述語論理 の意味論 : トピック一覧  

・議論領域、世界universe
・付値関数valuation function   
・モデルmodel
・解釈・構造structure・フレーム   



命題記号・原子式[命題変数/命題定数]
論理記号・結合子  
論理式 / n個の命題変数から帰納的に定義される論理式 / 論理式の形成木 / 部分論理式    

 * 論理関連ページ:
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       論理式間関係の意味論[矛盾/推論] 
   命題論理のシンタクス
 * 論理目次/総目次/更新履歴 




議論領域  domain of discourse  


戸田山:

林:「領域とは空でない集合のことである。
  領域はDで書くことが多い。」

古森小野:
 ・言語Lの構造Aの世界|A|とは、
  空でない集合。
 ・言語Lの構造Aの個体individualとは、
  |A|の元のこと。  

         





【文献】
 ・戸田山『論理学をつくる』6.1.1(p.134)「議論領域domain of discourse」;6.2.1(p.136) 
 ・林晋『数理論理学』2.2.1-定義2.1(p.51):「領域」
 ・古森小野『現代数理論理学序説』定義2.3.1(p.79)「世界universe」,「個体individual」
 ・高崎金久『数理論理学入門V. 述語論理の意味論-2.3 :対象領域
 ・鹿島『数理論理学』3.2(p.42)対象領域domain.脚注でuniverseも併記。
 ・戸次 『数理論理学』5.3.2(p.94):「領域DM」-「存在物entity」
 ・清水『記号論理学』§2.2(p.46):領域domain.

 以下は今後チェック。

 ・Enderton "A Mathematical Introduction to Logic"2.1(pp.69-73)"variables"



 


付値関数  valuation function   

・付値関数Vとは、
   述語記号Piには、議論領域Dの部分集合を割り当てるV(Pi)⊂D
   個体定項aiには、議論領域Dの要素を割り当てるV(ai)∈D
 関数のこと。


林:「式が自由変数をもてば、
  その真理値を決定することはできない。
   変数は何かの対象を表すための名前にすぎないから、
   名前がなにを表すのか決めない限り式の意味は決まらないからである。
   自由変数が表す値を決めれば式の真理値を決定できる。
   変数が表す値を決めるものを付値という。(p.50)」
 「形式言語の個体変数の集合VarからDへの関数を付値という。
   付値はρ、ρ1,ρ2…で表すことにする。(p.51)」

         





【文献】
 ・戸田山『論理学をつくる』6.2.1(p.136)「付値関数valuation function」 
 ・林晋『数理論理学』2.2(p.50);2.2.1-定義2.1(p.51):「付値」

 ・Enderton "A Mathematical Introduction to Logic"2.1(pp.69-73)"variables"



 



モデル  model   

・モデルとは、
  議論領域Dと付値関数Vのペアのこと[戸田山]。
 だから、
 モデルを決めることは、
 (1)議論領域として何らかの集合を決める
 (2)述語記号Pに対してDの部分集合を割り当てる
 (3)個体定項に対してDの要素を割り当てる
 ということ。[戸田山]  


         





【文献】
 ・戸田山『論理学をつくる』6.2.2(pp.136-8)「モデルmodel」.彼の述語論理には、関数記号がない。 

 以下は今後チェック。
 
 ・Enderton "A Mathematical Introduction to Logic"2.1(pp.69-73)"variables"



 



モデルMのもとで論理式Aは真/偽であるとは?




