4.1 ヴィニエット小屋から
アローラへエスケープ、ツェルマット5:30頃食堂に行くとフレデリックが居て、天気が悪いので出発を1時間ほど遅らせるから、もう少し寝ているといいと言った。僕も風の音を聞きながら気力が萎えていたので、お言葉に甘えることにした。7:00頃朝食をとりながら今日のことを相談したが、どうやら天気は今日・明日ともよくないという。我々に残されたのはあと4日、採るべき方法は2つあるとフレデリックは言った。一つはここに留まってチャンスを待つ、ただしそれはとても退屈だし、小屋の宿泊費がかかる。二つ目はホテルはツェルマットにとってあるし、アローラへ滑り、バスと電車でツェルマットに行き、晴天を待って逆コースで完走する。ただしこれには2日必要だし、交通費と移動の時間がかかる。
しばらく検討した結果僕達はツェルマットに行く案に決めた。本来なら今日中に山中を通って行けるところへ、大きな回り道で、大金を使って行かなくてはならないわけだ。だがその方が悪天でも、スキーをしたりみやげ物を見たりして有意義に時間を使うことが出来る。昨日苦労して登ったルートをスキーであっけなく短時間で降りてしまう。
バスと列車の旅はなかなか面白かった。バスの車窓から見える村はどこも美しくてチャーミングだったし、水に浸食されて出来た面白い地形や、カッパドキアのような自然のモニュメントに驚いたり、延々と続くブドウ畑を飽きもせず眺めたりした。シオンから乗った列車の中ではハネムーンとおぼしき日本人カップルを見た。やはりツェルマットへ行くようだ。ヴィスプで乗り換えの時に少し言葉を交わした。ヴィスプからはさらに多くの日本人を見た。タッシュの手前に大きな土砂崩れの跡があった。2年ほど前に家と線路を埋めたが、幸い人は誰も被害に遭わなかったという。今は列車はその跡を回避して走っている。曇った空からは時折雨が降っていたが、ツェルマットに近づくに従ってそれは雪に変わっていった。ツェルマットには普通の自動車は入れない。
電気自動車と馬車が静かに行き来しているだけだ。だから観光客は全てタッシュで車を停めて列車でツェルマットに来るわけだ。そのへんが上高地と似ている。
ツェルマットには冷たい雨が降っていた。街は灰色に色褪せ、雪解けの水は道を濡らし、馬の糞を流し広げている。それに我々のホテルは街のはずれにあり、駅からは賑やかな所を全然通らなかったので、なんだかもの寂しいところだなと思ったのがこの街の第一印象だった。午後3:00宿ではまずシャワーを浴びてくつろいだ。4:30頃近くのコインランドリーに5日間はき
続けた下着や靴下を洗いに出かけて、そのまま街に繰り出した。しかしわざわざはきかえたコットンのズボンや靴下・スニーカーに雪は遠慮無く融けて、馬の糞と共に滲みてくる。とても冷たい思いをしながらメインストリートを一通り歩いてみた。山は全く見えず、ただの街という印象を拭えない。山岳博物館や教会を回り、マクドナルドでハンバーガーを食べた。賑やかな土産物屋を回ったが結局何も買わずに宿に帰った。
夕食は近くのレストランにチーズフォンデュを食べに行ったが、相棒がすぐに酔ってしまったので、彼はソーセージとポテトを注文した。フレデリックと僕は3人分のフォンデュと2本のワインを飲んでとてもいい気分になり、僕らは10:30頃までレストランに粘っていた。
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