命題論理 propositional logic の論理式 〜 1個の命題変数だけを含むケース  

1個の命題変数から帰納的に定義される論理式  
1個の命題変数だけを含む論理式の形成木
1個の命題変数だけを含む論理式の部分論理式  

 命題論理関連ページ:命題論理の論理式/命題論理の意味論[真理値/真理関数/真理値表/論理式の真理値の決定原理/真理値分析 ]     
   論理関連ページ:論理記号一覧    
 総目次

※述語の場合は、林晋,鹿島亮を参照。



1個の命題変数から帰納的に定義される論理式


ビギナー向け

 一個の命題変数から帰納的に定義される論理式[戸田山p.55]とは、
 一個の命題を表す文字のみを論理記号でつないだだけで表せる論理式のこと。   

厳密な定義

一個の命題変数Pから帰納的に定義される論理式[戸田山p.55]とは、
 「論理式の帰納的定義・回帰的定義」の[条件1]における命題記号原子式を、
   一個の命題変数P 
 に限定したときに、
 「論理式の帰納的定義・回帰的定義」によって定義される論理式のこと。




 * 論理式真理値は?→ 論理式の真理値の決定原理 
【文献】
 ●戸田山『論理学をつくる』3.5.1真理値分析とは何を やることだったのか3.5.2真理値割り当て(pp.55-8):真理値割り当てから、真理値分析でやっていたことを理解すると。。。



 ・野矢『論理学』1 -1-4付論2(p.45):5個の命題変数から帰納的に定義される論理式は、全部で42億9496万7296通りにのぼる。 
 →2個の命題変数から帰納的に定義される論理式  
 →n個の命題変数から帰納的に定義される論理式


・つまり、
 「Pから帰納的に定義される論理式」とは、
  下記[条件1][条件2]によって「Pから帰納的に定義される論理式」と認定されたもの。

    [条件1] 命題変数Pは「Pから帰納的に定義される論理式」である。

    [条件2] A,Bが「Pから帰納的に定義される論理式」であるならば、
          AB,AB,AB,¬Aは「Pから帰納的に定義される論理式」である。

厳密な定義を具体的に展開

・「Pから帰納的に定義される論理式」の上記定義は、
   ・個々の「Pから帰納的に定義される論理式」は、下記プロセスの各ステップによって認定されていくこと、
   ・「Pから帰納的に定義される論理式」と認定される対象の全範囲は、
     下記プロセスの無限継続の果てに「Pから帰納的に定義される論理式」と認定された対象の全軌跡であること
 を意味している。

・下記プロセスは、
    (step1)で[条件1]によって「Pから帰納的に定義される論理式」のタネを蒔き、
    (step2)以降で繰り返し[条件2]を適用することで、「Pから帰納的に定義される論理式」を増殖させていく
 という過程になっている。

・下記プロセス(step1)を完了しただけで、
  「Pから帰納的に定義される論理式」と認定される範囲は、
   最もシンプルなかたちの《Pを含む論理式》〜すなわち、「P」〜に到達する。
 より複雑なかたちの《Pを含む論理式》であっても、その複雑さに見合うまで下記プロセスを継続すれば、
   そこまで、「Pから帰納的に定義される論理式」と認定される範囲は、到達する。
 だから、下記プロセスの無限継続の果てに「Pから帰納的に定義される論理式」と認定される範囲は、
    あらゆる《Pを含む論理式》をカバーするに至るといえる。

【認定プロセス】
  
 [定義-条件1]より、 Pを「Pから帰納的に定義される論理式」に認定。…(step1) 

    * ここで認定されたP真理値は、真理値決定原理(1)によって定まる。 

 (step1)で、「Pから帰納的に定義される論理式」に認定された「P」を、
   [定義-条件2]の「AB,AB,AB,¬A」の A,B に代入したときに、
   AB,AB,AB,¬Aが表す対象 〜 すなわち、PP,PP,PP,¬P 〜 を
  「Pから帰納的に定義される論理式」に認定。…(step2)

    *  (step2)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)〜(2-4)に従って、
       (step2)で認定されたPP,PP,PP,¬P真理値が、
       (step1)で認定され真理値も確定した「P」をもとに、
       定まる。 