記号の指示対象の設定:「構造structure」「解釈」「フレーム」

【ビギナー向け定義】

『一階述語論理の言語(記号集合)』Lに属す記号の意味を解釈するためには、
 『一階述語論理の言語(記号集合)』Lに属す記号が、何を指し示しているのかについて、
 あらかじめ了解ができていなければならないし、
 『一階述語論理の言語(記号集合)』Lに属す記号が指し示し何かを了解する際には、
 『一階述語論理の言語(記号集合)』Lに属す記号が指し示す範囲がいかなる領域なのかについて、
 あらかじめ了解ができていなければならない。
・つまり、
  あらかじめ
  Lが指し示す領域が設定されたうえで、
  その領域のなかの何を《Lに属す記号》が指示しているかについて設定されていること
 によって
 《Lに属す記号》の意味解釈は初めて可能となる。

・《Lに属す記号》を意味解釈する基盤となる
  1.《Lの領域domain》の設定
  2.《『Lの記号』から『Lの領域のなかの何か』への指示》の設定
 の組み合わせを、
 Lの「構造structure」「解釈interpretation」「フレームframe」などと呼ぶ。
  (戸田山は「Lのモデル」と呼んでいるが、他の概念で「モデル」と呼ばれるものもあって、混乱が生じそう…)
・Lの構造という設定は、いろいろなバリエーションをとりえるので、
 個々の設定に、《Lの構造》Mなどと、ラベルをつける。

・《Lの領域domain》すなわち、《Lに属す記号》が指し示す範囲は、
 「対象領域」「議論領域domain of discourse」「世界universe」などとも呼ばれる。
 《Lの領域》に属す元は、「存在物entity」(戸次)、「個体individual」(古森)、「対象」などと呼ばれる。
 《Lの領域》は、Lの「構造structure」によって色々設定されるので、
 《Lの領域》の個々の設定は、その設定をした《Lの構造》のラベルをつけて呼ばれる。
 たとえば、《Lの構造》Mにおける《Lの領域》など。

・《『Lの記号』から『Lの領域のなかの何か』への指示》は、「対応付け」(戸次・清水)「対応」(高崎)などと呼ばれる。

  (戸田山は、「割り当て」「付値関数valuation function」などと呼ぶ。戸次の用法とのあいだで混乱が生じそう…。)


【領域のテクニカルな定義】

 空でない集合。

【《『Lの記号』から『Lの領域のなかの何か』への指示》のテクニカルな定義】

 個体定項を表す記号
 関数記号
 述語記号
 の個々について、Lの領域の何を指示するかの設定の組み合わせとして定義される。
 ただし、述語記号がLの領域の何を指し示すかについては、教科書の間で揺れがみられる。
      タイプ1:領域の直積のどの部分集合を指し示すかについての設定とするもの(述語記号が表す述語の真理集合?)[松本・古森]
      タイプ2:領域に属す元の組み合わせから{真,偽}への写像を指し示すとするもの[戸次・高崎]
      タイプ3:Lの領域を議論領域とする述語を指し示すとするもの[清水]

  

・松本「フレーム」
 言語Lとは
  自然数論、実数論、集合論などいろいろの数学理論に現れる具体的な用語を、
  一般的に形式化したものであった。
  したがって、Lに現れるものは意味のない記号の列にすぎない。
 Lの論理式は、
 これを構成している各記号が具体的に何を表すかという解釈interpretation
 が与えられたとき、
 はじめて意味を持ってくる。
 そして論理式が正しいかどうかが定義できる。
 このようにLに解釈として与えられる具体的な対象とその解釈―対応―をフレームということにする。
 フレームの定義を厳密に述べれば次の通りである。
  定義4
   1)Mを空でない集合とし、フレームの領域という。
   2)c'i (i=0,1,2,…).ただしc'i∈Mとする。Lの対象定数ciからc'iへの写像をρで表す。
     c'iはLの対象定数に対応する具体的な対象を表している。
   3)f'in(n=1,2,…;i=0,1,2…).
     ただしfinをn変数の関数記号とするとき、
         f'inはMのn個の直積MnからMへの一意写像(Mのoperation)である。
     Lの関数記号finからf'inへの写像をσで表す(f'inはLの関数記号に対応する具体的な対象を表している)
   4)P'in(n=1,2,…;i=0,1,2…).
     ただしPinをn変数の述語記号とするとき、P'inはMのn個の直積Mnの部分集合である。
     すなわち、〈v1,…,vn〉の形の元からなるある集合を現し、vi∈Mである。
     Lの述語記号PinからP'inへの写像をτで表す。
      P'inはLの述語記号に対応する具体的な対象―Mのn個の元のある関係―を満たす
         順序対の全体を表している。 
  以上1)〜4)の集合M=[M;ρ;σ;τ]をLの一つのフレーム(frame)という。
  MはLのすべての記号や表現を集合Mに関する記号や命題などに対応させるはたらきをもっている。
  対応ρ,σ,τのかわりに対応するMの元をもちいて、
   M= 
  と書くこともある。

・古森小野「構造」:
 《第一階述語論理の言語》Lの構造Aは次の三つのものから構成されています。
  1.Aの世界universeと呼ばれる空でない集合|A|
      |A|の元をAの個体individualといいます。
  2.《第一階述語論理の言語》Lの各々のn変数関数記号fに対して、
    |A|から|A|へのn変数関数fA   
    とくに《第一階述語論理の言語》Lの0変数関数記号eに対して、eAAの個体。 
  3.《第一階述語論理の言語》Lの各々のn変数述語記号pに対して、
    |A|のn個の直積|A|nの部分集合pA    
      * (c1,…,cn)∈pApA(c1,…,cn)と書きます。

・清水「解釈」:
  「解釈」(interpretation) とよび(以下Iで表す)とは、
   論理式を構成する諸記号のうち、述語記号、関数記号、個体常項、個体変項への意味づけ。
   領域Dを与えることと、
   Dによって制限されながら諸記号の各々へ具体的な意味を対応付けること(この対応付けをVで表す)からなる。
   I=〈D,V〉と表すことができる。
  
  その手順を次のように定める。
  1) 解釈の「領域」(domain)と呼ばれる空でない一つの集合(以下Dで表す)を決める。
    なおDをどのような集合にするかは任意である。すなわち、たとえばDを人間の集合としても、自然数の集合などとしてもよい。」  
  2) 述語記号Piに対しては、1)で決めたDで有意味となる述語を任意に選んで対応させる。(議論領域をDとする述語)
    ただしDで有意味な述語とは、
       Dの要素をその述語の主語としたとき生ずる文についてその成立・不成立が問題にし得るような述語のこと。
    たとえば、Dを人間の集合とした場合、「医者である」はDで有意味であるが、「素数である」はDで有意味とはいえない。
  3) 関数記号fiに対しては、1)で決めたDの要素からDの要素への対応を与える関数を任意に選んで対応させる。
    Dを自然数の集合とした場合、たとえば、f1(a1,a2)のf1には、自然数上の加法+とか乗法×などを対応させる。
  4)個体常項aiに対しては、1)で決めたDの要素を任意に選び、その名前を対応させる。
   Dを人間の集合とした場合、たとえばa1に対しては「ジョン」を、a2に対しては「ヨーコ」を、というように対応させる。
  5)自由変項xiに対しては、1)で決めたDの要素を任意に選び、その名前を対応させる。
   すなわち自由変項についても、個体常項と同様に取り扱う。   

・鹿島「ストラクチャー」
 下記をあわせたものをストラクチャーとよぶ。
 (1)命題記号への真理値割り当て
 (2)変数記号が指しうる値を集めた集合。これを対象領域domainと呼ぶ。
   対象領域。これは空でない集合である。
 (3)定数記号、関数記号、述語記号それぞれを対象領域上でどのように解釈するか。
   定数記号の解釈、関数記号の解釈、および等号以外の述語記号の解釈。
   これらは対象領域上の要素や関数や述語である。

