「はじめに」から引用する :
この本は,大学などの講義のわくに余りとらわれることなく,多くの人たちに,あの気の進まない数学が,なぜ,どんな具合に科学に利用されるのかを述べてみたものである.
pp.31-33 では、コンピュータはもともと複雑な弾道を計算するために開発されたものだ、という説明がある。それはそうなのかもしれないが、 富士写真フイルムでプログラム記憶方式のコンピュータ FUJIC を開発した岡崎文次はレンズの設計を目的としたものであった。こちらのほうが平和でいい。 まあインターネットの原型も軍事関係であるということを聞いたことがある。それはともかく、多くの発明は軍事から始まり、エロで広がる、という節を飲み屋で多く語ってきたし、 耳にしたが、どうなのだろうか。
本書では「惰性系」という用語がたびたび登場している。たとえば、p.152 の下から 8 行目で以上は,惰性系だけを扱う特殊相対論であるが
などと書かれている。
通常は「慣性系」という用語が使われ、惰性系という用語は今ではほとんど使われない。しかし、惰性で生きている私は、惰性系という用語をきくと安心する。
本書は物理数学の本だが、物理数学の本にしては珍しく、物理が前面に出ている。たとえば、次の問題を見てみよう。 p.58 から引用する。
〔問 1-7〕半径 `a`,質量 `M` の円板(厚い円柱でもかまわない)の,中心を通って板に垂直な軸に対する慣性モーメントは `I = Ma^2//2` である。 これは簡単な積分式で計算できるが, 高校物理では,微積分を物理にとり入れないというタテマエから,結果だけを暗記させる。
さて同じ厚さ(もちろん均一物質)で,半径だけを 2 倍にした大きな円板を作ったら,これの慣性モーメントは,小さいほうの
① 2 倍 ② 4 倍 ③ 8 倍 ④ 16倍
になる。
p.27 上から 15 行目、rot はローテンションと読む
とあるが、《rot はローテーションと読む》が正しいと思う。さすがにテンション(応力)が低いという意味ではないだろう。
p.56 下から2行目、余計に「防害」が生じることになる。
とあるが、《余計に「妨害」が生じることになる。》が正しい。防害という単語はあるが、これは「害を防ぐ」意味である。
この場合は文脈から、妨げ害する意味にとるのが自然だと思う。
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | 新装版 なっとくする物理数学 |
著者 | 都筑卓司 |
発行日 | 2018 年 8 月 8 日 第1刷 |
発行元 | 講談社 |
定価 | 2000 円(本体) |
サイズ | A5 版 267ページ |
ISBN | 978-4-06-512449-9 |
その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |
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