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ハン・ガンの小説『別れを告げない』で描かれた済州島四・三事件をめぐるドキュメンタリー。在日韓国人であるヤン・ヨンヒ監督の母親は、かつて済州島四・三事件の経験者だった。韓国の活動家の助けを借り、母親が長く胸に秘め続けた思いをようやく吐露し始めた頃、母親の患っていた認知症はひどくなっていく。そんななか、娘である監督は、母親とともに済州島を再訪する計画を立てる。
『別れを告げない』を読んだあとだったので、より興味を持って見ることができ、内容も心に響いた。韓国ではたびたびこうした悲劇的な歴史が繰り返され、デモで何万人も集まるような民族性が根付いていったのだろうと思う。我々もこうした歴史を知ることが重要だとあらためて気付かされる。 2024年12月
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1980年代に過ごした大学時代、ホラー映画が大好きで、ルチオ・フルチ監督の本作もレンタルビデオで借りて見た。今回、40年ぶりくらいに再見したが、頭をドリルが貫通するなど、とにかく残虐描写がてんこ盛りで、ストーリーはいい加減、という記憶だったのが、意外にしっかり物語が作り込んであったことに驚いた。
2024年12月
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澤田幸弘監督作を見るのは、『反逆のメロディー』に続いて二作目。主演の松田優作が無謀な青年を豪快に演じている。暴力団事務所を襲撃して金庫から金を奪うなど、どう考えてもただで済むとは思えないが、そのとおりどんどん追い詰められ、どんどん人が死んでいく。ちょっと情けない相棒のヒコを、岩城滉一がうまく演じている。彼にはこれくらいの役が合っている気がする。
2024年12月
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フランク・キャプラ監督お得意の人情噺。むかし一人で見たのを、今回は妻と再見。おおむね面白いし痛快なのだが、金持ち=悪者、貧乏人=情に篤くて善い人、という図式がやや固い気がして、なんとなく窮屈に思えるところもある。
2024年12月
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『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を作ったライカによる最新作で、評判も高い。ただ僕は、前作『KUBO〜』同様、世評ほどには楽しめなかった。まず、ストップモーションという手法は本当に素晴らしいのに、CGも併用することでその価値があいまいになり、「それなら全部CGで作ればいいのに」と思ってしまう。また、これも前作同様、どこか話の筋に完全にのめり込むことができないのは、徹底した勧善懲悪が時代に合ってない気もするからだろうか。
2024年12月
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内田吐夢監督、三國連太郎主演による大作。序盤から映画の壮大なスケール感にわくわくさせられ、左幸子演じる八重子の造形も素晴らしい。ただ個人的には、タイトルから津軽海峡を渡る船での事件を想定していて、徐々にそこから離れていくことに違和感を覚えてしまった。また、八重子が探し求める犬飼(三國連太郎)が姿を消したあと、樽見という名で再登場するあたりから、だんだん先が見えてきてしまい、尻すぼみになった印象。
2024年12月
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和製ヌーベルバーグの騎手として名高い映画監督・蔵原惟繕の実弟、蔵原惟二の監督デビュー作。夏純子が不良少女を演じた一連の作品群の一つ。彼女の演じる魔子の兄(藤竜也が好演)は暴力団の組員で、だからこそ魔子は平気で危ない橋を渡る人生を歩むのだが、徐々に綻びが大きくなり、破滅への道をたどる。魔子の奔放かつ痛快な展開が続くかと思いきや、意外にも暗く退廃的な方向へと話は進んでいく。
2024年12月
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それぞれの立場の人間が、完全な善人でも完全な悪人でもなく描かれる。吉田恵輔は、人間の嫌な部分をさらけ出して描くのが上手いが、いつも、もう少し先まで見せてくれと思ってしまう。
2024年12月
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マイケル・マン監督作を見るのはこれが初めて。アル・パチーノとロバート・デ・ニーロが初共演(ゴッドファーザーPart2にも二人は出ているが、別の時代の人物として描かれ、二人の共演シーンはない)ということで、最後の二人の対決シーンを作るために全てのシーンが作られている、と言っても過言ではなかろう。だからストーリー全体としての洗練度、納得度には欠けるものの、エンタメ作品として見て損はない出来ではある。
2024年11月
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ほぼ20年ぶりの再見。内容は完全に忘れていた。80〜90年代のミニシアター・ブームの代表的な一本で、オフビートかつおしゃれな映画という印象と、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの歌う『アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー』だけが頭にこびりついていた。ダメ男がくりかえすダメ行動をただ追っていくだけで、彼は何も成長しないまま唐突に映画が終わる。一緒に見ていた妻もあっけにとられていたが、それでもなにか心に引っかかりが残ったようだ。人間なんてこんなものさ、とうそぶく傍らで、それでも愛おしい人間というものを賛美しているように思える。ジャームッシュがこの次に撮った『ダウン・バイ・ロー』はもう少しハートウォーミングな作品だった記憶があるので、また観てみよう。
2024年11月
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僕がこれまでに見たマーティン・マクドナー監督作の中で、いちばん変な映画だった。『セブン・サイコパス』という映画の脚本を書いている男性が、7人のサイコパスを創造していく過程で現実のサイコパスが登場し、フィクションと融合していく。演出が初期のタランティーノっぽくて小気味よく、7人目のサイコパスが登場するあたりなど、なかなかに楽しい。ただ、最後はアイデア倒れに終わった気もして、あっけない。
2024年11月