 (step1)(step2)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定された
   P,PP,PP,PP,¬P
  の各々を、
  かわるがわる[定義-条件2]A,B に代入し、
  代入するたび毎に、 
       AB,AB,AB,¬Aが表す対象  
  を、「Pから帰納的に定義される論理式」に認定。…(step3)
 
  ここで認定された「Pから帰納的に定義される論理式」を、以下列挙。

     [条件2]のAPとし、[条件2]のBPPとした、P(PP),P(PP),P(PP),¬P  
    [条件2]のAPとし、[条件2]のBPPとした、P(PP),P(PP),P(PP),¬P         
    [条件2]のAPとし、[条件2]のBPPとした、P(PP),P(PP),P(PP),¬P  
    [条件2]のAPとし、[条件2]のB¬Pとした、P(¬P),P(¬P),P(¬P),¬P

    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPとした、(PP)P,(PP)P,(PP)P,¬(PP) 
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP) 
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP)  
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP)   
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のB¬Pとした、(PP)(¬P),(PP)(¬P),(PP)(¬P),¬(PP)        

    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPとした、(PP)P,(PP)P,(PP)P,¬(PP) 
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP(PP),¬(PP) 
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP(PP),¬(PP)     
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP)   
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のB¬Pとした、(PP)(¬P),(PP)(¬P),(PP)(¬P),¬(PP) 

    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPとした、(PP)P,(PP)P,(PP)P,¬(PP) 
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP) 
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP)       
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のBPPとした、(PP)(PP),(PP)(PP),(PP)(PP),¬(PP)  
    [条件2]のAPPとし、[条件2]のB¬Pとした、(PP)(¬P),(PP)(¬P),(PP)(¬P),¬(PP) 

    [条件2]のA¬Pとし、[条件2]のBPとした、(¬P)P,(¬P)P,(¬P)P,¬(¬P) 
    [条件2]のA¬Pとし、[条件2]のBPPとした、(¬P)(PP),(¬P)(PP),(¬P)(PP),¬(¬P) 
    [条件2]のA¬Pとし、[条件2]のBPPとした、(¬P)(PP),(¬P)(PP),(¬P)(PP),¬(¬P)        
    [条件2]のA¬Pとし、[条件2]のBPPとした、(¬P)(PP),(¬P)(PP),(¬P)(PP),¬(¬P)  
    [条件2]のA¬Pとし、[条件2]のB¬Pとした、(¬P)(¬P),(¬P)(¬P),(¬P)(¬P),¬(¬P) 

    *  (step3)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)〜(2-4)に従って、
      (step3)で認定された「Pから帰納的に定義される論理式」の真理値が、
       (step1)(step2)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
      定まる。 

 (step1)(step2)(step3)で認定された「Pから帰納的に定義される論理式」の各々を、
  かわるがわる[定義-条件2]A,B に代入し、
  代入するたび毎に、 
       AB,AB,AB,¬Aが表す対象  (その列挙は省略)
  を、「Pから帰納的に定義される論理式」に認定。…(step4)

    *  (step4)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)〜(2-4)に従って、
      (step4)で認定された「Pから帰納的に定義される論理式」の真理値が、
       (step1)(step2)(step3)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
      定まる。 
 
 (step1)(step2)(step3)(step4)で認定された「Pから帰納的に定義される論理式」の各々を、
  かわるがわる[定義-条件2]A,B に代入し、
  代入するたび毎に、 
       AB,AB,AB,¬Aが表す対象  (その列挙は省略)
  を、「Pから帰納的に定義される論理式」に認定。…(step5)

 
 
 

→ 論理式:トピック一覧
→ 論理記号:トピック一覧 
→ 総目次  
  

定義 : 1個の命題変数だけを含む論理式の形成木 formation tree

【文献】戸田山『論理学をつくる』2.2.2(p.26);3.5.2真理値割り当て(p.57)

 《一個の命題変数Pのみを含む論理式A(P)の形成木formation tree とは、
   論理式A(P)がPから帰納的に定義される論理式」に認定されるプロセスを、
     Pの認定ステップから、
     A(P)そのものの認定ステップまで、
   再現してたどり直し、
   各ステップで認定した「Pから帰納的に定義される論理式」を特定した履歴のこと。

