その5

8/11(水)


塩之沢峠のトンネルを抜けると、空気が変わった。下ってすぐの所には御荷鉾林道というスーパー林道が横切っていた。MTBなら、この道を走ったらすごくおもしろそうだ。この辺りは、あまり有名ではないから人も車も自転車も少ないけど、実はかなり穴場エリアのような気がする。


群馬県の南端の山々が広がる。R299まで爽快な下りを楽しめる。ただし、リアキャリアに気を遣いながら。気が付くと寄っているので、手でグイッと中央に修正してあげないといけない。次に後輪に干渉したら本当にやばい。


下っていると、「サァー……」という心地よい水の流れる音がした。こういった水のある場所は涼しいので、気持ちも和らぐ。猛暑の中に「涼」を感じた瞬間だった。


下りはヘアピンカーブの連続。車はほとんど走っていないので走りやすいが、調子に乗って飛ばしすぎるとカーブを曲がりきれなくなるので、注意が必要だ。

爽快に下って行くと、新しいきれいな道に合流した。トンネルの出口があった。「湯の沢トンネル」。峠を上る前に、こちらを走っていたらずいぶん楽だったことだろう。でも、おれはより辛い方を選んだ。よりやりがいがある方を選んだ。そして、走りきった。だから、それでいいんだ。


R299に出ると、そこからも緩やかな下りが続いた。とにかくひたすら下りなので、楽だし爽快だった。今まで暑い中ひたすら上ってきたので、これくらいは当然でしょ、なんて思いながら下って行った。トンネルが多くて、トンネルの入口や出口にはつなぎ目の段差があったりするので、それに気をつけながら走って行った。


このあたりは観光案内図を見る限り、ちょこちょこ観光スポットがあったのだが、今は寄っている時間はない。それに、それらは坂の上とか、ちょっと奥地に入ったところにあるので、自転車では気軽に行けないような場所なのだ。今はとにかく今日の宿泊地である秩父を目指してひたすらR299を走る。


道の駅上野に到着。ようやく人が集まるような場所にやってきた。道の駅の人にトイレの場所を聞こうとしたら、「ただいまトイレに行っています」という張り紙が貼ってあって不在だった。トイレは道を挟んで反対側にあった。


塩之沢峠の上りで携帯しているドリンクをすべて飲み尽くしてしまったのでここで補給したかったのだが、なんと道の駅に自販機がなかった。これはやばい。秩父までとてもじゃないけど水分なしで走り続けることはできない。戸惑いながら出発したが、少しして自販機があって一件落着。しっかりボトル2本を満たして再出発。


やや日が傾いてきた。まだ一つ峠が残っているので、まだまだ気を抜けない。下りはR462との交差点までだろう。R299は今までの道に比べるとだいぶ車が増えてきた。


あるトンネルで、とても幻想的な雰囲気が漂っていた。オレンジの光が一定間隔で壁に映り、それが光の窓のようだった。


埼玉県との県境に近づくにつれ、独特の風景が広がってきた。このR299は、今回はただつなぎの道として通過しただけだったけど、景色を楽しむために走りに来ても楽しい道だと思う。


R462との交差点を曲がってR299を進む。橋を渡ると、上りになった。いよいよ今日最後の峠への上りが始まる。いきなりかなりの勾配で上り、疲労が溜まっている足にはきつかった。


ここまで15kmほどひたすら下ってきたので、上りでは足がだるく感じた。でも、「もうこれを越えたらあとは下ってホテルだ」そう思うと、不思議と力が沸いてきた。


曲がりくねった上り坂を、集落の風景を楽しみながら上っていく。この辺りは恐竜の足跡があるとかで、恐竜にちなんだちょっとした観光地っぽい場所がチラホラあった。


車やバイクがよく通るが、道幅はそんなに広くない。夕暮れの田舎の風景が独特の雰囲気を醸し出していて、いい感じだった。


勾配が緩くなってきて、いよいよ峠に到着か!? と心ウキウキしながら走って行く。恐竜王国という看板が立っていた。あれで王国だったのか…とか思った。


まもなくして、ついに志賀坂峠に到着。今日の峠はすべて上った。後は秩父まで下るだけだ。

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