■ 2008年に観た映画
  
2008年12月 「バニー・レイクは行方不明」
非常によくできた映画。名作と言ってもよいのではないか。
 ロンドンに越してきた女性の子供がいなくなった。女性は警察に捜索を願い出るものの、なんだか彼女の言動がおかしく、やがて周りの者達は彼女を疑いはじめる。そんな子供、最初から存在しなかったのではないかと。
 オチがとにかく素晴らしい。この手の作品は隠された謎がばれてしまうと他愛もないものが多いが、これは別。ちなみに今回の二作は共に映画評論家の町山智宏氏が自身のサイトで紹介されていたもので、是非観てみたいと思っていたら運良くテレビで放送してくれたのだった。
2008年12月 「蘇える金狼」
2008年12月 「赤い風車」
2008年12月 「針の眼」
2008年12月 「エンゼル・ハート」
ミッキー・ロークがまだボクシングをやる前で格好良かった頃の映画。見たのは大学生の頃で、当時はかなり衝撃的な内容だった。いま見返してみてもなかなかいい。映画の雰囲気というものがしっかり作り込まれているから、安心して世界に浸っていられる。もちろんCGなどない。それにしても「レスラー」で復帰したミッキー・ロークは別人だ。
2008年12月 「レナードの朝」
2008年12月 「フィッシャー・キング」
名作の誉れ高い作品なので観てみたら、まったく頂けない。どうもロビン・ウィリアムズは苦手な俳優だ。どんな役になっていようが同じに見えるし、彼が画面に出てきただけでなんだか映画の格が下がる気がする。
2008年12月 「OK牧場の決斗」
保安官ワイアット・アープと、ドク・ホリデイの活躍する西部劇。いや実にしっかりした作りとストーリーで、完璧に近いエンターテインメントである。
2008年12月 「三十四丁目の奇跡」
アメリカでは、「素晴らしき哉、人生」と並んで、クリスマス時期には必ずテレビで放映される映画らしい。デパートに雇われるサンタ役の男が、自分は本物のサンタクロースだと言い張る。事はだんだんと大きくなっていき、遂には彼が本物のサンタかどうかを裁判で争うことになる。
 どうやって裁判が決着するかは観てのお楽しみ。素敵なオチが心を和ませてくれる。
2008年12月 「トイ・ストーリー2」
第1作より面白い続編という困難な条件をクリアした傑作。CGのリアルさ加減をメインに据えるのではなく、そこはもうただの前提なのだ。脚本の素晴らしさとCGならではのアイデアに満ちあふれた、映画への愛を感じさせる作品。
2008年12月 「8 1/2」
2008年12月 「ブリジット・ジョーンズの日記」
2008年12月 「暴行」
2008年12月 「パリところどころ」
2008年12月 「華氏451」
トリュフォー監督作品としては、とてもわかりやすいものかもしれない。原作はレイ・ブラッドベリの有名な作品。読書を禁じられた世界で、書籍はすべて焼き捨てられていく。それでも本を愛する人々は、ある方法によって本を守ろうとする。ラストのオチがあまりにも美しい。
  