【例1】論理式 P の形成木とは、
    論理式 P が論理式に認定される下記プロセスのこと。 

    (step1)[定義-条件1]より、Pを、 Pから帰納的に定義される論理式に認定。

        * ここでの認定されたP真理値は、真理値決定原理(1)によって定まる。 

    [論理式認定プロセス完了]
 
【例2-1】→ 論理式「¬P」の形成木

【例2-2】論理式 PP の形成木とは、
     論理式 PP 論理式に認定される下記プロセスのこと。 

    (step1) [定義-条件1]より、 Pを、 Pから帰納的に定義される論理式に認定。 

        * ここでの認定されたP真理値は、真理値決定原理(1)によって定まる。 

    (step2) (step1)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定されたPを、
          [定義-条件2]の「AB」の A,B
         に代入した「PP」を、
         Pから帰納的に定義される論理式に認定。

    *  (step2)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-2)に従って、
       (step2)で認定された「PP」の真理値が、
       (step1)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
       定まる。 

    [論理式認定プロセス完了]



→ 論理式:トピック一覧
→ 論理記号:トピック一覧 
→ 総目次  
  

【例3-1】論理式 (¬P)P の形成木とは、
     論理式 (¬P)P 論理式に認定される下記プロセスのこと。 

    (step1) [定義-条件1]より、 P を、 Pから帰納的に定義される論理式に認定。 

        * ここでの認定されたP真理値は、真理値決定原理(1)によって定まる。 

    (step2) (step1)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定されたPを、
          [定義-条件2]の「¬A」の Aに代入した「¬P」を、
         Pから帰納的に定義される論理式に認定。

    *  (step2)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)に従って、
       (step2)で認定された「 ¬P 」の真理値が、
       (step1)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
       定まる。 
 
    (step3) (step2)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定された「 ¬P 」を、[定義-条件2]の「AB」の A に代入し、
         (step1)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定されたPを、[定義-条件2]の「AB」の B に代入した
          「 (¬P)P 」を、
              Pから帰納的に定義される論理式に認定。

    *  (step3)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)に従って、
       (step3)で認定された「(¬P)P 」の真理値が、
       (step1)(step2)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
       定まる。 

    [論理式認定プロセス完了]

【例3-2】論理式 (PP)(PP) の形成木とは、
     論理式 (PP)(PP) 論理式に認定される下記プロセスのこと。 

    (step1) [定義-条件1]より、 P を、 Pから帰納的に定義される論理式に認定。 

        * ここでの認定されたP真理値は、真理値決定原理(1)によって定まる。 

    (step2) (step1)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定されたPを、[定義-条件2]の「AB」「AB」の A,Bに代入した
           「PP」「PP
         をPから帰納的に定義される論理式に認定。

    *  (step2)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)に従って、
       (step2)で認定された「PP」「PP」の真理値が、
       (step1)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
       定まる。 
 
    (step3) (step2)で「Pから帰納的に定義される論理式」に認定された「PP」「PP」を、[定義-条件2]の「AB」のA,Bに代入した
          「 (PP)(PP) 」を、
              Pから帰納的に定義される論理式に認定。

    *  (step3)での認定と同時に、
       真理値決定原理(2-1)に従って、
       (step3)で認定された「 (PP)(PP) 」の真理値が、
       (step1)(step2)で認定され、真理値も確定した「Pから帰納的に定義される論理式」をもとに、
       定まる。 

    [論理式認定プロセス完了]


 → 論理式:トピック一覧
 → 論理記号:トピック一覧 
 → 総目次  

部分論理式 subformula


 論理式A(P)の部分論理式subformula とは、

    A(P)の形成木の各ステップで認定した「Pから帰納的に定義される論理式」  

 のうち、

   A(P)

 を除いたもの。

・戸田山は、
  論理式A(P1,P2,...,Pn) そのものは、「論理式A(P1,P2,...,Pn)の部分論理式」と呼ばない
 としているが、

 松本は、
  論理式A(P1,P2,...,Pn) そのものも含めて、「論理式A(P1,P2,...,Pn)の部分論理式」と呼ぶ
 と明言している。

【一般に】 
 →2個の命題変数を含む論理式の部分論理式
 →n個の命題変数を含む論理式の部分論理式 




【文献】
 ●戸田山『論理学をつくる』2.2.5(p.34)
 ・松本『数理論理学』1.1(p.3)