竹内薫:ゼロから学ぶ量子力学 普及版

作成日:2024-02-27
最終更新日:

概要

「ブルーバックス版へのまえがき」から引用する。

21 年前に書いた本である。

中略

「ゼロから学ぶ」シリーズは、何冊も書かせていただいが、量子力学と相対性理論の巻が、自分ではよく書けたと感じている。 そして、この量子力学の本だけが、重版を重ねたのを覚えている。

感想

21 年前に書いた本とはゼロから学ぶ量子力学のことであり、本書はこの以前の本の普及版である。

p.86 からは微分・積分について解説されている。面白いのは、ここでロビンソン流の無限小解析の基礎が展開されていることだ。p.96 で、 この無限小解析の方法が大学教育に普及しないのか、非常に不思議である。と嘆いている。まさか、大学の数学の先生がおまんまの食い上げになるから、 という理由ではないだろう。また、無限小解析のもとのことばは英語で nonstandard analysis だから、非標準ということばを見て数学者は敬遠したのかもしれない。

p.249 には次の感想がある。

今の日本には科学嫌いの子供が増えている。 僕は、大学の授業で湯川秀樹、朝永振一郎という日本を代表するノーベル物理学者たちの名前を知っている学生がクラスの 1 % にも満たないのを知って、 愕然とした覚えがある。化学が嫌いで本を読まない子供たちが育っているのにも、それなりの社会的な背景があるにちがいない。

日本では、理科系の学生に科学史を教えない。アインシュタインやハイゼンベルクといった偉大な科学者たちの人生について、もっと学ぶべきではないだろうか。

著者が担当した大学の授業は、いつごろだったのだろうか。このとき授業を受けた生徒は、いつ頃の年代なのだろうか。 私自身はというと、著者より年下である(どれだけ年下かは、言わない)。湯川秀樹は知っていた。私は小学生のとき、子供向けの湯川の伝記を読んでいたからだ。 朝永も知っていたが、それは湯川の伝記に書いてあったことぐらいである。その後、江崎玲於奈も受賞したことを知った。私が高校生のあいだは、ノーベル賞を受けた日本の科学者はこの三人 だけだった。 私が大学生のとき、福井謙一がノーベル賞を受けた。そののち、徐々に日本の科学者もノーベル賞を授与されるようになった。私は、特に湯川や朝永に連なる、 ノーベル賞を受けた日本人の名前を知らなくてもいいと思う。だいたい、世界で初めてガンを人工的に発生させた山極勝三郎と市川厚一が受賞できずに、 誤ったガン発生説を唱えた学者が受賞できたノーベル賞など、権威がそんなにあるのはおかしいという見方もある。

ただ、偉大な科学者たちの人生について、もっと学ぶべきという主張は、その通りだと思う。著者が何を持って日本では、理科系の学生に科学史を教えない。 と断言されているのか気になるが、 私自身のことをいえば、出身大学の教養の授業で、文科系には科学史の授業が開講されていたのに理科系には科学史の授業が開講されていなかったということを今でも思い出す。 そして、科学史を学んでこなかった後悔が自身今でもあるのは確かだ。

参考書

次の参考書が pp.276-p.278 にある。これらは普及版にあたって増補改訂したものと推測される。

ゼロから学ぶシリーズ

数式記述

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書誌情報

書名 ゼロから学ぶ量子力学 普及版
著者 竹内薫
発行日 2022 年 3 月 20 日(第1刷)
発行元 講談社
定価 1200 円(本体)
サイズ 286p 18cm
NDC 420
ISBN 978-4-06-527401-9
その他 草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi