諭 達
達第壱号
本教は、吾金光教祖が神宣を奉じて、天保十二年に開創せられたるものにして、爾
来幾多の千難万苦を排除し、常に慨世憂国の志念を以て一意世道人心の教化に力め
られたりしが、後明治十八年神道本局に属して金光教会を組織せしより、一層旺盛
に趣きて弥一教独立の基礎を固むるに到り、且教義に於ても亦別派すべき理由の存
するに因り、昨春来神道本局に交渉の上、中教正佐藤範雄を本教別派独立請願全権
委員として内務省に出願せしめしが、本月十六日内務大臣之れが許可を与へられ、
茲に積年の宿望たる金光教の成立を見るに至りしものなり。是れ偏に教祖神霊の祐
助と請願委員等が鞠躬鞅掌せし結果なりと雖亦諸氏が多年能く吾本部の命に服膺し
て、専心教務に勉めたる効に外ならず。本教の光栄面目之れに過ぐるものなし。然
りと雖諸氏は、此の光栄面目を荷ふと共に、国家社会に対し一層責務の重且つ大な
る事を覚悟せざるべからざるなり。今や社会は日に進歩し人智は月に啓発し、外教
は年に浸漸し各教互に教義を競ふの秋に際し、愈本教の真理を闡明して蕩々たる人
世の安心を得しめ、巍然として社会の木鐸たるべき一教たらむ事、蓋容易の事にあ
らざるべし。
抑も国家の元気は首として高潔なる国民の志想に起り、高潔なる国民の志想は清
操なる教法の力に依らざるべからず。而して一教独立の基礎は、部下団体の一致協
力するにあり。一教の隆盛なるは、部下教師の奮励宣教するにあり。然れば之が職
を奉ずるものの其責務の重大なる知るべきなり。諸氏宜しく此意を体し弘毅黽勉夙
夜倦むなく、分体一心本教の規律を確守し、教祖の遺訓を遵奉して愈本教の隆盛を
図り、各其天職を全うし、上は以て天恩の万一に奉答し、下は以て教祖の教恩に報
謝せむ事を期すべきなり。今本教の教規教則を頒つにあたりて将来の規箴を示して
茲に諭達す。
明治三十三年六月三十日
金光教管長 金 光 大 陣
(編者註)この「諭達」は、金光教独立に因って初代管長に就任した金光大陣が発した最初のもので、公認宗教としての使命と社会的責任を表明したのである。