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  ● ページのテーマ ●
1.頚椎の機能と構造 
2.頚椎の病気はどこに起きるの?  
3.神経症状とは? 
4.脊髄症と神経根症の2つタイプがあります
5.どんな病気があるのか? 
   *このページは頚椎に起きる脊髄症・神経根症をよく理解するために
  基本的なところから解説するページです。
■ 頚椎の機能と構造
   
   首の部分の脊椎を頚椎(けいつい)とよびます。頚椎の働きは次の3つです。
 1.頭を支える支柱としての機能
 2.曲げたり伸ばしたり回したりする運動機能
 3.脊髄神経を中に通すパイプとしての機能
 これらの機能を果たすために複雑な構造でできています(上図)。頚椎の主な6つの部品:椎体(ついたい), 椎間板(ついかんばん), 椎間関節(ついかんかんせつ), 神経, 筋肉, 靭帯(じんたい)からできています。7つの椎体(ついたい)が縦に連結してできた一本の柱の弾力性と筋肉の力で重い頭を支えています。上下の椎体の間は、おなか側ではクッションの役目をする椎間板(ついかんばん)で連結されています。背中側は椎間関節(ついかんかんせつ)という関節で連結されています。さらに靭帯(じんたい)が骨同士の連結と関節を補強しています。図には示していませんが全周にわたって筋肉が骨を取り囲んでいます。首を曲げ伸ばしするときは、硬い椎体の間にある弾力性のある椎間板が膨らんだり凹んだりします。これに合わせて椎間関節が動きます。首を回すときは椎間板がねじれるのにあわせて椎間関節が少しづつずれます。頚椎の背なか寄りに脊髄神経を通す脊柱管(せきちゅうかん)というトンネルがあります。脊髄神経は脳の続きです。頭を出て首のこのトンネルを通って手足へ伸びてゆきます。本幹である脊髄神経は骨の壁に守られて腰の方へと伸びていく途中に細い枝の神経を規則正しく出していきます。枝の神経は神経根(しんけいこん)と呼ばれていて椎体の間の椎間孔(ついかんこう)というスペースを通って手や腕へ伸びてゆきます。
■ 頚椎の病気はどこに起きるの?
   このホームページでとりあげている病気に関係する頚椎の構造物は次の2つです
 A. 年をとることで傷んでくる椎間板と椎間関節
 B. 困った症状を引き起こす神経
 日常生活, 仕事, スポーツのなかで, 長年に荷重を支えて動きを担う椎間板と椎間関節に問題が起きてきます。椎間板は弾力を失ってつぶれてきます。一方で椎間関節は強い力を受け止め続けてきたために、関節がすり合わさるところにある軟骨はすり減ってきます。関節のかたちもごつごつと変形してきます。筋肉、靭帯といった部分は治る力が強いので、痛みが出ても多くの場合はじきに治ってしまいます。それに対して椎間板や椎間関節が傷んで生じる痛みは、これらが元通りには治らないために、繰り返して問題を起こし、慢性的な痛みの原因になります。
 首から肩・腕にかけて強い痛みがあったり、しびれがある場合は神経が原因の症状である可能性があります。痛みが強い・治らないという理由で整形外科を受診して手術を受ける場合で最も多いのは神経に病気が及んでいる場合です。虫歯に例えると、軽い虫歯になっていても気がつきませんが、虫歯が神経に及ぶと堪え難い痛みのために必ず歯医者さんを受診することになるのは経験したことがある人ならおわかりでしょう。神経痛がひどくなってくると、ふつうの痛み止めは効きません。
   ■ 神経の症状とは?
   脊椎の病気でどのような神経の症状がでるのかを考える前に、神経の働きについておさらいします。脳から出た神経は手足の皮膚・筋肉・骨・関節に伸びて、これをコントロール(支配)します。支配というのは神経が伸びた先の場所(領域)ではその神経を伝って体からの情報が脳へ伝えられていることと、その神経を伝って脳からの命令がとどいて、その領域に作用していることを意味します。神経には主に3つの働きがあります。
 1。痛みや触っている感じ・温度・体の位置を感じる働き(知覚神経)
 2。脳からの命令を筋肉に伝えて手足の筋肉を動かす働き(運動神経)
 3。内臓の動き・血管をコントロールする働き(自律神経)
 の3つの働きです。これらの正常な機能が障害された状態が病気ですから、それぞれの機能に関係する症状が生じます。 神経の機能が障害される原因は大別すると2つに分けられます。
 1.神経そのものが病気で侵される神経の病気
 2.神経が外力で障害を受ける場合
 整形外科で診療することが多いのは上の2番にあたる、神経がなんらかの原因で圧迫されて生じる神経症状です
   ■ 脊髄症と神経根症の区別
   頚椎の病気で障害される可能性があるのは、脊髄という一本の本幹と、本幹から途中で枝分かれして目的の領域に向かう神経根の2種類です。脊髄と神経根では性質が大きく違います。脊髄の性質は脳と同じく神経細胞のかたまりなので、やわらかくてデリケートです。それに対して神経根は神経から伸びた手足のような神経線維の束です。脊髄が圧迫される脊髄症(せきずいしょう)と神経根が圧迫される神経根症(しんけいこんしょう)と呼んで区別します。両方の神経が障害される場合もあります。
 