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安藤尋監督作は初めて観たが、映像や編集にこだわって丁寧に作られ、しかもオリジナリティを忘れない仕上がりに感銘を受けた。主役の市川実日子はモデルから女優に転身して間もない時期で、ぎこちないながらもそれがうまく演技に生かされている。その友人を演じる小西真奈美もまた映画出演間もない頃だが、自然体の演技が素晴らしい。この二人のみずみずしいやりとりを観ているだけで時間が過ぎていく。
2024年11月
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昨今取り沙汰されることの多いクルド難民を描いた一作。日本における彼らの扱われ方の酷さに、あらためて考えさせられる。拘束しない代わりに、日本に住んでもよいが仕事はしてはいけない、という理不尽極まる処遇に驚く。この状況で生きるには、規則に反して仕事をするか、犯罪に手を染めるしかなく、どちらにしても明るい未来はない。未来を奪われて生きるのはどんなに辛いことだろう。映画では小さな希望のようなものも見せてくれるが、それはただ都合のよいフィクションだとも思えてしまう。それでも絶望するだけでは何も変わらない、まずは知ることから始めるだけ、という監督の意志が伝わってくる。だから、本作を見て、知ることから始める。
2024年11月
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ケン・ローチ監督作は「わたしはダニエル・ブレイク」「家族を想うとき」という最新の2作を観たが、こちらは彼のデビュー作だ。前掲2作が2010年代の作品なのに対し、本作は1960年代の作品であり、50年の開きがあることに驚かされる。
社会の下の層の人々が描かれるのは、最新2作と同じだ。主人公の女性は泥棒の男と結婚をし、子供をもうけるが、夫が逮捕されてしまう。彼への面会を続けながら、夫の友人と関係を持ち暮らし始めるものの、彼もまた逮捕され、ふたたび彼女は子供と二人で生きるしかなくなる。この女性は常に考え方が軽薄なので、見ているほうは自業自得だろうと思ってしまうが、この社会にいればこうした生き方しかできなくなるのかもしれず、単純に非難はできない。前2作ほどの痛々しさはなく、意外に軽やかに描かれているのも印象的だ。 2024年10月
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ジョージ・A・ロメロの初期の頃の作品で、実験作という雰囲気が濃い。Wikipediaによると、高齢者虐待を題材とした教育映画として製作されたという、ロメロ監督の系譜の中でも異色作。制作を依頼した教会が、内容の悲惨さを理由に映画を封印し、お蔵入りになっていたものの、2017年にフィルムが再発見され、4K修復作業が行われた後に公開されたらしい。作りは地味、というかチープで、他のロメロ作品のような完成度は求むべくもない。
2024年10月
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最高! 映画とはつまりこういうものだ。とても嬉しくて温かい気持ちになれる。侍がタイムスリップして時代劇撮影所に現れる、という設定は素晴らしいのだが、それだけではここまでの映画にはならない。一つ一つのシーンごとに細かい演出をおこない、小さなアイデアを地道に積み上げていく胆力が、本作をこのレベルにまで高めている。熱い心意気とユーモアに泣かされる。
2024年10月
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ラース・フォン・トリアー監督は本当に一筋縄ではいかない。本作は、知的障害者のふりをして人を騙したりいたずらをするという、たいへん不埒なグループを描く作品だ。登場人物の誰にも共感できず、見ているあいだじゅう心底うんざりさせられるのだが、最後まで見ていくと、「徹底して下品な演技をしている」彼らと、「徹底して上品な振る舞いをしている」我々とは究極的には同等ではないかと思えてきて、いろいろと考えさせられてしまう。
2024年10月
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久しぶりに見るミヒャエル・ハネケ監督作は、2024年時点での最新作だ。この監督の映画を見る時はすこし心構えが必要なので、体調のよい時を選んで心して見た。結果、他の映画ほど厳しいシーンはなく、やや拍子抜けするほどだった。
冒頭、iPhone画面で母親を映しながら一人語りをする少女のシーンから、不穏なムードが漂う。無垢に見える少女をはじめ、真っ当なはずの大人たちも様々な秘め事を隠しながら生きている。それが発露するのがインターネット、とりわけSNSだ。今回の映画は、そうしたネットが抱える闇を描いたものなのだと思う。これまでの作品のように強烈な描写はないが、考えるほどに現代に生きる我々には生々しい問題を描いている。 2024年10月
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ビリー・ワイルダーの『情婦』で癖のある弁護士を演じたチャールズ・ロートン目当てで、本作を鑑賞。ロートン演じる靴屋のホブスンは飲んだくれの荒くれ者のどうしようもない男で、三人の娘には女性差別丸出しのひどいハラスメントを繰り返している。婚期を逃した長女マギーが靴職人のさえない男と結婚する運びとなり、やがて次女と三女の恋人も交えた人情話が展開していく。強権の男が一杯食わされるコメディとして、しっかり見応えがある。そしてチャールズ・ロートンはやはりいい役者だと再認識した。
2024年10月
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黒木和雄監督作品を見るのは、これが初めて。目当ては原田芳雄だったが、相変わらず無頼の演技が上手く、本当にこういう人なんだろうかと思わせる。主役の江藤潤はこれがデビュー作で、上手いとは言えないが、朴訥ながらルサンチマンを抱えた青年を好演している。ヒロポン中毒になり精神を侵された女性を、村の青年が代わる代わるに犯し、主人公も耐えきれず同じことをしようとすると実の祖父に寝取られる、という今では公開が危ぶまれるような際どいシーンもある。昔の日本の生活や風俗に浸ることができ、荒削りながらいい映画だと思う。
2024年10月
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何度も見返している大好きな映画、大傑作の本作をまたまた鑑賞。高校が舞台で登場するのもほぼ全員高校生という、今年57歳の僕には何の関係もない世界なのに、心をえぐられるように響く。つまりはそれだけの普遍性を備えているということだ。原作の小説とテーマは同じだが、映画的な肉付けや飛躍を施してあり、原作を凌駕する出来栄えに仕上がっている。ラストの展開を知っていると、吹奏楽部の演奏が始まったあたりから泣けてしまう。