2008年11月 「悲愁」
2008年11月 「ヤング@ハート」
2008年に観た映画の中では、これがベストワン。平均年齢80歳という超高齢コーラスグループを追ったドキュメンタリー。人間の可能性を考えさせてくれ、また、心の底から笑い、泣かせてくれる。どんなに年をとっても、人は成長できる。生きる喜びを感じることができるのだ。
2008年11月 「モディリアーニ〜真実の愛〜」
2008年11月 「シッコ」
「華氏911」などでお馴染みのマイケル・ムーア監督の、アメリカの健康保険事情を描いたドキュメンタリー。映画によるテロを企てる監督なので全てを鵜呑みにするわけにはいかないものの、アメリカを含めた各国の実状を知るには参考になるだろう。冒頭でなかなか正視に耐えない“痛い”医療シーンが出てくるけれど、このシーンだけで後は出てこないので我慢すること。
2008年11月 「ボルサリーノ」
2008年11月 「レミーのおいしいレストラン」
ディズニー/ピクサー映画も地に落ちたもので、ここまで酷い内容とは思っていなかった。CGに頼るばかりで何の思想も創造性も感じられない。
2008年11月 「パリの大泥棒」
2008年11月 「ゾンビーノ」
2008年11月 「ダイヤルMを廻せ!」
2008年11月 「予期せぬ出来事」
ロンドン空港に集まる人々を描いた群像劇。最後に一本の筋が通り、いろんな人々がつながっていく。脚本がよく出来ていて、古い映画なのにじゅうぶん楽しむことができた。
2008年11月 「スリ(掏摸)」
2008年11月 「幸福(しあわせ)」
じつに気持ちの悪い映画である。とても幸せに暮らしていた夫婦が、あるとき夫に愛人ができ、そこから二人の関係が崩れていくのかと思いきや、物語は意外な方向に進んでいく。人間の複雑さ、不条理さを描いていてとても興味深い。
  
2008年10月 「ソウ4」
「ソウ」第一作を観た時にはかなりショックを受けた。練られたストーリー、特異なキャラクター、スピーディな展開、とくに最後に訪れる一連の謎解き部分の秀逸さ、なんといっても最後のオチ、どれもが斬新で目を引いた。アイデアあふれる残酷描写は、これらの要素があって初めて修飾辞として機能していた。以来、シリーズを通して見続けているが、だんだんと面白みが失せてきた。理由は簡単で、修飾辞であったはずの残酷描写が主体性を帯びてきて、いかに新鮮な殺人シーンを見せるかの勝負になってきたからだ。
2008年10月 「群衆」
2008年10月 「シックス・センス」
いろんな映画評の中で比較対照の相手として引き合いに出される作品なので、一度は観ておきたいと思っていた。面白くなくはなかったが、やはり最後のオチのためだけにある映画という印象が強く、そのオチさえ別にこの映画独特のものではなく、似たものはいくつもある。M・ナイト・シャマラン監督作は2007年に「レディ・イン・ザ・ウォーター」を観たが、こちらはどうしようもなく酷い映画だった。
2008年10月 「デス・プルーフ in グラインドハウス」
2008年10月 「プラネット・テラー in グラインドハウス」
2008年10月 「ボラット」
2008年10月 「ワン・ツー・スリー ラブ・ハント大作戦」
ドイツのボードゲームに「どきどきワクワク相性チェックゲーム」というものがある。タイトルからしてどうしようもないゲームに思えるが、これがどうして有名な傑作ゲームなのである。この「ワン・ツー・スリー〜」も、タイトルからしてくだらないお色気コメディーみたいに思ってしまうが、とんでもない、しっかりした映画で、とても楽しく観ることができた。コメディーではあるが、しっかりとした作りでちゃんと笑わせてくれるし、時代の風刺も踏まえている。もちろん古くさいアイデアがないわけではないが、そこは制作の年からして、また、この映画を元にした様々な作品が作られ、そうしたものに慣らされてしまっていることからして仕方がないと言えるだろう。
2008年10月 「ベイブ都会へ行く」
豚のベイブが活躍する第2作。ストーリーもよいが、動物達の演技が奇跡的に素晴らしい。実物の動物の演技とCGとを混合しているのだが、その区別がまったくつかない。従って、全編を動物達が本当に演技しているかのように見える。これは並のCG満載映画よりも遙かに技術が高く、観る者をそれだけで感動させる。これは映画界における一大事件だと思われるのに、公開当時さほど騒がれた記憶がないのが不思議だ。内容としてちょっとバタバタしてしまっているので、見応えという意味では不満はあるが、映像だけでも観てみる価値は十分にある。
2008年10月 「キングダム 見えざる敵」
2008年10月 「王様と私」
とにかくもう、タイの王様を演じるユル・ブリンナーの存在感である。デボラ・カー扮する家庭教師が、王様の子供達のもとにやってくる。厳格な王との対立の中からいつしか愛情が芽生える、というのは「サウンド・オブ・ミュージック」とよく似ているものの、テイストはまったく異なる。劇中劇が素晴らしくよく出来ていて、これは「ハムレット」に通じるかもしれない。もう一つ感心したのは、50年以上前の映画なのに、画質がハイビジョンレベルで残されている点だ。デジタル放送で、その高画質をじゅうぶんに堪能した。
2008年10月 「生きる」
黒澤映画で一本だけ、と言われたら僕はこれを挙げるだろう。大学生の頃に観て以来、三度目か四度目の鑑賞になる。こちらは市役所課長を演じる志村喬さんの独壇場だ。末期ガンと知らされてから自分の人生を見つめ直し、これまでと180度違った生き方を選択したところで場面が急転し、彼の葬式風景になるという演出もすごい。ブランコで歌を歌うシーンは、知っていても何度も観ても泣ける。
2008年10月 「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」
  
