南無輪円具足十界勧請大曼荼羅御本尊 南無末法有縁の大導師高祖日蓮大菩薩 当山勧請の諸天善神 殊には永遠大明王 遠龍明王 通遠明王 影現降臨 證知證鑑 哀愁加被 謹み敬って 本日 宗祖日蓮大聖人御入滅七百三十遠忌 報恩大法要を 一会の大衆と共に厳修し 恩山の一塵 徳海の一滴を謝し奉る つらつら当山一年の歩みを顧みるに 大寒波襲う年明けとなり積雪に年頭行事遂行は支障を見るも 寒修行 大荒行堂出迎え団 帰山式等を強情なる信心にて乗り越え春を迎う しかるに 東北関東太平洋沖地震 所謂東日本大震災が三月十一日発生 文字通り未會有の災害 我が国は原発問題も含め大混乱を見る 日蓮大聖人の教義を信奉せる我等本佛寺は 早速に被災地石巻に入り 三陸沿岸にて合掌 救援物資搬入並び復興に尽瘁 せり また西日本新聞社を通じ 寒修行浄財を赤十字基金に寄与し苦惱の一助とす 同じくして筑後川に一升瓶三百本の神酒を奉納注入 被災犠牲者追悼を三度繰り返し御回向 しかるに四月七日再び大余震発生 復旧に湧く被災地を襲う 涙暇なしの祖意これを彷彿とせるの国難的惨状は 何を持って寺院あるかの定義を問われん如き現実を突きつけらる 祈りと何か 利益とは誰の何処を指し成就とするや 大震災以来某 一先祖 一個人の為なるか 全世界の先祖 全人類の救済の為なるかを再び神仏に尋ねん 法華経は釈尊が到達されし究極の教義経王にして その趣意はすべての冥助とさる 須くのご加護なり これを持って開せば 己のみの幸いは方便に過ぎず 他者の安寧 他家の先祖供養 これを幹に合掌せることこそが われらの本義といえり されば我が日蓮宗提唱の但行礼拝はかくのごときものなり 大震災よりの信仰信心の有り様を大いに学び給う しこうして本年の当山は 夏には絆を主題に林間学校を開校 次世代に互助を説き 盂蘭盆法要は犠牲者初盆御回向を忝のうし 西身延青年会は大震災特別号機関誌発行し感情表現 また婦人会は総本山身延山久遠寺に団参登詣 総代役員 青年会も同行となり 七十八名が祖廟輪番奉仕を努め 青年会は七面大明神に登詣し共に東日本大震災犠牲者追悼を行う この平成二十三年は 悉く国難対応へと移行し行事を遂行せり 本日 当山最大行事御会式を迎え その大意を持って 水難を仏縁の法雨とし 信仰増進の報恩に擬するのおもいをなす 未だ避難生活余儀なくさる人々 済み慣れし家を追われし人々 今 我ら一欠片でも共有せんと欲す さてはこの信心を持したる 同門教師の輝き後をたたず 早野前篤師 釋迦院再建成就本月落慶を迎う 水城前辰師 西地区参事宗務所副長 更に清正寺復興し住職就任 城戸前竜師 協議員議長就任 平石前勝師 協議員並び円誠寺住職就任 下田前相師 協議員就任 浅井前臣師 初行成満 徳永前啓師ハーバード大学派遣隨行 この門を叩きし僧侶の教団拡張のみならず 教化を目途の活躍は 当山檀信徒先祖の喜びなり それぞれに精励されんこと願いここに祖師に報告す 犠牲者追悼を旨に 我等一同 一天四海皆帰妙法祖願達成に心酔を誓い 宗祖御入滅七百三十遠忌 報恩の奉告とす 伏して祈らくは 全人類 殊には本日参詣の善男善女人 檀信徒各位 各々安寧にして所願成就ならしめたまえ 重ねて祈る 各位志す先祖代々の霊 頼る有縁無縁の諸精靈 妙法経力 即身成仏 乃至法界平等利益 南無妙法蓮華経 維時平成二十三年十月十四日 鎮西身延山 第九世法統 體鵬院日遠 啓白
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東日本大震災を宗教的観点から天災と見たとき、神仏は私達日本人に何を伝えようとされたのか。悔しくもガレキと指さされてしまう大切な住居跡や生活空間、更に尊い家族や友を突然失い涙する日々。未だに続く惨状に向き合うと、つい『仏は人に絶対無理とされる苦惱は与えない』の教説を問いたくもなる。 「度々のご支援感謝しております。万灯は流されたけど御会式準備に奮起しています。東京から万灯と纏が応援に来てくださるそうです。家族で支え合って、被災地域一丸となって頑張っております。」宮城県石巻から手紙と三陸産サンマが沢山入った小包が届いた。力強く、そしてゆっくり確実に前へ進んでいる東日本。 今こそ、豊作や健康に感謝し家族で祈ったこと、産まれた命を先祖に喜んで報告したこと、受験合格を願ったことなどを含め、この御会式趣旨の「報恩」の深さを再考したい。精一杯生きている姿を、涙をこらえ頑張っている私達を、仏様はご覧になりご存じなのだから。 それをたたえて仏様は、『要は善知識からなる』(苦しい時に得た知識こそ本物である)と仰せになられているのである。生き抜いてこそ人生。無理とされた惨状から、手を繋ぎあい、今も復興再生に踏ん張っている日本人が多くいる事実を支えとしよう。 全国各地で行われている御会式は、その年ごとにテーマがあるように思えてならない。『絆』 これは苦しい時にのみ生まれるのではなく、不断にもあるべき精神である。伝統行事や祭りにはそれが満ちあふれている。 命の躍動を表現する御会式。毎年のご協力、ありがとうございます。 合 掌 平成23年10月 うきは市 西 身 延 本 佛 寺 |