2024年10月
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いつも聴いているポッドキャスト番組で話題にのぼったのを機に、久しぶりに再見。僕はエピソード8と9はかなり酷い出来だと思うが、この7については好意的に見ており、今回もその気持を新たにした。新しいキャラクターは、BB−8も含め魅力的に描かれているし、旧来のキャラクターも存分に登場して旧作ファンも存分に楽しめる。ストーリーとしては大して進んでいないとも言えるが、新しい三部作の出だしとしては満足のいく出来だと思う。ただ、8と9はやはり見返す気にはなれない。
2024年10月
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ハリウッドのMGM社の創立50周年記念で作られた、ミュージカル映画を紹介する映画。1974年制作のためかなり古い作品が並び、見ていない面白そうな映画がたくさんあるなあと心躍らせられる。本作の“現在”シーンで著名なミュージカル俳優が紹介役として出てくるのだが、フランク・シナトラやジーン・ケリー、エリザベス・テーラーにフレッド・アステアまで出てきて驚いた。本作を見て、紹介されたミュージカルを一つ一つ見ていくというのも、豊かな映画体験になると思う。
2024年10月
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いつも厄介なラース・フォン・トリアー監督だが、本作も序盤の結婚披露宴のシーンがあまりにも長くて辛くなる。他の人のように“普通”に振る舞うことのできない女性をキルスティン・ダンストが好演しており、まさにそういう人がいるようにしか思えないところは凄い。そして話は意外にもストレートなSFとして展開していくが、あのラストはなんだか楽観的に過ぎる気もする。
2024年 9月
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『喜びも悲しみも幾年月』ファンの妻と共に、木下惠介監督作として並び称される本作を鑑賞。僕はほぼ十年ぶりの再見で、小さな子供たちとの交流がさほど綿密に描かれないあたりは覚えていたものの、ここまで反戦メッセージが強かったことは覚えていなかった。悲しいできごとが次々と起こり、主演の高峰秀子さんは『喜びも〜』同様、始終泣きっぱなし。そして、数十年という年月を演じ切る彼女の姿は、やはり『喜びも〜』同様、素晴らしい。
2024年 9月
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『滝を見にいく』に感動して以来、沖田修一監督作をずっと見ているが、どれも僕には面白いと思えない。喜劇を作るためのわざとらしさばかりが目立ち、話に入っていけないのは、『滝を〜』以外の全作に共通している。
2024年 9月
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いわゆる、“困った老人もの”の一作。主人公のシュミットは定年退職後、気ままな老後生活を送ろうとした矢先に妻を失い、途方にくれる。ていねいに育てたと自負する娘も、実は彼を疎ましく思い、離れた場所で暮らしている。娘も一見普通に見えながらいろんな問題を抱えているところから、シュミット氏の育てぶりがうかがえる。映画として客観的に見れば彼は愛すべき人物なのだが、当事者として実際に関わったらたまったものではない。こういう人ってどんな国にもたくさんいるのだろう。
そして映画の最後に彼を慰めてくれる出来事、あれは単なる幻想でしかない。僕はあのラストをひどく残酷なものと感じ、監督の人間に対する絶望をさえ感じた。 2024年 9月
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高橋ヨシキ氏は、ラジオで話をされるのを好んでよく聞いていたが、これは監督デビュー作。序盤はなかなかいい感じで始まったのに、途中からちょっとアレっと思う展開に走ってしまった。あれだけのことをしでかした刑事がアメリカの更生施設に入り、数年で出たあとまた仕事に復帰するところからしてありえない。さらに、帰国してからは完全に映画のジャンルが変わってしまい、パニックホラーのようになってしまったのも、僕にはあまりいただけなかった。
2024年 9月
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大好きな岡本喜八監督、シリアスな映画は素晴らしいのだが、コメディを撮るとどうもいけない。笑わせようとする意識ばかりが先に立ち、けっきょく大して笑えない薄ら寒いシーンが続く。本作は高評価も多いが、僕にはいただけなかった。映画とテレビをふくめ、日本製のコメディの悪い部分はこのあたりから始まっているのかもしれない。
2024年 9月
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『エイリアン』シリーズは近年の前日譚『プロメテウス』『〜コベナント』を含めすべて見ているが、徐々に関心は薄れていた。そこへ来て本作では監督を変え、第一作、第二作のイメージに立ち戻ったように活き活きした映画になっていた。見たこともない映像を作り出すことがリドリー・スコット監督の真骨頂だと思うが、本作ではその精神が引き継がれており、とくに重力がらみのシーンなどで驚かされた。宇宙船にエイリアンが忍び込み、乗員が一人ずつ殺されていく、という展開はワンパターンではあるが、映像の新しいアイデアを含めて語られることにより、新鮮に見ることができる。
2024年 9月
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現在公開中の新作を観るため、妻と一緒に再見。妻はホラー系が苦手なので、ときおり目を覆いながら見ていたが、まずまず気に入ったらしく、パート2も見ようと言ってくれた。閉ざされた船内での人間ドラマがしっかり描かれ、その中に実は、という人物も混じっていたりするところが興味を持続させる。よくできた脚本としっかり作り込まれたデザイン性は、スターウォーズと通じるところだ。
2024年 9月
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妻のリクエストもあり、一緒に鑑賞。僕はもう二十年かそれ以上前に観た以来だが、ラストの戦闘シーン以外はほぼ忘れていた。パート2として、数も大きさもグレードアップした敵というのは正統だし、映像とスケール感がぐっと増しているところも素晴らしい。乗組員にまぎれたロボットの存在(最初から明かされている)の扱いも、前作に対する皮肉が効いていて面白い。一作目より面白い二作目の筆頭に挙げられるのは心から納得できる。