2008年 9月 「リトル・チルドレン」
2008年 9月 「砂塵」
古き良き時代の西部劇。ジェームズ・スチュワート扮する平和主義者の保安官助手が、悪徳市長と対決する。拳銃を持たない彼が街の紛争をいかに解決するかが見もの。ストーリーが素晴らしい。
2008年 9月 「暗殺者のメロディー」
2008年 9月 「七人の侍」
黒澤映画で最も有名な作品を、恥ずかしながら初めて見た。これだけのものをこの時代に作りきった点に脱帽。侍たちが一人ずつ集まっていくところも、実際の戦闘に入っていくところも全てが完璧。ただ、他の作品に比べて三船敏郎が目立たない点が意外。
2008年 9月 「オーメン2」
2008年 9月 「ゴッドファーザーPartV」
大好きなシリーズ。それにしても、マフィアものにしてもナチスものにしても、極悪非道な物語は多くの人を惹きつける。異常で特別な存在であるマイケルの生活のどこかが、我々一般人とリンクしているのだろう。
 そしてこの作品には、映画に臨む人々の正しい姿勢がみえる。画面のひとつひとつに魂がこもっている。何度も言うが、CGなんてぜんぜん必要ないのだ。
 ただし、パート1,2に比べ、このパート3は少し評価が落ちる。新しい主役となるビンセントを演じるアンディ・ガルシアが、いまひとつ弱い。彼は他の作品でもそうだが、なまじ風体に圧倒的な存在感があるだけに、見かけに頼ってしまうのだ。だからなんとなくいい雰囲気は出しているのだけど、それ以上にならない。アル・パチーノの域にまで達していないのだ。くわえて、ヒロイン役のソフィア・コッポラがさらにいただけなかった。彼女が出てくる場面だけ、ワンランク下の映画に思えてしまった。
2008年 9月 「白夜」
2008年 9月 「証人の椅子」
2008年 9月 「隠し砦の三悪人」
黒澤映画の中でも人気の作品。個人的には「七人の侍」より好き。やっぱり三船敏郎はこれぐらいびしっと格好良く決まっていなければ。ストーリーにも映像にもアイデアが満載で、長丁場をまったく飽きさせない。
 この映画に影響され、ジョージ・ルーカス監督が「スター・ウォーズ」を作ったらしい。百姓の太平と又七がC-3POとR2-D2に、雪姫がレイア姫になったのだ。そういえばいろんなシーンがそっくりにできている。
  
2008年 8月 「周遊する蒸気船」
2008年 8月 「ホテル・ルワンダ」
2008年 8月 「街のあかり」
2008年 8月 「アポカリプト」
2008年 8月 「黄金」
  
