
2.頚椎症性神経根症
 脊髄症では手足のしびれがでます。神経根症では、腕や肩の痛みが続きます姿勢によって痛みが強くなるために、夜に寝る姿勢で痛みがでると不眠の原因になります。上を向くと首の痛みや神経の伸びてる手先まで痛みやしびれが走ります。下図に首を反らすと神経がはさまる様子をイラストに示します。
 
    → 脊髄症・神経根症の解説のページも参考にしてください。

A. 変性から変形・不安定性が生じる仕組みを説明します。  
 最初に、頚椎を曲げ伸ばしするときにクッションの役目をする椎間板が変性してきます。クッションの役目をする椎間板は丈夫な線維輪(せんいりん)という袋の中にやわらかく水分の多いゼリーのような髄核(ずいかく)が詰まっています。年をとると髄核は水分を失ってきて弾力性が低下してきます。線維輪は徐々に弱くなってきて亀裂が入ってきます。椎間板はつぶれてくると同時に硬くなってきます。椎間板のクッションの働きが悪くなると椎間板の上下の椎体(ついたい)どうしがぶつかったり、頚椎を後ろで支える椎間関節(ついかんかんせつ)の負担に影響してこの関節が摩耗してきます。骨がぶつかるところには骨棘(こつきょく)という余計な骨の飛び出しができてきます。
B. 変性から神経症状が生じる仕組み
 骨の並びがずれたり、骨が変形してくると脊髄の通り道である脊柱管や脊髄から枝分かれして腕や手に伸びてゆく神経根の通り道である椎間孔が狭くなります。椎間板の中身の髄核が線維輪の亀裂から飛び出してくることを椎間板ヘルニアといいます。
   ■ 治療法は?手術は必要ですか?
    脊髄は脳と似て、デリケートな神経細胞のかたまりです。首から下の運動と感覚、内臓のはたらきに関係する神経がつまっています。脊髄の神経細胞が死ぬと、現在の医療水準では二度と再生させることはできませんので、そのために脊髄症がある場合はつねに手術を念頭におかなければなりません。症状は徐々に進行していきます、高齢化社会になり高齢の方で脊髄症の手術を受ける方は増えています
 一方で神経根は神経細胞から遠く手足の先までむかう神経線維の束です。 神経細胞をコンピューターの本体に例えると、神経根は信号を周辺機器に送るケーブルにあたります。さいわい神経線維は治る可能性があります。神経細胞本体が生きていると本体の方から線維が再度伸びて行きます。最初は薬物療法や理学療法を行い痛みやしびれがおさまってくれば、神経の障害もなおる可能性があります。完全に治るかどうかは損傷の程度、年齢、影響しそうな持病の具合によります。変性は年をとるとさらに進みますので、症状を再発させる可能性のある生活上の注意点などに留意することが大切です。このような症状がとれることを目的にした対症療法には、神経の炎症が治まることや痛みを抑える鎮痛消炎剤をよく使います。神経に効くビタミン剤や神経の血流をよくする薬も効果があります。首を温めたり牽引する理学療法なども効果が期待できます。
   ■ 手術するタイミングは?
   本人ががまんの限界にきたら手術を決断するという場合もありますが、自己判断では手遅れになることがあります。手術の効果が期待できるタイミングは限られています。対症療法だけでよいか画像検査などで神経の圧迫の程度を調べるのがよいでしょう。脊髄症は学会が推奨している点数つけによる評価基準(JOAスコア)も参考になります。対症療法を続ける場合や経過だけみてる場合には、手術のタイミングを逃さないために次の点を念頭においておく必要があります。
1。脊髄の障害は回復が悪いということ
2。やせ細った筋肉は回復しない可能性があること。麻痺の状態が長く続くと、
  手術で神経がよくなっても、筋肉が回復しないことがあります。
3。しびれは治りにくいこと。
  びりびりするようなしびれは敏感な神経が感じている雑音です。
  一度雑音が混ざってしまうとなかなか自然には消えません。
4。痛みがとれなくなる可能性がある。
  神経の回路は複雑なために、痛みが長く続くと原因をなおしても痛みの信号
  が止まらなくなることがあります。神経回路が痛みを記憶すると表現されます。
   ■ 症状がある場合はどうしたらよいですか?
   肩・腕・手の痛みやしびれの原因となる病気はいろいろあります。似たような症状を引き起こすで危険な病気の可能性もありますので、受診して正しい診断を受けることが大切です。レントゲン検査で頚椎の変化がよくわかります。骨の並びや骨棘が鮮明に写るのは骨の断面像がみられるCTです。椎間板ヘルニアや神経の状態はMRI検査でよくわかります。MRI検査は体に負担もなく神経の圧迫の程度をみることができる非常によい検査ですのでお勧めしています。