2024年 9月
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本作を見るまではこの事件のことを知らず、まずはその意味だけでも意義のある作品だと思う。被差別民の描き方に問題があるとの意見もあるようだが、僕にはそれほど酷く描かれているとは思えない。エンターテインメントを通じてこうした事件に心を留め、興味を持つ人が増えるというのは良いことだと思う。ただ僕は、森達也という人のことを完全には信用しておらず、『FAKE』の時にも思ったが、面白くするためなら手段を選ばない下心を感じてしまう。
2024年 9月
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ポール・バーホーベン作の、まったく人道的ではない映画。殺人、レイプなどがあからさまに描かれており、眉をひそめるシーンも少なくない。映画とはこうしたものだとも思うが、さすがにそこまで称えるわけにもいかない。なのに彼の映画には人を惹き付けるものがあるのはなぜだろう。
2024年 8月
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『通常版』は以前に劇場と自宅で2回ほど見たのだが、未公開映像を含む『オリジナル全長版』を見るのは初めて。映画『関心領域』を見た時に、真っ先に浮かんだのが本作だった。今回見直してみると、やはりラストのくだりが本当に似ていて、一緒に両作を観た妻も同意見だった。どちらのシーンも階段近くで撮られているという状況も酷似している。
しかし何度見ても衝撃的だ。殺人を犯した数人の顔つきから、様々な感情が読み取れる。過去の行いに対する悔いはいったん認めてしまうと大変な苦しみになってしまうため、誰もがそれを正当化、あるいは忘れようと日々を生きている。それでも完全に消えてしまったわけではないから、本作ラストのような状況が生まれる。 『関心領域』もそうだが、虐殺に加担した彼ら一人一人を断罪することに意味はなく、そうした状況になればどんな人でも同じことをしてしまう、というのが真実だろう。だからこそ、戦争という状況は何があっても避けなければいけないのだ。 2024年 8月
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シリーズ最終作。佐倉(演:佐分利信)率いる中島組と、大石(演:三船敏郎)率いる関東同盟の最終決戦。そこに本当の首領とも言える大山(演:片岡千恵蔵)が裏で糸を引き、つぶしつぶされの展開が続く。寺田農や西村晃、渡辺文雄、佐藤慶といった実力派俳優達が脇を固め、見ごたえはたっぷりだ。ただ、ラストで息切れしたのか、尻すぼみになってしまったのがもったいない。それから、この時代の映画に多いことだが、シリーズを通じて同じ俳優が別の役で何度も出てくるのに慣れない。本シリーズでは菅原文太というスター俳優がこうして何度も出てくるため、面食らってしまうのだ。
2024年 8月
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刑務所での闘いがメインの映画なのに、刑務所に入るまでのくだりが無駄に長く、じっくり描いているといえなくもないが、あまりにテンポが悪すぎる。刑務所に入ったら入ったで、狙う相手は凶悪犯用の別の刑務所にいる→わざと暴れて問題を起こしてその刑務所に移る→狙う相手は凶悪犯用の別の場所にいる→わざと暴れて問題を起こしてその場所に移る、という、ワンパターンかつ都合良すぎな展開が続き、しらけてくる。
もちろん、こうした乾いた暴力映像を楽しく見る人もいるし、それを全く非難はしないのだが、僕はもうほとんど面白みを感じられなくなった。年齢のせいかも。 2024年 8月
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かなり怖いホラーと聞いて見てみたが、僕にはまったく頂けない映画だった。これは好みだろうが、おぞましさや恐ろしさの雰囲気が全く出ていないので、世界観に入っていけないのだ。惨劇の真相は新しい発想かもと思うが、やはりその演出がうまくないので、衝撃というにはほど遠い。その後ものオチ(最後のあの人)もまったく納得できない。
2024年 8月
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10年以上前に見たものを、妻と一緒に再見。小津安二郎は本当にユーモア感覚に優れている。笑いを前面に押し出すのではなく淡々と見せるため、じわじわとおかしさがこみあげてくる。佐分利信、中村伸郎、北竜二の三人組は小津の『彼岸花』でも顔を揃えたが、見ているだけで楽しくなってくる。テーマやセリフ、考え方などは古式ゆかしく今の時代ではセクハラのオンパレードだが、まあ時代柄しかたがないだろう。
2024年 8月
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アキ・カウリスマキの描く不条理劇。ヘルシンキに住む貧しい労働者15人(全員がフランクという名前!)が、街の反対側にある高級住宅地エイラを目指して旅立つ。それぞれの道筋を歩み、ときには命を落としたりもするが、映画は彼らをただ淡々と描くのみ。労働者の置かれた厳しい状況を寓話的にコメディ的に描いた一作。カウリスマキの長編第二作で、まだまだ実験的色合いが濃い。
2024年 8月
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岡本喜八監督作は、シリアス路線ものは素晴らしいのだが、後年に作られたこうしたコメディ路線はまったくいただけない。ヤクザ抗争が野球の試合にとってかわる時点で相当なアイディアが必要になるはずなのに、ただおちゃらけた動きをしたり大声を出したりするだけで、ユーモアのセンスが見当たらない。菅原文太がここまでカッコ悪く映ってしまうと、悲しくなってしまう。日本の映画やドラマのコメディの駄目な部分の集大成を見るかのよう。
2024年 8月
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ビリー・ワイルダー監督は大好きなのだが、キャリア後期の作品には首を傾げるものが多く、本作もそうした一本。妻を愛するあまり行動を束縛してしまう男性をユーモラスに描いており、それは微笑ましく、途中までは穏やかに見ていられた。それが最後にはとんでもない方向にころがり、僕としてはまったく受け入れられない内容となった。
2024年 8月
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北野武監督の初期に撮られた一作。ヤクザも暴力も出てこない、タイトル通りの静かな映画。本作を北野映画で一番好き、あるいは邦画で一番好きと公言される方も多いようだ。僕としては、静かで優しい映画だとは思ったが、そこまでのめりこむほどではなかったというのが正直なところ。暴力を排除した試みとしての実験作にも思えるし、編集もどこか中途半端な気がする。ただ、本作を褒める人がいるのはじゅうぶん理解できる。
