清野 智昭:ドイツ語のしくみ≪新版≫ |
作成日: 2015-06-06 最終更新日: |
ドイツ語がいったいどんな言語であるか、その「しくみ」をわかりやすく説明した本である。
この白水社の「しくみ」シリーズはどれもそうだが、これ一冊ですべてが事足りる、という本ではないことに注意すべきだ。 むしろ、本格的な本を買い、そこで納得できないときの頭の整理として使う本である。 このドイツ語のしくみも、まさにそんな本だ。
私が好ましく思っているのは、ほかの言語への目くばせもしていることである。
たとえば、p.109 で格を数字で呼ぶのはドイツ語業界だけの慣習で,一般言語学的には 1 格を主格,2 格を属格, 3 格を与格, 4 格を対格と呼びます.
と指摘しているが、他のドイツ語の本でこのように明言しているのは見たことがない。他の屈折がはなはだしい言語、たとえばラテン語やロシア語であれば、
数字ではなく名称で指定するのが当然である。
また、p.55 ではヨーロッパの言語の中で英語は例外的で,他の言語は名詞に性があるのです.
嘘だと思われる方は,この「言語のしくみ」シリーズの他の言語の本を読んでみてください.フランス語もイタリア語もスペイン語もロシア語も,
みんな名詞の性を持つ言語です.
と述べている。
実際には、ヨーロッパの言語でも、フィンランド語、ハンガリー語、バスク語には名詞の性がない。
そしてこの三語にはすべて、「言語のしくみ」シリーズがある。だから、
厳密にいえば著者の清野先生もすべてのヨーロッパの言語のことをいっているのではない、ということを知っておかなければならない。
そのうえで、性とよばれる名詞のグループ分けがあるということは、知っておくべきである。
p.81 には人称と単複による、動詞の変化形が載っている。この「しくみ」シリーズは、外国語の本に必ずある人称変化表を省いたことに意義がある、
と感じていたから、この表にはがっかりした。しかし、著者はさて,他のドイツ語の参考書ではこんな表がのっています.
と前口上を述べている。
そして、表の下で二人称には親称と敬称で異なること、いくつかの人称、たとえば二人称の親称 (du / ihr) は省略することが述べられている。締めは
du / ihr で話す人が見つかるころにはもうこの本はとっくに卒業していることでしょう.
とある。
それでも、表は出さないでおいてほしかったなあ。
書 名 | ドイツ語のしくみ≪新版≫ |
著 者 | 清野 智昭 |
発行日 | 2014 年 2 月 25 日(発行) |
発行元 | 白水社 |
定 価 | 1300 円(本体) |
サイズ | 判 |
ISBN | 978-4-450-08656-8 |
その他 | 南越谷図書館で借りて読む。 |
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