トップページ  病気の解説  手術の説明  くすりの説明  その他
   ● 頚椎後縦靭帯骨化症 ●
   
■ どのような病気ですか?
 
   後縦靭帯(こうじゅうじんたい)は頚椎をつなぐ靭帯です。この靭帯は椎体どうしを後ろ側で縦に連結していることから後縦靭帯と呼ばれます。原因はよくわかっていませんがこの靭帯が厚く硬くなってきます。靭帯は徐々に厚さをまして、厚くなった靭帯の内部は徐々に骨に置き換わります(骨化、こっか)。脊髄の前の靭帯が分厚く固くなると脊髄が圧迫されます。骨化の進行のスピードによって40歳から70歳ぐらいまでに神経の症状が出る患者さんが多いです。
   ■ どのような症状がでますか?
   
 赤いところにしびれや痛みを感じます
   骨化病変で押される脊髄の症状がでる脊髄症のタイプと、脊髄から分かれてでる神経根の症状がでる神経根症のタイプがあります。脊髄症だと、最初は肩こりのような首の痛みや、手足のしびれといった脊髄症症状の場合が多いです。神経根症だと、首から肩・腕・手にかけての痛みとしびれです。
 → 脊髄症・神経根症の解説のページも参考にしてください
   ■ 治療法は?
   一度できた骨化病変を根治的に治療する薬は現時点ではありません。神経根症の場合は症状だけ取り除くことを目標にする対症療法(たいしょうりょうほう)によって困っている痛みやしびれが軽くなる可能性があります。神経の炎症が治まることで痛みが軽減することが期待できます。神経に効くビタミン剤や神経の血流をよくする薬も効果があります。骨化病変は硬くて脊髄にあたった状態にあるため、首の運動や牽引などはつねに危険が伴います。脊髄症を生じている場合は脊髄の性質を考えると骨化病変を取り除く手術を念頭におかなければなりません。脊髄は脳と同じようにデリケートな神経細胞のかたまりです。首から下の運動と感覚、内臓のはたらきに関係する神経細胞でできています。脊髄の神経細胞が死ぬと、現在の医療水準では再生させることはできません。
   ■ 手術のタイミングは?
   がまんの限界にきたら手術をするような方もおられますが、自己判断では手遅れになる場合があります。手術の効果がある時期は限られます。脊髄症では学会が推奨している点数つけによる評価基準(JOAスコア)が参考になります。脊髄症でも神経根症でも対症療法を続けたり経過だけみている場合では以下の点に注意が必要です。
1。脊髄の障害は回復が悪いという点
2。筋肉の麻痺の状態が長く続くと筋肉が痩せます。
  放置していると神経が回復しても筋肉がもとに戻らない可能性があります。
3。しびれは治りにくいこと。
  びりびりするようなしびれは敏感な神経が感じている雑音です。
  あるタイプの雑音は一度混ざってしまうと二度と消えない可能性があります。
4。痛みが慢性化することが知られていること。
  神経の回路は複雑なために、痛みが長く続くと原因を治しても痛みの信号が
  止まらないことがあります。神経回路が痛みを記憶すると表現されます。
   ■ 症状がある場合はどうしたらよいですか?
   肩・腕・手の痛みやしびれの原因となる病気はいろいろあります。似たような症状を引き起こすで危険な病気の可能性もありますので、受診して正しい診断を受けることが大切です。レントゲン検査で頚椎の変化がよくわかります。骨化病変はCT検査で鮮明に写ります。神経の圧迫の程度はMRI検査でよくわかります。MRI検査は体に負担もなく神経の圧迫の程度をみることができる非常によい検査ですのでお勧めしています