2024年 7月
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イタリア発の艶笑コメディ、つまりはちょっとエッチなコメディだ。1970〜1980年代くらいにたくさん作られた気がするが、今の時代ではこうした作品も忌避されるのだろうか。主演のカトリーヌ・スパークの肢体のみならず、そのファッションや振る舞いも魅力的だから、当時は女性にも受け入れられただろうと思うのだが。もちろん、この手のジャンルではストーリーはほとんど意味をなさず、本作もしかり。ただ、ラストはとてもかわいく微笑ましい。同監督の『裸のチェロ』は奥さんが好きすぎてチェロのケースに入れて運ぶという話で、こちらも微笑ましくて割と好きな作品だ。
2024年 6月
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ヨルゴス・ランティモス監督作は、非常に見ごたえがあるのはわかるのだが、決してもう一度見たいとは思えないものばかりだ。本作は、恋愛至上主義の世界で相手を見つけられないと動物にされてしまうというお話。その決まりが嫌で逃げ出した人々が作るコミュニティでは、今度は恋愛は禁止されている。これは現実世界にも対比できる寓話として僕はとらえ、結局は何かを強制することが人間性を奪うことにつながるという解釈をした。
2024年 6月
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アウシュヴィッツ収容所を、その中で行われる凄惨なおこないを全く描かず、隣で平和に暮らす所長一家のみを映すことで表現した意欲作。一家の平和な日常の奥で常に聞こえている銃声や叫び声、怒声。こうした音響は、史実を丁寧にくみ取り、この日はこうした音が聞こえていただろうとする数百ページに及ぶ音声台本があったというから、本作にかける思いの強さが伝わってくる。
ラストの所長のとある仕草に、僕は過去に見た映画『アクト・オブ・キリング』(初見時の感想/2回目の感想)を強烈に思い出した。これを機にそちらも見直したが、思っていた以上に映像が酷似しており、驚いた。 監督も言及しているとおり、本作はナチスの非道なおこないを糾弾するのが目的ではなく、いま現実に起こっている様々な問題、たとえばロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとガザの問題などについて、無関心でいる我々に対する警鐘なのだと思う。もっと言えば、僕らが北陸の震災や東日本大震災に無関心でいることさえ思い起こさせる。行動を起こさねば、という思いに駆られた点で本作の意義は十分だと思う。 2024年 6月
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映画『フュリオサ』を見る前準備として見直す。全編アクションの連続だが、覚えていたよりは穏やかなシーンもあり、だからこそアクションの衝撃度が増す。僕が創作に期待するのは、いかに新しいアイデアを見せてくれるかという点が大きく、本作が見たことのないアクションや映像を見せてくれるのは、映画を見る根源の喜びを満たしてくれる。
2024年 5月
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『LOVE LIFE』以降、気になって追いかけている深田晃司監督作。インドネシアと日本との関係、海による災害などのテーマをファンタジーの手法で描く、という試みだと思うのだが、いかんせん登場人物の行動が中途半端で、淡々と時間が過ぎていくばかり。監督が伝えたかったのは、海という大いなる存在が時には容赦なく奪い取り、時には温かく包み込む、そんなところだろうか。
2024年 5月
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前作『トップガン』の、なんと36年ぶりの続編。今回、トム・クルーズ演じるマーヴェリックは教官として懐かしのパイロット育成施設「トップガン」へ赴き、無茶な作戦遂行のため、若きパイロットを指導することを命じられる。
人気に比べて映画の出来はさほどでもなかった前作に比べ、本作はどうか。まずは本作の白眉となる戦闘機アクションの出来が素晴らしい。CGを使わず、本物のパイロットが操縦する戦闘機に俳優が同乗し、自分が操縦している演技をしているという。だから俳優達は実際に、横90度や背面飛行の姿勢になったり、強力な重力を体感している。これを実現するため、数カ月におよぶ訓練を受け、トム・クルーズはそのサポートに努めたという。本当にトム・クルーズの映画制作への熱意には頭が下がる。 ストーリーのためのアクションではなく、戦闘アクションそのものが映画の本質の具現化となっているという意味で、『マッドマックス怒りのデスロード』を思い出した。アクションがそのまま見る者の情動を揺さぶる、これが映画の本質だともいえる。確かにこれは劇場で観れば何倍もの衝撃と感動を覚えたことだろう。 2024年 5月
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大学生の息子をとつぜんの事件で失った男。自暴自棄で無軌道な生活を送っていた矢先、別れた妻から息子が残したギターと自作曲のCDを渡され、自分が彼の曲を演奏することを思い立つ。亡き息子の作品を父親が引き継ぐことを、単なる美談ではなく、その是非を問う内容にしているところが良い。出演もしている俳優のウィリアム・H・メイシーが監督を務め、手堅い作品にまとめている。
2024年 5月
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わざと棒読みのセリフ、ファンタジー世界のように見える映像づくりなど、見始めてすぐに、「ああ、大林宣彦作品だなあ」と嬉しくなる。特筆すべきなのは、なんといっても雪子を演じた須藤温子のみずみずしい存在感だろう。『なごり雪』の歌詞をそのままセリフにするという試みも面白い。2002年にこの曲をモチーフにした映画を撮る意味は謎だが。
2024年 5月
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妻と一緒に見たが、僕はこれで三回目。見るたびに評価が高くなり、今回は最初から最後まで本当に面白く見た。舞台は大王崎灯台が近くにある大王町で、昨年訪れたあたりだから、その意味でも興味深かった。相変わらず2代目中村鴈治郎が素晴らしく、彼が出てくるだけで映画の全部を持っていく。とんでもないクズ人間なのだけれど、それでも抗えない魅力を備えており、人間というものの奥深さを感じさせてくれる。ラスト近く、吉之助のエピソードは、知ってから見ると伏線のあたりで笑ってしまう。