2008年 7月 「袋小路」
2008年 7月 「アウェイ・フロム・ハー」
2008年 7月 「ロミオとジュリエット」
2008年 7月 「椿三十郎」
織田裕二主演のリメイクではなく、オリジナルの黒澤映画のほうである。90分そこそこの短い作品の中に、まあいろんな趣向が凝らされている。三船敏郎の存在感は、ミスター邦画と呼ぶにふさわしい堂々たるもので、やはり稀有の役者だ。今やこんな俳優は日本にはいない。「用心棒」では少しストーリーがこみ入っている気がしたが、本作はよりわかりやすく仕上がっており、万人向けだと思う。起伏に富んだ展開の最後に、有名な決闘シーン。意外にあっさり勝負がつくものの、スプラッターなラストが待っている。
2008年 7月 「我が道を往く」
ビング・クロスビー主演。厳格なフィッツギボン牧師のもとに、クロスビー扮する若き奔放なオマリーが副牧師として赴任する。オマリーは失敗を重ねながらも自分のやり方を変えず、フィッツギボン牧師と対立するが、しだいに心を通わせていく。
 作中で何度かクロスビーの歌が聴ける。これが絶品。彼が近隣の悪ガキを集めて教会の合唱隊を作るあたりは「コーラス」(2004年)を彷彿とさせる。そして、泣かせてくれるラスト。「素晴らしき哉、人生」とも通じる、アメリカの良心を具現化した作品。
2008年 7月 「姿三四郎」
2008年 7月 「父親たちの星条旗」
2008年 7月 「硫黄島からの手紙」
2008年 7月 「醜聞(スキャンダル)」
2008年 7月 「稲妻」
2008年 7月 「プライベート・ライアン」
  
2008年 6月 「不都合な真実」
2008年 6月 「300」
2008年 6月 「イカとクジラ」
2008年 6月 「俺は待ってるぜ」
2008年 6月 「アイガー・サンクション」
2008年 6月 「黒い雨」
2008年 6月 「屋根の上のバイオリン弾き」
なにもかもが素晴らしかった。ミュージカルというと、歌や踊りにエネルギーが費やされ、ストーリーや細かい描写はけっこうお粗末だったりもするが、この作品はまったくそんなことはない。細部にまで魂がゆきとどいた、まごうかたなき傑作。3時間という長さをまったく感じさせない。
2008年 6月 「モンティパイソン人生狂騒曲」
  
2008年 5月 「松川事件」
前に紹介した「真昼の暗黒」同様、実際にあった事件を基にした作品。列車脱線事故において、ある青年が犯人にでっちあげられる。ろくな捜査もせず証拠もなく、ただ拷問により自白をさせられるが、裁判では一貫して無実を主張しつづける。
 単なる法廷劇として観てもじつによく出来ていて、感情移入させられる。事実が映画の通りならば、警察も検事も裁判官も、あまりにお粗末である。本作が上映されたあと、被告人の無罪が確定したという社会的意義も大きい。
2008年 5月 「水の中のナイフ」
ロマン・ポランスキー監督作。以前に同監督の「ローズマリーの赤ちゃん」を観て、ぞくぞくするようなサスペンスの演出にしびれたものだった。本作は監督がまだ20代だった頃の、初期の作品。一組の中年夫婦の乗る船に、一人の青年が乗り込んでくる。登場人物はこの三人きりで、彼らの微妙な心理の変化を追いながら、淡々とドラマは進む。それでも飽きさせないすごさ。一級の心理劇。
2008年 5月 「大日本人」
2008年 5月 「オーロラ」
踊りを禁じられた国の王女の、切なくも美しい恋の物語、らしい。全面協力したパリ・オペラ座には申し訳ないが、初めて評価1点をつけてしまった。物語としても映画としても成立していない。
2008年 5月 「反撥」
ポランスキー監督作。神経症の女性の精神がだんだんと壊れていく過程を描く。なんとも気持ちの悪い作品だが、サスペンスの演出は奇抜で斬新だ。デビッド・リンチ監督の「イレイザー・ヘッド」はこの映画を元に作られたという。ちなみに「イレイザー・ヘッド」は、以前に紹介した「素晴らしき哉、人生」のシーンもパロディにしているらしい。詳細は、「町山智浩氏のアメリカ映画特電」の第50回「トラウマ映画館E『早春』は『傷だらけの天使』の原点」を参照されたい。
2008年 5月 「野良犬」
2008年 5月 「骨まで愛して」
2008年 5月 「プルミエール〜私たちの出産〜」
世界各国での様々な出産法を紹介するドキュメンタリー。なるべく医療に頼らず、自然な形での出産を望む人々が登場するかと思えば、ベルトコンベア式に何十何百という分娩が行われる病院も出てくる。日本からは愛知県岡崎市にある病院も紹介され、見知っている病院だということもあって興味を持ち、劇場まで見に行った。出産シーンは迫力があり、それ以外の映像も美しかった。いっぽう、各地の映像を頻繁に切り替える見せ方は、ただ混乱を招くばかりで得策ではないと感じた。
 この映画には賛否両論あると聞く。それはそのまま、自然分娩に対する賛否だろう。僕は自然分娩賛成派なので、やはり本作は観るべき価値のある作品だと思う。ただ、出産というものを闇雲に神格化するのではなく、自然分娩の長所と短所、積極的に医療の力を借りることの長所と短所をすべて頭に入れたうえで、各人それぞれがやり方を選択していくべきだろう。
2008年 5月 「虎の尾を踏む男達」
2008年 5月 「小間使」
  