  A. 神経根症を理解する
 神経根が押されて生じる症状は次の3つです
 1.神経痛  
 2.知覚の低下、知覚の異常の症状:しびれ
 3.運動機能の低下の症状:まひ
 一番つらい症状は神経が支配している領域に感じる”神経痛”です。
寝違えかなと思っていた首の痛み以外に、腕や手の方へ広がる症状がでてくるのが特徴です。知覚の異常として”触っている感じがわからない”, ”しびれている”という症状がでます。神経の障害が強いと”力がはいらない”という運動の麻痺がこの支配領域にあらわれます。神経痛は首から肩, 腕, 指先にかけてと肩甲骨周囲にも痛みがでます。首から手に向かっては4本程度の神経が伸びています。神経根症で障害されるのはこのうちの一本ですから腕や手の一部分に痛みを感じます。おなじところにしびれを感じることも多いです。麻痺が生じると腕の力や握力が落ちるためにフライパンが持つ手に力が入らない、ペットボトルのキャップが開けられないことに気がつきます。上の右の図のように首を動かしたり、首の向きで痛みが走り、しびれが強くなります。夜に痛くて眠られない頭の向きがあるのに気がつくこともあります。
   
   B.脊髄症を理解する
 脊髄が押されて生じる症状は次の3つです
 1.知覚機能の低下・異常:しびれ
 2.運動機能の低下・異常:まひ・こわばり
 3.自律神経機能の低下:排尿と排便の異常
 脊髄は手足にゆく神経の本幹です。脊髄が押されると手指と足先にしびれが出始めて、しびれが最初は右か左だけでも徐々に両手、両足へと広がります。指先の感覚がないために、ボタンがかけにくかったり、ポケットの中を指先でさぐって小銭がとれないといったことに気がつきます。手足の運動の障害は、始めはこわばったり、つっぱったりする動かしにくさではじまります(痙性麻痺、けいせいまひ)。指がこわばって字が書きにくい・お箸がうまく使えないとか、スムーズに足が運ばないために階段を下るのが怖くなります。病状が進行すると手足の力が入らなくなりふらついて歩けなくなってきます。体中に伸びてゆく神経の本幹には排尿や排便をコントロール神経も含まれえいますので、これが障害される症状がでます。頻尿、排尿困難、尿漏れや便秘といった症状がでます。
   ■ 神経を圧迫する代表的な病気
   神経が圧迫される代表的な病気を下にあげます。
 1.頚部脊柱管狭窄症
 2.頚椎椎間板ヘルニア
 3.頚椎症
 4.後縦靭帯骨化症
 詳しくはそれぞれの病気のページに説明があります。
   
    → 詳しくはそれぞれの病気のページをご覧ください