2024年 5月
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妻と二人で鑑賞。元の作品は劇場鑑賞を含め10回ほどは観ていて、追加映像を含めた本作を観るのは2回目だ。細かい描写だけでなく、挑戦的ともいえる斬新な描写も本作の特徴だが、何度見ても細部に魂が宿ることを実感させてくれる。追加された部分は、元々はあったはずのところを最初の公開時に泣く泣くカットしたところなので、やはり本作が完全版であるといえよう。
2024年 4月
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『反逆のメロディー』がかなり良かったので、同じく澤田幸弘監督作をと思い、見てみたらこれがまた大傑作! クソ高校教師による管理教育に反発した生徒が暴力を繰り広げる、という使い古されたプロットを、最後までだれることなく見せる脚本に感心。詩情さえ感じられるアート性も備え、なおかつバイオレンスとエロスも惜しみなく投入された力作。浅野温子がとてつもなくきれいにエロティックに撮られている。
1978年の作品だが、この時代には未見の傑作がまだまだありそうで、わくわくしている。ちなみに無名時代の石井聰亙も共同監督として名を連ねている。 2024年 4月
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1986年公開で、確か当時、劇場で観たかレンタルビデオで観た。映画館に集められた観客が謎の菌に冒され、ゾンビ風の化け物になっていくパニックホラー。音楽が鳴りっぱなしのグルーブ感を恐怖に絡めている点で、ゴシックホラーとは一線を画している。嫌いではないが、ホラーとしてはまあ普通の出来。ロケはドイツで行われており、序盤のシーンで自分の行ったことのある駅が出てきて、驚いた。
2024年 4月
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岡本喜八監督の映画はぜんぶ見ようと思っている。ヤクザ映画ではあるが、東映ではなく東宝で岡本喜八が撮ると、ヌーベルバーグの香りが漂う。素っ頓狂な音楽の使い方が効果的だ。アクションシーンはアメリカ映画を意識して作っているような気もする。
鶴田浩二、宝田明、平田昭彦、白川由美、草笛光子などオールスター共演も楽しいが、三船敏郎の役が珍しく今一つなのが寂しい。いっぽう、佐藤允はいい役をもらって光っている。 2024年 4月
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ラース・フォン・トリアーの映画だから、まあ普通ではないだろうなあとは思っていたが、ここまでぶっ飛んでいようとは想像していなかった。とはいえ、アート作品のようなシュールさや難解さはなく、最後まで興味は持続する。けれど、あの映像を見せられた日にゃ、これは見る人を選ぶ作品だと言わざるを得ない。もし見ようと思う人がいたら、覚悟を持って、とは言っておきたい。
2024年 4月
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なぜか無性に見たくなり、妻と再見。僕はこれで三度目の鑑賞となる。一人の少女の過ごす一年ほどの時間を描くが、信頼できる人が現れてはいなくなり、の繰り返しで、あらためて見れば本当に悲しいことばかりでいたたまれなくなる。それでも彼女が前向きに生きようとするのは、もはや理屈ではなく、人間の本性がそうできているからだとしか言いようがない。語り過ぎない作りのうまさ、俳優の演出、編集のうまさなど、これが初監督作とは思えないキム・ボラの才能にしびれる。
・1回目("20年9月)の鑑賞の感想 ・2回目("22年2月)の鑑賞の感想 2024年 4月
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長谷部安春監督作を見るのは、野良猫ロックシリーズ以来。いわゆる日活ニューアクション時代の作品だ。とにかくスタイリッシュな絵作りにこだわりまくっており、そのぶん見やすさは損なわれている気もする。画面での人物紹介では誰が誰だかよくわからず、アクションシーンも何が起きているのかわかりづらい。なのに引き込まれて見てしまうのがすごいのだが。インテリヤクザ風の二谷英明、川地民夫あたりの独特の存在感が好き。
2024年 3月
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小津安二郎が亡くなる二年前に撮った、最後から2作目の作品。オールスター共演で、物語の筋というより各キャラクターの演技合戦を楽しむ様子が強い。中村鴈治郎演じる小早川家の当主は、口が悪い割に気弱で人情にもろい、『浮草』とほぼ同じキャラクターだが、やはり映画を背負って全部を持っていく勢いがある。原節子もまた、夫と死に別れて独り身ながら周囲から結婚を勧められまくるいつものキャラを、安定感たっぷりで演じる。気の強い長女を演じて凛々しい新珠三千代、おとぼけ店員を軽やかに演じた藤木悠、「違う違う」を連発して愉快な山茶花究など、初めて小津作品に出演した役者陣も奮闘しているから、見ていて楽しい。
2024年 3月
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ルチオ・フルチ作品の中でも、割と筋立てがしっかりしているのに驚いた。お得意のスプラッターはやや控えめで、ゴシックホラーに近い風味を味わわせてくれる一作。古き良きホラーを楽しみたいなら見て損はない。
2024年 3月
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映画評論家の町山智浩さんが10年前くらいにラジオで紹介されていた作品。企業のヘッドハントを請け負う主人公が実は裏で絵画を盗んで売りさばく闇稼業をおこなっていた、という物語。意外な展開、意外な犯人、その陰に意外な主人公の思いがあった、と意外尽くしの作品だが、その「ザ・意外」を作り出すためにお話が作られており、かなり強引に思える。まずまず面白くは見られるけれど。
2024年 3月
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今さらながらダニエル・クレイグ版ボンドの第一作を鑑賞し、出来の良さに驚く。映画としての旨味・面白みが次々と繰り出されるてんこ盛りの内容にお腹いっぱいになった。南米からヨーロッパまで舞台を持っていく強引さは否めないが、そこは007ものの常として気にならない。観光映画という側面もあるから、これは大画面で見るべき作品なのだと思う。これから見る人は、「テキサスホールデム」という独特のポーカーのルールを知っておいたほうがより楽しめるだろう。