2008年 4月 「夜を楽しく」
2008年 4月 「レイ(RAY)」
レイ・チャールズの生涯をジェイミー・フォックスが完璧に演じている。映画の中でピアノを弾くシーンも、長期間ピアノの練習をしたジェイミー・フォックスが実際に弾いている。
 スーパースターの良い面と悪い面のうち、どちらかといえば悪い面を多めに見せているのがすごい。レイ・チャールズの有名な曲の裏に秘められた事情を知るのも楽しいし、単純に歌を聴くだけでもわくわくする。
 幼少期を振り返る場面で、目の見えなくなったレイ少年が、手探りで家の中を歩く練習をする。なかなかうまくいかないが、母親は決して助けようとしない。ようやく初めてちゃんと歩けたとき、母親は彼を抱きしめながら涙を流す。「なぜ泣いているの」とレイが尋ねると、母親は、「とても幸せだからよ」と答える。ここは胸にぐっときた。
2008年 4月 「細雪」
2008年 4月 「アメリカの夜」
2008年 4月 「ガス燈」
2008年 4月 「カッコーの巣の上で」
ずっと見たかった作品。「ロボトミー(精神障害者の攻撃的行動をおさえるため、脳の一部を破壊する手術)を描いた作品」と紹介されることがあるが、ロボトミーについては最後の最後で出てくるに過ぎない。主人公は、刑務所での労役を逃れるため精神障害者のふりをし、精神病棟に入れられる。彼は管理主義的な病院の方針に立ち向かいながら、患者達とのふれあいを深めていく。
 精神病棟という特殊な環境を描きながら、同じような管理的な社会すべてを批判し、そこからの脱却をうながす作品だ。患者を抑圧し、自由を奪う病院側の体制にことごとく反発し、規則を破っていく主人公。その行く末には、哀しみとわずかな希望が見える。
2008年 4月 「帝銀事件 死刑囚」
2008年 4月 「用心棒」
2008年 4月 「黒い潮」
2008年 4月 「真昼の暗黒」
実際に起きた「八海事件」という冤罪事件を基に作られた作品。原作は、この事件の担当弁護士が書いている。
 老夫婦が殺害され、一人の男が逮捕された。彼は罪を認め自供をしたが、警察は複数犯だと信じて疑わない。厳しい追及に男は耐えられず、しかも共犯がいることにすれば自分の罪が軽くなるとの思いから、遊び仲間四人の名を告げる。
 四人は犯行を否認するが、警察での酷い拷問により、遂に罪を認めてしまう。裁判になり、四人は拷問による自白を主張し、無実を訴えるが、地裁高裁ともに有罪の判決が下され、四人のうち主犯とされた青年には死刑が宣告される。

