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1996年(平成8年)2月26日
法制審議会総会決定

民法の一部を改正する法律案要綱

第1 婚姻の成立
  1  婚姻適齢
     婚姻は、満18歳にならなければ、これをすることができないものとする。
  2  再婚禁止期間
    1  女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとする。
    2  女が前婚の解消又は取消しの日以後に出産したときは、その出産の日から、1を適用しないものとする。

第2 婚姻の取消し
  1  再婚禁止期間違反の婚姻の取消し
     第1、2に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消しを請求することができないものとする。

第3 夫婦の氏
  1  夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  2  夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

第4 子の氏
  1  嫡出である子の氏
     嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又は父母が第3、2により子が称する氏として定めた父若しくは母の氏を称するものとする。
  2  養子の氏
    1  養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦が共に養子をするときは、養親が第3、2により子が称する氏として定めた氏)を称するものとする。
    2  氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子とするときは、養子は、1にかかわらず、養親とその配偶者が第3、2により子が称する氏として定めた氏を称するものとする。
    3  養子が婚姻によって氏を改めた者であるときは、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、1、2を適用しないものとする。
  3  子の氏の変更
    1  子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、子の父母が氏を異にする夫婦であって子が未成年であるときは、父母の婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができないものとする。
    2  父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏又はその父若しくは母の氏を称することができるものとする。
    3  子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合において、子が第3、2によって子が称する氏として定められた父又は母の氏と異なる氏を称するときは、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、父母の婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでないものとする。
    4  子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、1から3までの行為をすることができるものとする。
    5  1から4までによって氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができるものとする。

第5 夫婦間の契約取消権
 第754条の規定は、削除するものとする。

第6 協議上の離婚
  1  子の監護に必要な事項の定め
    1  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及び交流、子の監護に要する費用の分担その他の監護について必要な事項は、その協議でこれを定めるものとする。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならないものとする。
    2  1の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、1の事項を定めるものとする。
    3  家庭裁判所は、必要があると認めるときは、1又は2による定めを変更し、その他の監護について相当な処分を命ずることができるものとする。
    4  1から3までは、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生ずることがないものとする。
  2  離婚後の財産分与
    1  協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるものとする。
    2  1による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるものとする。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでないものとする。
    3  2の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその協力によって取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮し、分与させるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めるものとする。この場合において、当事者双方がその協力により財産を取得し、又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

第7 裁判上の離婚
  1  夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができるものとする。ただし、(ア)又は(イ)に掲げる場合については、婚姻関係が回復の見込みのない破綻に至っていないときは、この限りでないものとする。
      (ア)  配偶者に不貞な行為があったとき。
      (イ)  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
      (ウ)  配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
      (エ)  夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。
      (オ)  (ウ)、(エ)のほか、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないとき。
  2  裁判所は、1の場合であっても、離婚が配偶者又は子に著しい生活の困窮又は耐え難い苦痛をもたらすときは、離婚の請求を棄却することができるものとする。(エ)又は(オ)の場合において、離婚の請求をしている者が配偶者に対する協力及び扶助を著しく怠っていることによりその請求が信義に反すると認められるときも同様とするものとする。
  3  第770条第2項を準用する第814条第2項(裁判上の離縁における裁量棄却条項)は、現行第770条第2項の規定に沿って書き下ろすものとする。

第8 失踪宣告による婚姻の解消
  1  夫婦の一方が失踪の宣告を受けた後他の一方が再婚をしたときは、再婚後にされた失踪の宣告の取消しは、失踪の宣告による前婚の解消の効力に影響を及ぼさないものとする。
  2  1の場合には、前婚による姻族関係は、失踪の宣告の取消しによって終了するものとする。ただし、失踪の宣告後その取消し前にされた第728条第2項(姻族関係の終了)の意思表示の効力を妨げないものとする。
  3  第751条(生存配偶者の復氏等)の規定は、1の場合にも、適用するものとする。
  4  第6、1及び2は1の場合について、第769条(祭具等の承継)の規定は2本文の場合について準用するものとする。

第9 失踪宣告の取消しと親権
  1  父母の婚姻中にその一方が失踪の宣告を受けた後他の一方が再婚をした場合において、再婚後に失踪の宣告が取り消されたときは、親権は、他の一方がこれを行うものとする。
  2  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができるものとする。

第10 相続の効力
 嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分と同等とするものとする。

第11 戸籍法の改正
  民法の改正に伴い、戸籍法に所要の改正を加えるものとする。

第12 経過措置
  1  婚姻適齢に関する経過措置
     改正法の施行の際満16歳に達している女は、第1、1にかかわらず、婚姻をすることができるものとする。
  2  夫婦の氏に関する経過措置
    1  改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から1年以内に2により届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができるものとする。
    2  1によって婚姻前の氏に復しようとする者は、改正後の戸籍法の規定に従って、配偶者とともにその旨を届け出なければならないものとする。
    3  1により夫又は妻が婚姻前の氏に復することとなったときは、改正後の民法及び戸籍法の規定の適用については、婚姻の際夫婦が称する氏として定めた夫又は妻の氏を第3、2による子が称する氏として定めた氏とみなすものとする。
  3  相続の効力に関する経過措置
     改正法の施行前に開始した相続に関しては、なお、改正前の民法の規定を適用するものとする。
  4  その他本改正に伴う所要の経過措置を設けるものとする。