2024年 3月
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『やくざ戦争 日本の首領<ドン>』に続く第2作。佐分利信演じる中島組組長・佐倉が全国制覇を目指す構成は一作目と変わらないが、一作目で死んだ若頭・辰巳(鶴田浩二)に変わり、今回の主役は佐倉の右腕となった松枝(松方弘樹)だ。
松枝が組のために体を張って奮闘するも、形勢はどんどん悪い方向へ傾いていく。僕の大好きな成田三樹夫がケチな幹部に成り下がってしまうのが不満だけれど、これは配役上しかたがない。ただ、この頃の東映作品でよくあることだが、一人の俳優が同シリーズの映画で別の役を演じることには、どうしても違和感を覚えてしまう。とくに菅原文太のような大物だと、ひときわそう思える。菅原文太はまた本作で演じるのがあまりいい役どころではないのもいただけない。 2024年 3月
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クローネンバーグ監督作は、昔は好きでよく見ていた。ホラーをあまり撮らなくなってから離れてしまったが、本作は1993年に撮られた、そうした非ホラー系の初期作。
フランス大使館員と京劇俳優が恋におちるという実際のできごとを基に作られている。歌舞伎と違い、京劇は女性が演じることがなくもないようで、本作も、ジョン・ローンに似た女優さんが演じているものとばかり思って見ていた。“彼女”の美しさがまずは大きな軸となり、翻弄される外交官がやや情けない感じで演出される。中盤はすこしだれるが、ラストはクローネンバーグらしさ満開で派手に見せてくれる。 2024年 3月
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前作『カジノ・ロワイヤル』のラストシーンからつながる形で始まる。ボンドが世界各地を飛び回る姿がそのまま観光映画にもなっているのは相変わらずだが、利かん坊のようなボンドの性質を強調するあまり、ストーリーが必要以上に大仰に思えてしまうところは、前作よりも気になった。また、今回のボンドガールのカミーユ(演:オルガ・キュリレンコ)の真意が最後まで見ても、あとからあらすじを読んでも、今一つぴんと来なかった。
2024年 3月
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これまた映画評論家の町山智浩さんが10年前くらいにラジオで紹介されていた作品で、当時は『高齢化家族』というタイトルだった。前科持ちでぷらぷらしてばかりの長男、売れない映画監督の次男、バツ2で子連れで出戻りの長女が、母親との暮らし中で繰り広げるドタバタコメディ。反目しあってばかりの彼らが大事なところでは団結する姿を見せたり、韓国映画らしくバイオレンス描写はどぎつかったりと、いろんな要素のギャップが面白い。ただ、笑いあり涙ありという要素が表に出過ぎているのがやや暑苦しい気がした。
2024年 3月
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ウディ・アレンの近作の中では、大ヒットした『ミッドナイト・イン・パリ』の陰に隠れてしまうのか、評価が不当に低い作品。僕は、ウディ・アレンらしさがしっかり出ていて、見ごたえのあるシーンがテンポよく続く良品だと思っている。今回、妻と再見したが、妻も気に入ってくれた。ウディ・アレンらしい意地悪さ爆発だが、ぎりぎり嫌みにならず、ちゃんと笑いに落とし込まれているバランスもよい。
2024年 3月
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アキ・カウリスマキが1986年に撮った初期の作品。主演はマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンという、カウリスマキ映画の常連俳優だ。内容も、生きるのが下手な人々が繰り広げる不器用な恋愛、不運が重なりどんどん追い詰められていく姿など、カウリスマキ映画の王道が既にこの時期に完成している。そのぶん、他の作品を見てから本作にたどり着くと、逆に二番煎じにも感じるほど。
2024年 2月
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山口組に関する実話をベースに、日本版『ゴッドファーザー』を狙った脚本で作られたオールスター共演の大作。これが大ヒットして、続編2本が作られた。親分役の佐分利信が実にはまり役で、たしかに『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドを彷彿とさせる。ラストの展開も実に『ゴッドファーザー』っぽい。仁侠映画らしく数多くのドタバタ展開はあるが、しっかり芯の通った作品に仕上がり、さすがに堂々たる大作といえるだろう。
2024年 2月
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子供の頃にテレビで見て、ストーリーは完全に忘れていたのだが、その強烈なビジュアルだけ鮮明に覚えていた。高英男という役者の額の割れた姿は、今でも脳裏にこびりついている。今回ほぼ半世紀ぶりくらいに見直してみて、意外にしっかりした侵略ものSFだと気づかされた。密室状況でパニックが起こった際の人間ドラマもよく描けていて、見ごたえがある。
2024年 2月
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U-NEXTで、昔から気になっていて未見だった作品を選んで見ているが、そのうちの一作。大学時代、ホラー映画が大好きで、愛読していた「V-ZONE」というホラー映画専門雑誌(あったんです、そんな雑誌が!)で紹介されていた。画像や説明での印象から、ホラーコメディという要素が見る前から伝わり、実際に見た後の感想もその通りだった。いかにもやり過ぎなクリーチャーの作りは、ばかばかしさの中に愛らしさ、かわいさも秘めていて絶妙なところだ。ストーリーはまあ、あってないようなもの。
2024年 1月
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新年早々、こんな快作を見られて嬉しい。内容もさることながら、まさに、“ここまでやるか”という怒涛の展開に感動を覚えた。エンタメとして飽くなき追及心を持って作られていることが伝わってくるのだ。それはCGの使い方の上手さにも言える。緻密でリアルなCGということではなく、テレビ画面越しに現場の映像を見せるなど、多少粗くてもリアルさが損なわれないやり方を徹底しているから、見ていてしらけることがない。自国の官僚をコケにするのもいとわず、安っぽいヒューマニティに堕することなく、どこまでも熱く質の高いものを作ろうとする心意気に拍手!