 映画は、本事件の最高裁での審理中に作られ、封切られた。様々な圧力がかかり、自主興行のような形で公開されたようだが、結果的には全国的な大ヒットとなった。
 映画のラストシーン、死刑宣告を受けた青年が叫ぶ、「お母さん、まだ最高裁があるんだ!」という言葉は一大センセーションを巻き起こした。そして遂にこの映画が司法を動かした。その後おこなわれた最高裁では高裁での有罪判決が破棄され、高裁への差し戻しとなった。そして高裁での再審理の結果、四人に無実が判決が下りた。
 しかし裁判はこれで終わりではなかった。その後、検察側が上告をおこない、最高裁ではふたたび無実の判決が破棄され、高裁での再々審理となる。高裁での判決は有罪と出た。主犯とされた青年には死刑が告げられた。この頃、最初につかまった男は良心の呵責に耐えかね、自分の単独犯である旨を刑務所から最高裁に17通も出したが、刑務所によって握りつぶされたという。それでも、担当弁護士による書籍、それからこの映画の力が通じたのか、最後の最高裁審理により、四人の無罪が確定した。じつに、事件発覚から17年9か月を経ていた。

 映画では、警察や司法の横暴ぶりが詳細に描かれる。本作は、日本人ならば一度は見ておくべき作品だと思う。
 以下のサイトに、事件のあらましが紹介されている。

・「八海事件
  
2008年 3月 「オーメン」
2008年 3月 「大いなる遺産」
2008年 3月 「クイーン」
2008年 3月 「明日の記憶」
2008年 3月 「目かくし」
2008年 3月 「マーティ」
2008年 3月 「イル・ポスティーノ」
2008年 3月 「灯台守の恋」
なんだかここでは古い映画ばかり紹介しているようだが、古い映画ばかり観ているのだ。テレビ雑誌を見ながらめぼしい作品をチェックする際も、1990〜2000年代の作品よりは1980年代以下のものに惹かれる。
 本作は、そんな中でも比較的新しい作品。孤島に住み、交代で灯台守をする人々の暮らし、そして恋。当時の灯台守は一歩間違えば命さえ落としかねない危険な仕事であり、そこが非情に丁寧に描かれていて好感が持てる。大絶賛はしないが、良い映画だと思う。
2008年 3月 「明日に向かって撃て」
2008年 3月 「プラトーン」
  
2008年 2月 「未知との遭遇<ファイナル・カット版>」
2008年 2月 「鴛鴦歌合戦」
これは珍しい「時代劇ミュージカル」で、とても新鮮に観ることができた。踊りの要素は少ないが、歌は変化に富んでいて楽しい。黒澤明映画でおなじみの志村喬さんが出演されていて、吹き替えなしでものすごくうまい歌を披露されていたので、感心してしまった。
2008年 2月 「スピード」
2008年 2月 「デッド・フライト」
2008年 2月 「スティング」
ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード共演による、痛快娯楽映画。もう何も言うことはない。これこそ映画だ。これこそが娯楽だ。観客を楽しませるアイデアに満ち、画面の緊張感は緩むことなくラストシーンまで突っ走る。セットから演技から脚本から、すべてが完璧。僕はとくに、列車の中でポーカーをやる場面が大好きだ。
2008年 2月 「ヘルゾンビ」
2008年 2月 「聖処女」
2008年 2月 「トッツィー」
2008年 2月 「麗しのサブリナ」
オードリー・ヘップバーン、ハンフリー・ボガートというこちらも大スター二人の共演作。申し訳ないけれど、僕はオードリー・ヘップバーンはあんまり好きではないのだ。どの映画を観ても、ちょっと頭の足りないわがまま娘というワンパターンで、容姿もあまり好みではない。ボギーもぜんぜんかっこいいとは思えない。二人の魅力を感じられないとなると脚本に見せ場はなく、映像美を感じさせるシーンもないとすれば、これ以上にどう評価せよというのだろう。
2008年 2月 「さらば冬のかもめ」
若かりし頃のジャック・ニコルソンが出ている。ふとした小さな犯罪で監獄に捕らわれた若い青年を護送する任務を、ニコルソン演じるバダスキーともう一人の将校とが命ぜられる。青年の純粋さとニコルソンら将校の無軌道さとが不思議に交錯しあい、一風変わったロードムービーに仕上がっている。それほど有名な作品ではないが、これは意外に佳作だった。
2008年 2月 「スローなブギにしてくれ」
  