戸次 『数理論理学』5.3(pp.94-95):
・「構造structure」:領域と対応付けの組
・「領域」DM:「存在物entity」の集合。ただし、空集合ではないこと。
       その一階述語論理において、
       論理式がどのような対象について命題を述べているのかは、
       領域をどのように与えるかによって決まる。
       (ex)N,R  
・「対応付け」FM: cf.「割り当てassignment(p.94)」「付値関数とも言う」
   一階述語論理の構文に現れる各要素(のうち変項以外)の指示対象を決める写像。
   以下の三つを合わせたもの。
    1.名前の集合からDMへの写像 
      αが名前の場合、FM(α)∈DM 
               FM(α)は、DMに属す存在物。 
    2.n項演算子の集合から、「『領域の直積(DM)nから領域DMへの写像』をすべてあつめた集合」への写像
      oがn項演算子の場合、FM(o)∈「『(DM)nからDMへの写像』をすべてあつめた集合」  
                つまり、 FM(α)は、『領域の直積(DM)nから領域DMへの写像』の一つ。 
    3.n項述語の集合から、「『(DM)nから{真,偽}への写像』をすべてあつめた集合」への写像
      θがn項述語の場合、FM(θ)∈「『領域の直積(DM)nから{真,偽}への写像』をすべてあつめた集合」
                つまり、 FM(θ)は、『(DM)nから{真,偽}への写像』の一つ。 
 cf.「対応付け」FMと区別される「割り当てassignment(p.94)(付値関数とも)」は、
   変項の集合から「領域」DMへの写像。  
       

高崎:2.3 意味解釈のための構造
  (記号集合 L = (Var, Const,Func,Pred) に対して)L-構造とは、
    1. 対象領域D:は集合である.D を Dom(M) とも表わす.
    2. 対応MConst :各 c ∈ Const に対して,
              D の要素 cM = MConst[c] を対応させるもの
    3. 対応MFunc :各 f ∈ Funct に対して,
              ある個数(f によって決まる)n の変数をもつ函数 fM = MFunc[f]: Dn --> D
               を対応させるもの
    4. 対応MPred :各 P ∈ Pred に対して,
            ある個数(P によって決まる)n の変数をもつ函数 PM = MPred[P]: Dn --> {T,F}
              を対応させるもの
      
  からなる集合・対応の組 M = (D,MConst,MFunc,MPred)

  L-構造は、
    Lの記号 (変数記号,定数記号,函数記号,述語記号)に、
  具体的な対象への対応付けを与えることで、記号集合Lから組み立てた論理式の意味を定める。 

林「解釈」:
 「述語記号や関数記号が意味しているものがなにかが
   決まらないうちは付値が決まっても原子式の意味が決まらない。
   個体変数の表す対象の領域、
   関数・記号の意味を決めるものを解釈という。(p.50)」
 「ある形式的言語Lの領域D上の解釈とは、
  個体定数の集合COnst,
  関数の記号の集合FUnc,
  述語記号の集合Predの和集合の上で
  定義された関数Mで次のような条件を満たすものである
    1.cが個体定数ならばM(c)=D
    2.fが項数nの関数記号ならばM(f):Dn→D。。
    3.Pが項数nの述語記号ならばM(P):Dn→Ω(Ω={真,偽})。(p.51)」
    4.xとyが等しければ
    5.M(矛盾記号)=false

         





【文献】
 ・松本『数理論理学』2.1.B.a.定義4(pp.30-31)
 ・林晋『数理論理学』2.2(p.50);2.2.1-定義2.1(p.51):「付値」
 ・鹿島『数理論理学』3.2一般の論理式の真偽とストラクチャー(pp.41-50)。定義3.2.2ストラクチャー(p.44):命題記号への真理値割り当て、対象領域、定数記号の解釈・関数記号の解釈、述語記号の解釈
 ・古森小野『現代数理論理学序説』定義2.3.1(p.79)「構造structure」
 ・高崎金久『数理論理学入門V. 述語論理の意味論-2.3意味解釈のための構造 :(記号集合Lに対して)L-構造

 ・戸次 『数理論理学』5.3(pp.94-95):「構造structure」(領域と対応付けの組)「領域」「存在物entity」「対応付け」。cf.「割り当てassignment(p.94)」「付値関数とも言う」

 ・清水『記号論理学』§2.2-論理式の解釈(pp.46-7):「解釈interpretation」「領域domain」「対応付け」

 以下は今後チェック。
 ・Enderton "A Mathematical Introduction to Logic"2.1(pp.69-73)"variables"



 



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