2024年 1月
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『葛城事件』で感銘を受けた赤堀雅秋監督の、映画デビュー作。そして2024年1月現在、この2作しか同監督の映画作品は存在しない。やはり基本は演劇の人なんだろう。2作を観て思うのは、役者の演技を尊重しようとする強い姿勢だ。だから、演技の出来次第で作品全体の出来も左右される。『葛城事件』の場合はそれが非常に上手くいった。本作では、堺雅人、山田孝之の演技がややオーバーアクト気味で空回りしている気がする。僕の大好きな新井浩文は逆に影が薄い。
2024年 1月
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膨大なコレクションを誇るプラド美術館の作品群について、様々な人物が語る。僕としては、ただ淡々とたくさんの絵画を紹介してほしいのだが、それは好みの問題なのだろう。
2024年 1月
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これも新年早々、忙しい時期にとにかく面白い一作を再見しようと選んだ。時間逆行ものや時間ループものの作品は昨今小説でも映画でも散見されるが、そのうちでも本作は秀逸だ。謎が解ける快感の中に、人間の優しさが感じられて胸を打たれる。何度見ても面白い一本。
2024年 1月
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ジョージ・A・ロメロ監督の隠れた傑作として数十年前から存在を知っていたが、このたびようやくU-NEXTで見ることができた。サブタイトルのとおり、細菌兵器によって人々が発狂し、パニックに陥る姿が描かれる。ロメロ監督はいつもそうだが、単純な恐怖を描くだけでなく、そこに必ず人間ドラマをからめてくるので、見ごたえがある。本作を観ても、ああロメロ監督だなあと思わせてくれ、楽しませてくれる。
2024年 1月
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インディージョーンズシリーズ中、いちばん面白かったという記憶のもと、初見の妻と一緒に見た。結果、まあつまらなくはないけど、感動するくらい面白い、というほどでもなかったというところ。なにせ古い映画ではあるし、岩が転がって来るシーンなどはパロディ化され尽くしていたりするせいもあって、エンタメ作品で重要な真新しさを感じられなかったのかもしれない。クライマックスシーンも記憶の中ではもっと迫力があった。
2024年 1月
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キム・ギドク作品はいくつか見ているが、どぎつい映像や奇抜な設定の割に、作品としての衝撃度はさほどでもないという印象がある。それでも本作は、主人公の“悪い男”が理不尽なまでに突っ切った行動をとり、なかなかの見ごたえを感じさせてくれる。荒々しい作風はときに稚拙さにもつながるが、本作はいい方向に転じている。同監督の過去作の中ではダントツの人気を誇るが、確かにこれは見てよかったと思えた。
2024年 1月
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職を失った夫婦がふとしたきっかけでレストランを経営することになる話。ずっと昔に妻と一緒に見た本作をふたたび二人で再見しようと思ったのは、昨年の12月に僕ら自身がカフェをオープンしたからだ。カウリスマキの映画に出てくる人々はみな生きるのが下手で情けない姿をさらしているが、どうしても応援したくなるキュートさも備えている。とりあえず開店してはみたものの、客の入りで一喜一憂する姿、これからどうなっていくのかはわからないけれど、わずかな希望を持ってやっていくしかないというところは、本当に身につまされる。安易な展開に走らず、それでも希望を感じさせるラストがいい。
2024年 1月
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澤田幸弘監督作を初めて見た。日活ニュー・アクションの旗手とされながら、その後の日活の路線転向にともなってポルノ映画を撮り、その後はテレビドラマ『太陽にほえろ』『大都会』『探偵物語』『西部警察』などの監督を務めたらしい。本作はデビュー直後の原田芳雄が主演で、映画としては70年代邦画の無軌道、ヤクザ、青春のすべてが詰め込まれており、映画の出来は最高ではないかもしれないが、僕はそのパワーに惹かれ、見入ってしまった。藤竜也、地井武男、佐藤蛾次郎、梶芽衣子などの俳優陣も豪華で見ごたえがある。すっとぼけた音楽の使い方も面白い。この時代の映画をもっと見たくなる。
2024年 1月
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これも過去に一人で見たものを妻と再見。入院患者の偽らざる本音が多分に出ており、ときおり笑わせられもしながら、見たあとは真摯な気持ちになる。これが事実に基づいていると思うと、人の持つ力の計り知れなさを感じる。かつて看護師の経験のある妻も、いたく気に入ってくれた。
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