2008年 1月 「素晴らしき哉、人生!」
2008年しょっぱなに観た映画は、僕の自己採点で最高の5点をつけた。
 アメリカのクリスマス時期に必ずテレビで流される映画が二つあり、一つが「34丁目の奇跡」、もう一つがこの「素晴らしき哉、人生」だ。本当は2007年のクリスマスに観る予定だったのが、ちょっとずれこんで正月明けになった。

 話の筋は、ディケンズの「クリスマス・キャロル」にちょっと似ている。ただし主人公はスクルージとは違い、善良な金貸しである。彼はそれまでの人生でことごとく運に見放され、自らを嘆きながら暮らしている。そんな彼が、街の有力者の罠にはめられ、大きな借金を抱えてしまう。返せるあてもなくなり、絶望して自殺を図ろうと橋の上に立った時、空から何かが落ちてくる。それはみすぼらしいおじさんで、自分は天使だという。彼の自殺を防ぐためにつかわされたという天使は、彼が存在しなかった世界を彼に見せてくれる。そこでは、悪徳金融会社がのさばり、彼の家族を含めた街の人々がみな不幸になっていた。つまり、彼がいることでたくさんの人間が救われていたのだ。彼はやがて少しずつ自分を取り戻していく。

 1946年の映画である。もちろん白黒だ。映画は、主人公ジョージの小さい頃からの生い立ちを丁寧に描いていく。2時間10分という長丁場の中で、観る者はどんどんジョージに感情移入していく。どうにも歯がゆく感じ始めたころ、彼は自分の人生がいかに恵まれていたかを思い出す。それでも、彼が背負った巨額の借金をどう返すのか。ラストにはあっと驚くオチが用意されていて、もう涙せずにいられない。誰もが元気になれる映画だと思う。
 ジェームズ・スチュアートはやっぱりいいなあ。善良な市民を演じさせればピカイチだ。
2008年 1月 「暗黒街の顔役」
2008年 1月 「カリガリ博士」
2008年 1月 「ゆすり」
2008年 1月 「汚名」
2008年 1月 「ハウス・オブ・ザ・デッド2」
2008年 1月 「地上最大のショウ」
タイトルの意味は、「サーカス」のことである。。1950年代頃のサーカスは人々にとって大きな娯楽だった。しかも今と比べて規模が大きく、サーカス小屋の中を数頭の象が走ったりする。この映画は、サーカスそのものだ。画面に映し出される出し物をただじっと見て、興奮すればよい。途中の恋愛模様などは付け足しに過ぎない。
 今じゃなかなかこんな映画は撮れない。題材にならないし、お金をかける価値がないと見なされるだろう。
2008年 1月 「白い恐怖」
2008年 1月 「踊る大紐育」
紐育(ニューヨーク)に来た三人の水夫が繰り広げるドタバタ劇。まだミュージカル映画に「踊り」の要素があった頃のお話。いやあ楽しい楽しい。その楽しさは、卓越した技術の土台の上に成り立っているという格好良さ。フランク・シナトラ、ジーン・ケリー、アン・ミラー、ヴェラ・エレン、みんな踊りも歌も超一流だ。
2008年 1月 「ヒッチャー」
2008年 1月 「青いドレスの女」
2008年 1月 「48時間」
2008年 1月 「ビバリーヒルズ・コップ」
2008年 1月 「キャット・バルー」